こんにちは、Kekoon編集部です!
先日、マイナビウエディングの編集部から、こんな動画を紹介されました。
ブライダル会社ノバレーゼさんの広告なのですが、ビデオカメラではなくiPhoneを使って、プロポーズから式に至るまでのふたりを新郎新婦やその家族目線で撮影している動画です。臨場感たっぷりのドキュメンタリータッチにより、決して楽しいだけじゃない結婚準備のリアルさを、短い時間で伝えている作品。
まるでホームビデオのようにノーカットで撮影されていますが、これはCM......。きっとこの動画に隠された凄いテクニックがあるに違いない! ということで、今回は動画のプロの方にお越しいただき、どんなテクニックがあるのか、また、どうしたらクオリティ高い動画を撮れるのか聞いてみることにしました!
お呼びしたのは、YouTuberの藤原さんと、動画ディレクターの家子さんです!
2013年から、YouTubeチャンネル『無駄づくり』を開始し、無駄なものを作り続ける。
現在、チャンネル登録者数は3万人を超え、テレビを始めとするさまざまなメディアに取り上げられている。
2015年夏には、東京都墨田区「あをば荘」にて初個展「無駄な部屋」を開催。2016年には、Google社が主催しているYouTubeNextUpに入賞した。
家子 史穂(いえこ しほ)
動画ディレクター。1981年生まれ。一橋大学社会学部卒。医療機器メーカーでの商品企画、株式会社リクルートコミュニケーションズを経て2013年に独立。以後、動画ディレクターとして、東洋経済オンラインなどニュースサイトの動画コンテンツ立ち上げに参画。企業とコラボレーションした動画プロジェクト多数。大学や企業での動画活用に関する講演も。著書:『仕事に使える動画術』(翔泳社)
iPhoneだからこその良さがある
「ノバレーゼさんの動画を全て見ましたが、iPhoneだから臨場感がありますよね。一眼レフで撮影するよりもiPhoneでのブレ感が、ドキュメンタリーっぽくていいですね」
「ウェディングドレスの試着の回で、新婦をiPhoneで撮影している新郎が鏡ごしに映っていて『本当にiPhoneで撮影しているんだな』と視聴者に思わせるのが巧みな演出ですよね。あとは『やめてよー』ってカメラに手を被せるところとかも、ドキュメンタリーっぽさを出してる」
【NOVARESE 2016 CM】僕らの結婚365日の記録 #5 ドレス試着篇
「確かに! あとは、撮っている側が声をかけるじゃないですか。それで、短い時間で関係性が分かるようになってますよね」
「うんうん。あれもうまい演出だなって思う。一瞬『素で撮ってるのかな?』って思ったけど、でも音は綺麗だったから、多分マイクを服に隠している気がするなあ。iPhoneだと、あそこまで綺麗な音が取れないと思うんだけど......」
「あと、再生時間はどれも15秒くらいしかないんですけど、その短さも良いですよね。シリーズものだから、次々と見たくなりますもん」
「今の時点では挙式前までのビデオしかないので、挙式がどうなったのか、すごく気になってる! もし作るなら、ヴァージンロードで横から友人が『おめでとー』って言ってる感じが良いかなぁ」
「うわ~~。それ、感動しますね。続き気になる」
ウェブ動画を作るときのテクニックとは
「動画のテクニックに関してだと、YouTubeはすごく特殊なんですよね」
「それ気になる!」
「YouTube動画って、基本的に最後まで見られないんですよ。ちょっとでもダラけると、すぐに離脱して別の動画を見られちゃう。なので、一番最初にオチをハイライトで見せちゃうことが多いです。あと、サムネイルも一番盛り上がる部分を見せるようにしていますね」
「なるほど! それって、私の考えてることとも近いかも。動画シナリオの話なんですけど、私、『コース料理理論』と呼んでいるものがあって」
「コース料理?」
「普通のシナリオって、『起』で始まり『結』で終わる『起承転結』が王道ですよね。でも、ウェブ動画って離脱されちゃうので、起承転結とか言ってられない。だから、『メニュー・前菜・メイン・デザート』この順番にシナリオを作成します」
「メニューが最初......?」
「コース料理の『メニュー』って、とにかく『美味しそう!』って思わせるために載っているでしょ。そこで人の関心を惹いてるんだよね。だから、まずはいいところをグっと見せつける。次に、メインを引き立てるために、メイキングなど序章を見せる。これが「前菜」。そして、お待ちかねの「メイン」があって、最後に「デザート」で視聴者の次のアクションの動線を示してあげる。例えば、『他にはこんな動画をアップしてるから見てね』とか」
「めちゃくちゃ分かりやすい!」
「藤原さんの動画は、この『コース料理理論』に当てはまるなあと思います」
「確かに! 一番人気のある動画が『歩くたびにおっぱいが大きくなるマシーン』というものなんですけど、それも同じ構成ですね」
「おっぱいは、やっぱり人気なんだ?(笑)」
「『歩けば歩くほどおっぱいが大きくなる』というマシーンなんですけれど、サムネイルの時点で巨乳になってるんですよ。そして、オープニングでハイライト的に巨乳になっている私が映る。一度そこまで見せてから本編が始まるので、なぜこうなったのかという理由や原因を知るため、視聴者は最後まで見てくれるわけです」
「これってテレビとはまったく逆の作りですよね」
「そうですね。オチを先に見せて本編が始まる......タランティーノの映画みたいな感じ(笑)」
「『おっぱいを大きくする動画』でタランティーノって言われると、めちゃくちゃ壮大に思えました(笑)」
「家子さんは、動画作りのコツってどんなものがありますか?」
「私は会社説明会で流すプロモーション動画を作ることが多いんですけど、ノバレーゼさんの動画とは真逆で、第三者的な目線からの画が多いんです。そこでは常に、『第三者だから撮れる画、引き出せる画』を心掛けてます」
「第三者だから引き出せる画って、どういうものですか?」
「『仕事のやりがいの話』とかを会社説明会でよく見かけると思うんですけど、あれって身内に話すと妙に照れくさいんですよね。でもそれが第三者へのインタビューって形式だと、思いきり話せるようになるんです。だから照れを払拭してあげる立場でいたいなって思います」
「なるほど! 確かに身内には照れくさい話ってありますもんね」
「家子さんはクライアントからの依頼を受けて作る動画が多いと思うんですけど、それって大変そうだなっていつも思うんですよ」
「そうかな? お題が決まっているから藤原さんみたくゼロから企画を考える必要もないし、自分が出演することもないから結構、気楽(笑)。あ、でもクライアントとのトラブルを避けるために、最初にコンテはきっちり書きますね。そのぶん予定調和っぽくなっちゃうことはあるんですが」
「コンテって難しいですよね、それに左右されすぎてると、『想定外のおもしろさ』みたいのが死んでいっちゃうし」
「藤原さんの動画みたいな実験的な要素があるやつは、あまり決め過ぎないほうがリアルだし、おもしろいですよね。かっちり終わりまで導く必要がある場合はコンテを細かく書いたほうがクライアントも安心するし、使い分けが大事なんだと思います」
YouTuberと動画ディレクターだったら短い時間でどんな映像を作る?
「ノバレーゼさんの動画は一個一個が15秒くらいの短いものでしたけど、家子さんなら、短時間の映像を作る場合、どんな動画を撮りたいですか?」
「定点観測の動画とかどうかな。日本に観光に来た人が、1日1秒同じ構図で撮影して、10日いたら10秒でそれを回すとか。背景がどんどん変わるからおもしろそう。あとは1秒を1歳にカウントして、子どもの成長を見せるとか。あ、今の、学習塾のPRとかで使えそう(笑)」
「1秒って意外と情報伝わるんですよね」
「そうそう。1秒でもちゃんと人の成長過程は出せると思うんですよね」
「私は、苦労して完成させたトランプタワーが壊される動画とかやってみたいですね」
「なにそれおもしろそう(笑)」
「難しいプラモデルとかレゴとか、頑張って大きなやつを作って、最後の一個を置くときに、陸上選手が走ってきて、ぶち壊して台無しにするようなやつ(笑)」
「すごい世界観(笑)。あ、陸上選手のボルトって確か200メートルを19秒とかで走るから、そこにかけて19秒目で最後にボルトが崩すのどうですか?(笑)」
「じゃあこっちは世界陸上のPRにしましょう(笑)」
もしも動画初心者がウエディング動画の制作を頼まれたら?
「私、まだ結婚式用の動画作りを頼まれたことがないんですけど、家子さん的にコツとかってありますか?」
「適齢期を通り越した私が堂々と言えるパートですね(笑)」
「ははは(笑)」
「20代後半のときとかすごい作ってきたの。せっかくなら凝ったやつ作りたいと思ったから、両親にインタビューしてくるとか、新郎新婦に一日密着取材とかやったんですけど、でも新婦はあんま納得してなくて......。その理由分かる?」
「なんだろう......」
「『自分が綺麗に写ってないから』」
「あ~! なるほど。動画のクオリティよりも、まず花嫁をキレイに見せることだけ考えろ、と(笑)」
「そうそう。あと、新郎は、『新郎のスゴさを周りに語らせろ』ですね。これが鉄板。それが一番満足度が高くなるから(笑)」
「新婦を可愛く撮るコツってありますか?」
「あります! 女性は上から撮るとかわいいとか、男性は下からとると威厳が出るとか......色々と定石がありますけど、ウエディングの場合は、『新婦に聞く』が正解! どっちの顔がきれいかとか、本人に絶対こだわりがあるはずだから」
「確かに! 女性は自分の角度を知ってますからね。でも、自分からは恥ずかしくて言えないし、こっちから冗談交じりで聞いた方がいいですよね」
「そうですね。あとは外に連れ出すこと。編集技術に自信がなければないほど、フォトジェニックな景色に頼るだけで、レタッチなしでいけるようになるかなと思います。砂浜や芝生で撮影するだけで、雰囲気がすごく良くなる」
「やっぱり自然光は綺麗に写りますもんね」
「動画作りを頼まれたからには見てくれる人を感動させたいなあって思うんですけど、そういうコツみたいなものってありますか?」
「サプライズで新郎新婦やゲストが想像もつかないような意外な人が出てくるのはいいですよね。でも、そのときに内輪向けになりすぎないのが大事かなあ。すごくお世話になった小学校の先生がサプライズで登場しても、同級生は盛り上がるけれど、会社の人はポカンとしちゃいますよね。だからウエディング動画で抜けがちなのは、さっきの理論でいう『前菜』だと思うんです」
「なるほど! 前菜的に、先生のことがわかんない人でもわかるようにきちんと説明してあげればいいってことですね」
「そうそう! 詳しく説明する必要はないので、ちょっと一言添えてあげる。それだけで一緒に感動できると思います。あと、『おめでとー』って突然いろんな人が動画に出てくるやつもよくあるんですけど、あれに『小学校の同級生編』とかを一筆加えてあげるだけで、みんなも素直に楽しめると思うんですよね」
「そのワンカット、大事ですね~」
「あとは、サプライズとか余興するにも、いきなり披露しましただと『この人たち誰?』ってなるから、『忙しい会社仲間がこれだけ苦労して、時間つくって、ふたりのためにやったよ』みたいなメイキングを挟んであげると、共感を得られやすいかな」
「ひとりよがりや身内ネタになりすぎないように注意するって、初心者だと忘れがちな視点ですよね。私も、初めて動画を作ったときは、完璧! って思ったのに全然人に伝わらなくて......。『第三者目線』というのはすごく大事ですよね」
動画作りをこれから始める人たちへ
「最後に、これから動画作りをする人たちに向けてアドバイスできることがあればいいかなって」
「そうですね。藤原さんは何かありますか?」
「うーん、まずは頭に浮かんだものを、手元にある物で表現してみるってことですかね。動画作りっていうと『何かソフトを買わなきゃ』とか、『カメラがない!』って考えてしまう人が多いかもしれないですけど、今はスマホのカメラも性能がいいので、高い機材を揃えなくても問題なく撮れるし、編集ソフトも、無料のものでも質が高いから十分だと思うんです。だからあまりハードル高いものだと考えずにチャレンジしてもらいたいですね」
「私は、結婚式の動画って、動画制作に興味のある人にはピッタリのきっかけになるのかなと思います。私も友人の結婚式が動画の道のスタートでしたし。大勢の人に自分の動画を見てもらえる機会もなかなかないですし、ゲストを置いてけぼりにしないように注意しつつ、制作自体を楽しんでもらいたいなって思います」
「楽しむことが何より大事ですよね」
「うん! 本当にそれに尽きると思いました!」
おわりに
おふたりの話を聞いてから改めてノバレーゼさんの動画を見てみると、なかなか工夫が凝らされていることに気付きます。
でも、スマホひとつで動画作りが簡単かつクオリティ高くできる時代。せっかくならおふたりの言うとおり、気軽にチャレンジしてみるのがいいかもしれません。そしてウエディング動画を頼まれたみなさん、ぜひこの記事を参考に、身内ネタに走りすぎないようにしながら、新婦をより美しく、新郎をデキる男に見せられるよう、がんばってくださいね! 応援しています!!!
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