共働きや専業主婦など、結婚生活にもさまざまな形があります。とくに「憧れるけど、実際は難しいんでしょ?」と思うのが、夫婦でお店を経営すること。ふたりで協力し合いながらお店をまわす姿は微笑ましくもあるものの、大変なことも多そうです。
そこでKekoon(ケコーン)では「夫婦で営む小さな店」というシリーズを始めることにしました! ひとつのお店をふたりでやりくりする夫婦の様子をお届けします!
こんにちは! ライターの佐々木ののかです。
今回は高円寺で水タバコ屋さんを営んでいるご夫婦に取材していきます! 水タバコ屋ってどうやって儲けているか不思議だし、レアな職業だから結婚に至った経緯とかもかなり謎。「どうして結婚することになったのか」「どうして 水タバコ屋をやることになったのか」「不安は無かったのか」などなど、率直な疑問をどんどん聞いてみようと思います!
向かった先は、JR中央線・総武線の高円寺駅南口から徒歩1分程度の好立地に佇む水タバコ屋さん「はちグラム」。
店主である竜ノ介さん(36歳)・ありこさん(26歳)ご夫婦に話を伺います。話を聞くまえから仲睦まじさがビシビシ伝わってくる。
ふたりの始まりも水タバコから
「早速ですが、おふたりのなれそめを聞かせてください」
「独立する前に僕が働いてた水タバコ屋に、この子がアルバイトで入ってきたんです。それで職場恋愛が始まって、2年くらい付き合ってから結婚したんだよね?」
「うん、そうだね」
「水タバコ屋で職場恋愛って時点で、かなり特殊ですよね」
「知人の紹介だったんです。冗談で『水タバコ屋でバイトしたい』って言ったら、『じゃあ働きなよ』ってなっちゃって......。元々、2週間くらいで辞めるかなって思ってたんですけど(笑)」
「意外と軽いノリから始まったんですね(笑)。独立したのはどういった経緯で?」
「元々、 僕は典型的なバックパッカーだったんですけど、外国では水タバコ屋が社交の場で、比較的身近な存在だったんです。帰国後は流れるように水タバコ屋の雇われ店長になったんですが、僕らふたりのことを考えてくれたお客さんに勧められて、いつのまにか独立することになっていました」
「なんか、自然体でいいなあ~」
「自然体以外で、生きてないんですよ」
(カッコいい......)
「オーガニックだもんね」
「オーガニックは食べ物とかでしょ? 違うの、生き様だから」
「じゃあ生き様がオーガニック?」
「ちょっとダサくない? 今日はカッコイイ路線で取材受けるって決めてたんだから、邪魔しないでくれる?(笑)」
「うわ、今の絶対記事に書かれるよ(笑)」
(ものっすごい仲いいな)
「ありこさんは竜ノ介さんが水タバコ屋さんを立ち上げることに不安はなかったんですか?」
「私、あんまりネガティブに考えてなくて。貧乏でも、具のないカレーを食べてもいいやって感じでした(笑)。でも、この人なら何だかんだうまくやってくれるだろうなって信頼してたので、心配はしてなかったですね」
「......信頼、してくれてたんだね」
「やっぱりしてない!(笑)」
「なんだこのイチャつきっぷりは」
「"今"だと思った」大ゲンカ真っただ中の電撃プロポーズの理由
「独立は2年ほど前と伺ってますが、結婚のタイミングは?」
「実はお店のオープン当日なんです」
「えー! そうなんですか?」
「はい。オープン当日に役所に届け出してから店を開けました」
「いろんなことが一気に始まったんですね。だいぶ前から結婚は決まってたんですか?」
「いえ、それもオープンの日の2週間前です」
「しかも、プロポーズは大ケンカの最中で」
「......大ケンカ中にプロポーズ......?」
「そんなことってあります......?」
「珍しく激しいケンカをしていたんですけど、急にこの人、2時間くらい黙っちゃったんです。どうしたんだろうって思ってたら、いきなり『結婚しよう』って」
「いやー、僕も正直よく覚えていないんですけど、これから店も始めて忙しくなってしまうし、『今だ』って思ったんですよ。結婚は、勢いですからね」
「気が触れたんじゃないかって本気で心配したけど」
「言い方がヒドい」
「でもこの人、元々すごく家族を大事にする人なんです。だから『家族になって、ありちゃんを守りたい』って言われたときにすごく合点がいって、結婚しようって思えました」
「素敵カップルすぎる......」
水タバコ屋って、ぶっちゃけ儲かるの?
「汚い話ですけど、水タバコ屋さんの経営って、ぶっちゃけ難しいんじゃないですか? 薄利なイメージだし、ほかでバイトとかしないと厳しそうって勝手に思っているんですけど......」
「確かにお金持ちではないですけど、そんなにカツカツでもないですよ。副収入もなしで、水タバコだけで食べていってますね」
「えー! そうなんですか! 原価が特別に安いとかですか?」
「タバコ税がかかるので、原価は全然安くないですね。しかも水タバコって、タバコの中でも『高級刻みタバコ』っていう一番税金が高い分類なんですよ」
「そっか。水タバコもタバコの一種ですもんね」
「飲食店だと原価率40%超えるとアウトって言われてますが、そのくらいはかかっちゃってますね。ただ、他の業種に比べて人件費を含めたランニングコストがあまりかからないんです。飲食店のように食材のロスも出ないので、内装とかの初期費用だけクリアすればどうにかやっていける。ミドルコスト・ミドルリターンくらいですかね」
「意外とやっていけるものなんですね。ちなみに水タバコ屋さんってお客さんの奪い合いのような"競合"みたいな考え方ってしないんですか?」
「しなくもないですけど、ケンカしても良いことないですからね。カフェと同じで、みんなが好きなお店に行けばいいって発想で仲良くやってます。味にこだわるところ、ライトな雰囲気なところ、玄人向け、初心者歓迎、いろんなタイプがありますし、それぞれ楽しくやってると思います」
「そうなんですね! 悪くないな、水タバコ業界」
「仕事もプライベートも一緒」でも嫌いにならない、夫婦円満の秘訣
「そういえば、結婚式ってもうされたんですか?」
「まだなんですよねー。何せお店のオープンと入籍が同じタイミングだったので、なかなか時間がとれなくて......。新婚旅行もまだなんですが、ありちゃんがしたいみたいなので、近々すると思います」
「私、若いうちにウエディングドレスが着たくて。前撮りでドレスを着て、結婚式は神前式にして、白無垢も着たいなあって考えてます」
「お金かかりそうー(笑)。竜ノ介さんは、式を挙げたいっていう願望はないんですか?」
「僕は完全にどちらでもよくて、ありちゃんがしたいならしようかっていう感じです」
「じゃあいずれはやるんですね! これからまだまだ楽しみがありそうですね」
「そういえば、仕事もプライベートもずっと一緒になると思うんですけど、息が詰まることはないんですか?」
「それが、無いんですよねー」
「ないんだ! 元々、人とずっと一緒にいても平気なタイプですか?」
「いえ。私、元々は友達を2日泊めただけで『早く帰ってくれないかな』って思っちゃうタイプなんですけど、この人に対してはそんなことなくて、すごく楽なんです。何だろう......大型の老犬を飼ってる感じ?」
「ヨボヨボなイメージ付けるのやめて?(笑) でも、僕も今まで何度か他の女性と同棲したことがあったんですが、僕って1人の時間がどうしても必要な人間なんですよ。だからすぐにダメになってしまって......。でもこの子は僕の時間をきちんと作ってくれるので、だから長く一緒にいられるのかもしれないですね」
「あとは私、ほかの男の子とふたりで遊ぶこともあるんですけど、この人がほかの女の人とふたりで遊ぶのはものすごく嫌なんです(笑)。でも、そんなワガママも許してくれるんですよね」
「えー! 寛容!」
「お互いが気になるポイントって本当に人それぞれじゃないですか。『お前も男と遊んでるんだから、俺も遊んでいいはずだ』って同じ条件を突きつけ合う人もいると思うんですけど、お互いが気になるポイントを尊重してあげたほうがいいんじゃないかなって僕は思うんですよね」
「なるほど。一緒にお店を経営していても、ぶつかり合いはないんですか?」
「お店の経営に関しても特に問題はないですね。一緒に仕事をしているからこそ、お互いの状況がわかりあえるし、基本的にこの人が舵取りをしてくれているので」
「ケンカするときなんて、お互いにお腹が空いているときぐらいじゃない?」
「そうだね(笑)」
「平和だなぁ(笑)」
及び腰にならず、飛び込んでしまったほうが結婚生活もうまくいく
「最後に、結婚を迷っている方に何かアドバイスがあればお願いします」
「ありきたりのことかもしれないんですけど、僕、結婚する前よりも結婚してからのほうが彼女のことを好きになれたんですよ。結婚を考えたときに『ずっと好きでいられるかな』って不安に思っている人もいるかもしれないんですけど、意外と好きでいられるから、結婚しちゃったほうがいいかもよ、って言ってあげたいです」
「私も、あまり及び腰にならないほうがいいのかなって思います。よく結婚したら自由がなくなるんじゃないかって不安に思っている人がいるかもしれないんですけど、少なくとも子どもがいないうちは、意外と不自由を感じることってそんなにないんだなって思いました。あとは、男性が意を決してプロポーズしてくれたら、女性はちゃんと着いていこうと思うはずなので、男性の皆さん、がんばってください!」
「いいメッセージ......! 何だか勇気が出てきました。ありがとうございました!」
こうして高円寺で水タバコ屋さんを営む、竜ノ介・ありこ夫妻のインタビューは終了しました。
年齢に差があったり、細かい考え方などが違ったりしていても、根底で通じ合い、お互いの足りない部分を補完し合えるバランスの良さをおふたりから感じとることができました。
まだ見ぬ結婚生活には、経済面や精神面での不安がたくさんつきまといますが、私たちが思っているよりも、結婚はもっと自然体でしてもいいのかもしれません。
あと、水タバコ屋って怖いところかと思っていたけど、こんなにほんわかしたふたりが経営してるなら全然怖くない! 高円寺に立ち寄った際にはまた遊びに行こうと思いました!
(取材協力)
シーシャサロン・はちグラム
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(書いた人)
佐々木ののか(@sasakinonoka)
フリーライター。暮らしやライフスタイル、新しい夫婦・仕事・コミュニティ、多様性をテーマに執筆活動中。英語とフランス語を話せる。
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