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ジューンブライドの季節にぴったりの恋愛映画 『アバウト・タイム』が描いた"最高の結婚式"

2024/05/31 更新
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せっかくの結婚式当日は、どしゃ降りの大雨に


あいにくの悪天候でも笑顔があふれるパーティに
結婚式を描いた映画は、古今東西さまざまな作品があるが、結婚式や結婚生活をテーマにした映画を撮り続けているのは、英国のリチャード・カーティス監督だ。彼の代表作のひとつ、『アバウト・タイム 愛おしい時間について』(2013年)が日本での劇場公開から10年になるのを記念して、2024年5月31日(金)より2週間限定でリバイバル上映される。

 カーティス監督にとって3本目の監督作となる『アバウト・タイム』では、とても印象に残る結婚式が描かれている。主人公のティム(ドーナル・グリーソン)は、ひと目惚れした米国人女性のメアリー(レイチェル・マクアダムス)と念願かなって、ついに結婚式を挙げる。

 ところが、式当日はあいにくの悪天候で、式の参加者が集まっての記念写真は強風のためにドレスも髪型も台無しに。せっかく用意したテント式の野外パーティ会場も大雨のせいで崩壊しまう。さんざんな結婚式にもかかわらず、新婦のメアリーはあまりの滅茶苦茶さ加減に大笑い。彼女のこぼれる笑顔に釣られて、新郎のティムも思わず爆笑してしまう。

 映画史に残る最高の結婚式ではないだろうか。どんなに豪華な演出がされ、著名人が出席した派手な結婚パーティよりも、胸に沁みるシーンだ。この相手となら、これからどんなトラブルやアクシデントが起きても、すべて笑い飛ばしてしまうことができるとお互いに確信したにちがいない。長い結婚生活を送るうえで、この信頼感と安心感はいちばん大切なものだろう。

 結婚パーティを終えたメアリーに、ティムは「ちがう日のほうがよかった?」と囁く。メアリーの答えは「いいえ」だ。悪天候のおかげで、逆に生涯忘れることができない結婚式となった。そんな大切な思い出を失いたいとは思わない。『きみに読む物語』(2004年)のヒロイン役でブレイクし、アカデミー賞作品賞受賞作『スポットライト 世紀のスクープ』(2015年)では気丈な女性記者を演じ、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたレイチェルだが、このシーンで見せる彼女の気取りのない笑顔は、最高の表情だと言っていい。

タイムリープ能力よりも強力だった恋人の笑顔


ティム(ドーナル・グリーソン)と父親(ビル・ナイ)の関係も印象的
恋愛コメディにジャンル分けされるこの映画は、主人公のティムにはタイムリープ能力が備わっているという「タイムトラベル」ものでもある。英国南西部のコーンウォールで生まれ育ったティムは、21歳の誕生日に父親(ビル・ナイ)から重大な秘密を打ち明けられる。一家の男たちには代々にわたってタイムリープ能力があり、過去へ自由に戻ることができるという。だが、お金儲けのためにこの力を使おうとした先祖は不幸な人生だったらしい。「理想の人生を送るために能力を使え」と父親にアドバイスされたティムは、恋人探しのために使おうと決意する。

 妹のキットカット(リディア・ウィルソン)の友人で、自他ともに認めるゴージャス美女のシャーロット(マーゴット・ロビー)への告白は、タイムリープ能力を使ってもダメだった。結局のところ、ティムにとってシャーロットは運命の相手ではなかったらしい。だが、シャーロットに振られたことで、ティムはロンドンに上京して弁護士となり、家族から自立した生活を送るようになる。女心の複雑さを教えてくれたシャーロットには、感謝すべきなのかもしれない。

 人と人との出会いは、とても不思議だ。シャーロットへの失恋がなければ、ティムはロンドンに行き、「ケイト・モスの大ファン」というメアリーと出会うこともなかった。涙ぐましいまでにタイムリープ能力を駆使して、メアリーとの出会いをやり直し、ファーストキス、初めてのベッドイン、両親へのあいさつ、そしてプロポーズにまで至るティム。初ベッドインをやり直すくだりは「ずるいなぁ」と思わなくもないが、まぁ、メアリーをゲットする以外は、妹のキットカットやロンドンでの同居人である劇作家のハリー(トム・ホランダー)の幸せのためにタイムリープ能力を使っているので、大目に見るとしますか。

 でも、タイムリープ能力を使わずとも、ティムはメアリーとは結ばれていたように思う。結婚式のどしゃ降りを笑って受け流したメアリーだ。シャイで不器用だが、家族や友達にも恋人と同じように惜しみなく愛情を注ぐティムのことをきっと気に入ったはず。その実、メアリーと結婚し、平穏な家庭生活を手に入れたティムは、タイムリープ能力を使う機会がどんどんなくなっていく。ティムの一家に代々伝わるタイムリープ能力よりも、メアリーの笑顔のほうが遥かに強力かつ有効的だったわけだ。

さまざまな結婚観、夫婦像を描くカーティス作品


出会い直すたびに、ティムはメアリー(レイチェル・マクアダムス)にひと目惚れする
冒頭で触れたように、カーティス監督は、結婚や結婚生活を主題にしたさまざまな作品を残している。脚本家としてのブレイク作となったのは、ヒュー・グラントが主演したロマンティックコメディ『フォー・ウェディング』(1994年)。独身男性のチャールズ(ヒュー・グラント)は友人の結婚式で米国人のキャリー(アンディ・マクダウェル)と出会い、恋に落ちていく。一夜を共にしたキャリーから「婚約する?」と冗談めかして尋ねられ、答えをはぐらかしたチャールズだが、後からキャリーこそが理想の女性だったと気づく。

 再びヒュー・グラントと組んだ脚本提供作『ノッティングヒルの恋人』(1999年)は、当時大人気だったハリウッド女優のジュリア・ロバーツをヒロインに迎え、世界中で大ヒットした。パッとしない書店を経営するバツイチ男のウィリアムとハリウッドスターのアナとのラブロマンスは、現代版『ローマの休日』(1953年)とも評された。主人公のふたりだけでなく、ウィリアムの個性豊かな友人たちも魅力的だった。とりわけ印象に残るのは、弁護士のベラとその夫・マックスだ。事故に遭ったベラは車椅子生活を送っているが、マックスが献身的に支え、夫婦仲は良好だ。いろんな愛し方、愛され方があることを、ベラ&マックス夫妻は教えてくれる。

 そしてカーティス監督の初監督作となったのが、クリスマスを過ごす恋人たちの群像劇『ラブ・アクチュアリー』(2003年)だ。英国首相にまで上り詰めたヒュー・グラントだが、相変わらず好きな女性にうまく告白できず、くよくよしている。彼の妹・カレン(エマ・トンプソン)は平凡な結婚をしたものの、夫が職場の若い女性と浮気しているのではないかと気を揉んでいる。ほかにも男同士の友情、家族間の愛情、報われることのない片想いなど、さまざまな愛の形が描かれている。年齢や性別に関係なく、ままならない愛の行方に悶々とする恋人たちだが、クライマックスとなる聖夜にはささやかな奇跡がそれぞれに訪れることになる。

 カーティス監督はクリスマスや雪の降る1日をモチーフにしたファンタジックな作品も多く、『からっぽのくつした』(世界文化社)や『ゆきがくれたおくりもの』(ポプラ社)などの絵本も執筆している。どちらも心あたたまる物語なので、カーティス作品を愛するファンはぜひチェックしてみてほしい。

カーティス監督の家族愛が詰まった『アバウト・タイム』


トラブルメーカーの妹キットカット(リディア・ウィルソン)だが、愛すべき存在
また、一連のカーティス作品を観ていると、主人公には妹、もしくは妹分キャラがいることが多いと気づくはずだ。実際にカーティス監督には仲のいい妹がいて、妹の誕生日にどんなサプライズプレゼントを用意すれば妹が大喜びするかを妄想することが、幼き日のカーティス監督のイマジネーションを育んだらしい。

 残念なことにカーティス監督にとっての最愛の妹と両親は先立ってしまい、そのことも要因となってカーティス監督は『アバウト・タイム』を最後に映画界を引退している。『アバウト・タイム』のティムの父親と同様に、家族と過ごす時間を何よりも大切にしたいからだそうだ。

 劇場公開から10年が経ち、『アバウト・タイム』をすでに何度も観たという人はずいぶんいるにちがいない。だが、スクリーンであらためて見直すことで、新しい発見があり、また前回とはちがった感慨を持つのではないだろうか。昔観た映画を大人になって見返すと、以前とはちがったポイントや見逃していたシーンで感動することは少なくない。

 人生は一度きりの一方通行だが、映画は何度も繰り返し楽しむことができる。同じシーンや同じ台詞でも、観る側の人生経験によって印象は大きく変わっていく。『アバウト・タイム』の公開10周年記念のリバイバル上映は、そんな映画ならではの楽しみを思い出させてくれる絶好の機会になるのではないだろうか。

ティムとメアリーとの生涯忘れられない結婚式
『アバウト・タイム 愛おしい時間について』
監督・脚本/リチャード・カーティス
出演/ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムス、ビル・ナイ、トム・ホランダー、マーゴット・ロビー
配給/Filmarks 5月31日(金)より全国65館にて2週間限定でリバイバル上映
© 2013 UNIVERSAL STUDIOS All Rights Reserved

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』 公開劇場

[北海道]札幌シネマフロンティア
[青森]イオンシネマ弘前
[宮城]MOVIX仙台
[山形]イオンシネマ天童、フォーラム山形
[福島]まちポレいわき1&2、フォーラム福島
[茨城]MOVIXつくば
[栃木]MOVIX宇都宮
[群馬]イオンシネマ高崎
[埼玉]MOVIXさいたま、イオンシネマ川口
[千葉]イオンシネマ市川妙典、キネマ旬報シアター
[東京]新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、キネカ大森、MOVIX昭島、イオンシネマむさし村山、イオンシネマ シアタス調布、Stranger、シネ・リーブル池袋、YEBISU GARDEN CINEMA
[神奈川]イオンシネマみなとみらい、イオンシネマ港北ニュータウン、シネプレックス平塚、横須賀HUMAXシネマズ、小田原コロナシネマワールド、イオンシネマ座間
[新潟]ユナイテッド・シネマ新潟
[石川]ユナイテッド・シネマ金沢
[福井]福井コロナシネマワールド
[長野]イオンシネマ松本
[静岡]MOVIX清水
[愛知]ミッドランドスクエア シネマ、MOVIX三好、豊川コロナシネマワールド、イオンシネマ大高、イオンシネマ ワンダー、イオンシネマ長久手 追加!、イオンシネマ岡崎、センチュリーシネマ 、ミッドランドシネマ名古屋空港
[三重]イオンシネマ東員
[京都]MOVIX京都、アップリンク京都、イオンシネマ京都桂川、イオンシネマ久御山
[大阪]なんばパークスシネマ、MOVIX堺、イオンシネマ茨木、イオンシネマ シアタス心斎橋
[兵庫]kino cinema神戸国際、塚口サンサン劇場
[岡山]イオンシネマ岡山
[広島]福山コロナシネマワールド、イオンシネマ広島西風新都、サロンシネマ1・2
[香川]イオンシネマ高松東
[福岡]ユナイテッド・シネマ福岡ももち、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、小倉コロナシネマワールド、イオンシネマ大野城
[佐賀]イオンシネマ佐賀大和
[熊本]イオンシネマ熊本
[宮崎]宮崎キネマ館

※上映日・上映時間・料金は各劇場にご確認ください
※上映劇場が変更となる場合があります
※チケット販売は、各劇場にて行います
長野辰次【MWJ映画部】
映画ライター。劇場パンフレットや「キネマ旬報」「映画秘宝」などに寄稿する他、美術系情報サイト「アートアジェンダ」などのネットメディアでも執筆。結婚を考えている人向けの話題作、注目作を紹介します。
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