代々木上原の夫婦は世界一周した末にアルゼンチンソウルフード「チョリパン」の店を営んだ|夫婦で営む小さな店

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共働きや専業主婦など、結婚生活にもさまざまな形があります。とくに「憧れるけど、実際は難しいんでしょ?」と思うのが、夫婦でお店を経営すること。ふたりで協力し合いながらお店をまわす姿は微笑ましくもあるものの、大変なことも多そうです。

Kekoon(ケコーン)の「夫婦で営む小さな店」シリーズ第二弾! ひとつのお店をふたりでやりくりする夫婦の様子をお届けします!


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はじめまして、ライターの栗本千尋と申します。

プライベートでは、結婚3年目。1歳半の息子を持つ母でもあります。結婚から出産が早かったので、新婚生活を楽しむ時間はほぼなく、いきなり夫婦から父母になった感じ。夫婦ってどういうものだっけ? と考えることが多いこのごろです。

そんな私の夫は飲食店に勤めていて、将来は独立も視野に入れているとのこと。いずれは私たちも「夫婦で営む小さな店」を開く可能性もなきにしもあらず......。せっかくの機会なので、人生の先輩たちに「夫婦でお店を開くこと」の苦楽、聞いてみようと思います!


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向かった先は、こちら。小田急電鉄小田原線・東京メトロ千代田線の代々木上原駅から歩いて約5分の場所にある「ミ・チョリパン」。さまざまなメディアで取り上げられている人気店で、アルゼンチンのソウルフード「チョリパン」を提供しています。


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これが人気NO.1の「カスタムチョリパン」。炭火で焼いた極太のチョリソーと、野菜やソースなどのトッピングをパンに挟んだもの。実物を見るとゴールデンレトリバーみたくヨダレが止まらなくなります。



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今回お話を伺う中尾智子さん(35歳・左)、真也さん(35歳・右)さんご夫婦。今年の10月で夫婦生活丸5年を迎えるらしいですが、「たった5年でそんなに似る?」と思うぐらい、"似たもの夫婦"という言葉がしっくりくる第一印象。気さくなおふたりに、いろいろ聞いていきます。



大学時代にサークルで出会い、交際から10年でゴールイン

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f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「なれそめを伺いたいんですが、出会いはいつですか?」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「出会いは大学3年のときだったので、20歳ですね。大学は別だったんですが、テニスサークルで一緒でした」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「ということは、20歳で交際がスタートして、10年間お付き合いされてご結婚されたということですか? 長いですね。その間、一度も別れることもなく?」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「別れたことはないですね。別れ話は2回くらいあったんですけど」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「彼がひとりで旅行に行っちゃうことはありましたけど、その間も別れることはなかったです」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「ご主人、おひとりで旅行ですか」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「大学を卒業して1年くらい、アジア周辺をプラプラ一人旅していたんです。帰国してから、次に行くときは結婚する人と一緒に世界を周ろうと思って。なので、それから何年か経って、彼女と一緒に行こうと決めました」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「じゃあ『世界一周旅行へ誘う』っていうのは、ご主人にとっては結婚の申し込みと同義......! おふたりではどのくらいの期間、旅をされたんですか?」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「1年半くらいですね。新婚旅行ではなく婚前旅行でした」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「旅行中って、どうしてもケンカが多くなってしまうイメージですが、実際のところどうでしたか?」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「結構、些細なことでケンカしてましたね」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「『まだあれやってないの!?』とか、本当に些細なことなんですけど。旅行中は慣れないことばかりでずっとイライラしていて。そのイライラをぶつける相手が一人しかいないので(笑)

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f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「まあ簡単にはいかないですよね(笑)。世界旅行に出る前には結婚を決めていたことになると思うんですけど、プロポーズはなんと?」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「なんでしたっけ。旅行込み込みで、帰ってきても一緒に......みたいな(ゴニョゴニョ)」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain長かったんですよ! 決め手の言葉みたいなのはあまり覚えていなくて。でもそんな感じです」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「ユルさがいい」



アルゼンチンで出会った「チョリパン」に魅了され、現地で修行

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f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「婚前旅行中に行ったアルゼンチンで『チョリパン』を知って、お店を出すことにつながったと伺いましたが」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「ですね。旅行から帰ってきたあとに再度アルゼンチンへ渡って、チョリパン屋に3カ月ほど通いつめました。向こうって、チョリパンの屋台がたくさんあるんですよ。だいたい体格のいいおやじが焼いていたりするんですけど、こっちは言葉もわからないし、恐いので、人の良さそうなところに頼み込んで(笑)

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「大変ですね(笑)。どうやってお願いしたんですか?」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「ジェスチャーと熱意ですね。伝わっていないのに、毎日行く(笑)。すごく親切にしてくれていたんですけど、でも後からその人、実はただのバイトだったことがわかって。『オーナーが来るときは離れてて』って言われてたみたいなんですけど、こっちは言葉もわからないので、オーナーと鉢合わせちゃったんです」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「......修羅場?」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「いや、そのとき店がめっちゃ混んでたので、隅っこで掃除をはじめたんですよ。自分のやれることといえば、まずは最初は掃除じゃないですか。そこからだんだん仲良くなっていって、『野菜切らせてやるよ』とか」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「料理系のマンガでよく聞く展開だ」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「でも具になるチョリソーは工場で作っていたので、作っているところを実際には見れなくて。だから店までチョリソーを配達している兄ちゃんに工場の場所を聞いて、案内してもらったんです。で、工場では簡単な挨拶をしてすぐに『これを作りたいからレシピを教えてください』って」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「今度は映画ばりの急展開」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「でも、最初は全然教えてくれなかったよね」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「そうそう。簡単なレシピは教えてもらえても、『ここが知りたい』ってところはなかなか聞き出せなくて」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「企業秘密とか、あるんでしょうねえ......。海外の食べ物を日本で紹介するときに、日本人向けに味をアレンジしているお店もあると思うのですが、こちらでは現地の味を再現しているんですか?」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「日本人向けに味を変えたりとかはしていないですね。ただ、仕入れられる食材の違いはもちろん、日本人が作っていることもあるので、多少の違いはあるかもしれません。それでも、本場の味を知っているアルゼンチンの人に、おいしいと言ってもらえるように意識して作っています」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「基本的にはお店ですべて手作りしているんですが、パンだけはプロであるパン屋さんにお願いして、チョリパン専用のパンを作ってもらいました。結構苦労を重ねて、ようやく今の味になったんです。ちょっと食べてみますか?」

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「どれどれ......」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plainうまーーーー!!!!!!!!!

肉の力強い感じと、酸味のバランスが絶妙! 間違いなくクセになりそう......」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「でしょう(笑)? リピーター、多いですよ」



「店を出すことに不安はなかった」

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f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「私の夫は飲食店勤務なのでよく話を聞くんですけれど、1000円前後のランチだけではなかなか黒字にならなくて、ディナータイムのアルコールが売れないと厳しいとか......。でもこちらは、ほぼ一品勝負みたいな感じじゃないですか。それでもなんとかなるもんですか?」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「うちは、お酒が売れたらラッキーくらいのスタンスですね。その代わり、チョリパンが1日100本くらい出るときもあるので、スタッフふたりを雇ってもなんとかやっていけるくらい」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「1日100本! それはすごい。人気店だとは知っていましたが、そこまでとは

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「愛される店になってよかったなあと思っています」

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f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「そもそもいきなりお店を出すって、なかなかハードルが高いと思うんです。おふたりとも、前職は何をされていたんですか?」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「ふたりとも飲食ですね」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「なるほど。奥さんは、お店を出すことについて反対はしなかったんですか?」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「全然ないです! むしろやらないのかなって、『やれよ』っていうプレッシャーをかけてました

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「前向きですね~。不安や不満はなかったんでしょうか?」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「普通の人って店は開かないけど、家は買うじゃないですか。家を買うと何千万円という借金を、30何年ローンで返していかなきゃいけない。それに比べたら、お店をつくるのは1000万円もあれば相当いいものができるので、もし失敗したとしても絶対に返せると思って」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「確かに、そういう考え方もアリですね」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「だからそういう面では全然心配していなくて、むしろこの人が好きなことをやらないとか、行動せずにグチグチしている方がすごくイライラして。旅行から帰ってきてなかなか動かなかったときとかも......あ、そのとき別れ話になったのか?」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「うん。あやうくフラレそうになりました(笑)

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「奥さん強いですね(笑)。お店について、方針の違いでケンカすることはないんですか?」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「始めてすぐのときは、結構ありましたね。経営のこともサービスのことも」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「どうしても、24時間ほぼ一緒にいると、仲が悪くなってしまうのでは? と思ってしまうんですが」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「ああ。それ、みんなに聞かれるんですけど、付き合いも長くて趣味とかも似ているので、休日もほとんど一緒にいても問題ないんですよ。それが普通で」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain婚前旅行での経験がよかったよね。耐性がついたというか」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「旅行中は365日一緒だからね。今はそこまでのことはないし、自分の時間もあるので」



性格が正反対でも、夫婦円満

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f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「お二人は、自分たちのことを仲がいいと思いますか?」

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f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「その、夫婦円満の秘訣って何ですか?」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「個人的には、我慢しないことかな。言いたいことは言うし、やりたいことは全部やるので」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「ご主人はどうですか?」

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「............」

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......我慢することですね

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「真逆の答え(笑)」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「性格は全然違うんですよ(笑)」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「ケンカしたら、折れるのはご主人ですか?」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「だいたいそうですね~」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「私は折れません(笑)。付き合ってかれこれ15年くらいになるんですけど、本気で彼がキレたのは数回しかないんですよ。でもその分、キレるとめちゃくちゃコワイです」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「どういうことでキレたんですか?」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「覚えてないな~。最近は怒ってないってことか。怒られてばっかりですよ(笑)」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「奥さんが舵をとることが多いですか?」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「小さいものはそうかもしれないですけど、大きい決断は任せていますね」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「あんたのワガママに付き合ってやっているんだから、小さいワガママくらいカワイイもんだろうっていう」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「そんな感じです!」

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f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「お互いに好きなところは、どんなところですか?」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「すごいベタな答えになっちゃうんですけど、優しいところです」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「なんだろうな。見た目は気が強そうじゃないのに、結構ズバズバ言うところですかね」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「また正反対の答え(笑)。奥さん、確かにおおらかに見えますもんね。ズバズバ言うというのは意外かも」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plainおおらかですよ

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「本当におおらかな人は自分でおおらかって言わないから(笑)。愛嬌もいいんですけど、その割にズバズバ言う」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「おふたりのバランスがいいんですね。ふたりとも優しくて遠慮しがちだと、なかなかうまくいかないかも」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「ただ、彼がズバズバ言うときもあるから、そのときは大炎上しますけどね(笑)。飲み屋とかで、5~6時間は喋ってる」



結婚は、「ずっと一緒にいる」ことの通過点

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f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「最後に、結婚を迷っている人にアドバイスをお願いします」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「結婚をゴールだと思って『早く結婚したい』って言う人は多いんですけど、結婚してからの方が人生長いじゃないですか。『この人とずっと一緒にいたいな』っていうところの通過点として結婚があると思います。だから、早く結婚したいという理由で結婚する人はちょっと心配かな」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「私は結婚してもしなくてもよかったんです。でも、ずっと一緒にいるってことで、結婚というステップを踏むのは自然なことだったんですけど」

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「一方で、なかなか結婚のタイミングをつかめないカップルもいますよね」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain結婚したいタイミングって、男女でなかなか一緒にならないと思うんですよ。男は一人前になってからって思うし、女の人は待っていられなかったりして。だから結婚したかったら、子どもをつくりましょう」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「なんかちがくない(笑)?」

f:id:katsuse_m:20160731191603j:plain「いやいや、でもそこがタイミングが重なる瞬間なんだって」

f:id:katsuse_m:20160731191357j:plain「うーん、それはどうかわからないけど、女の人から『結婚したい』というニュアンスは伝えていっていんじゃないかな。男の人って鈍感だから、少しずつツンツンしていったらいいと思います。それでもダメだったら、さっさと次にいきましょう

f:id:katsuse_m:20160731190751j:plain「いつまでもくすぶっているより、そういう思い切りも大事なのかもしれませんね。ありがとうございました」



おわりに

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お話を聞いて、お二人の性格は正反対のようですが、その違いすら楽しんでいるような印象を受けました。それは、お互いを信頼しているからこそなんだろうなと思いました。

奥さんがチャキチャキしつつも、大きな方針を決めるときにはご主人を立てていて、とても素敵でした。「経営者は孤独になりがち」という話をよく耳にしますが、そこを夫婦で支え合うことで、カバーできることもあるんだと実感しました。

あと、「チョリパン」が本当に激ウマだったので、夫にも食べさせたいと思って買って帰ったのですが、結局我慢できずに食べてしまいました......。こういうところから改めていこうと、思います。いや、でも本当においしくて(公開言い訳)。



◎取材協力
ミ・チョリパン
http://michoripan.com/
ツイッター:
Mi Choripan (@MiChoripan) | Twitter



【書いた人】
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栗本千尋
青森県八戸市出身のフリーライター。
カルチャー誌や旅行雑誌をメインに、たまにWEBで執筆。プライベートでは一児の母。最近は子育てをテーマにした記事も書くようになりました。




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