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ツェッペリン、ビートルズ、ザ・フー、U2、 オアシスらレジェンドたちとの接近遭遇! 映画館で体感する極上の「ロックフェス」

2025/09/24 更新
洋楽好きな人なら、9月26日(金)はぜひチェックを入れておいてほしい。日本の映画館が、ロックフェス会場になるのだから。スクリーンに登場するのは、レッド・ツェッペリン、ビートルズ、ザ・フー、U2……といったロック史に名前を刻むレジェンドたちばかりだ。

ハードロックの歴史を変えたレッド・ツェッペリン結成期の熱い音源をたっぷりと聴かせてくれるドキュメンタリー映画『レッド・ツェッペリン:ビカミング』、ビートルズをデビュー時のマネージャーだったブライアン・エプスタインの目線から描いた劇映画『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』、ザ・フーの代表曲を網羅した『ザ・フー キッズ・アー・オールライト』、そしてU2のサラエボ公演を行なった舞台裏を追った『キス・ザ・フューチャー』など珠玉の音楽映画が同日に封切られる。

さらに10月17日(金)には、ライブドキュメンタリー『リアム・ギャラガー ライブ・アット・ネブワース2022』の公開が決まっている。オアシスのヒット曲が満載なのがうれしい。

野外フェスさながらに、この秋はロック界のレジェンドたちを追って映画館を行き来することになりそうだ。音響設備の整った劇場でのレジェンドバンドたちとの接近遭遇は、臨場感たっぷりな体験となるだろう。各作品それぞれの見どころを伝えたい。
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レッド・ツェッペリン結成時の秘蔵映像集


『レッド・ツェッペリン:ビカミング』より。結成時のツェッペリンの演奏が楽しめる
“没入型映画オデッセイ”と謳っているのは、『レッド・ツェッペリン:ビカミング』だ。ツェッペリンの記録映画には『レッド・ツェッペリン 狂熱のライブ』(1976年)もあるが、『ビカミング』はツェッペリンのデビューアルバム『レッド・ツェッペリンI』、続くセカンドアルバム『レッド・ツェッペリンII』を発表した初期ツェッペリンに特化した構成となっている。

1968年、英国の伝説的バンド「ヤードバーズ」のギタリストだったジミー・ペイジは、ニューヤードバーズとして新しいメンバーを集める。映画『007 ゴールドフィンガー』(1964年)の主題歌などのスタジオセッションで共演済みだったジョン・ポール・ジョーンズ(ベース)、20歳までに売れなければ会計士になることを考えていたという弱冠19歳のロバート・プラント(ヴォーカル)、そしてプラントの紹介でジョン・ボーナム(ドラムス)の4人が顔を合わせた。

初めてのセッションから、4人の息はぴたりと合った。4人の演奏は化学反応を起こし、ここにハードロック黄金時代が幕を開く。ツェッペリン伝説の始まりだった。

ロック神話誕生の瞬間


現在81歳になるジミー・ペイジが、結成時のツェッペリンを振り返る
大音量で奏でられるツェッペリンの音楽は、英国では当初は受け入れられなかった。彼らがブレイクしたのは、ファーストアルバムのリリース前に敢行した全米ツアー中だった。新しいバンドの熱い演奏は全米各地で話題となり、ツェッペリンは前座からメーンアクターへと昇格する。

ジミー・ペイジはレコード会社のプロデューサーに手を加えられることを嫌い、ファーストアルバムは自分で制作費を払い、納得のいくアルバムに仕上げた。ファーストアルバムを飾る「グッド・タイム・バッド・タイム」や「コミュニケイション・ブレイクダウン」を4人が演奏するシーンは、ロック神話誕生の瞬間に立ち会っているかのようなゾクゾクする臨場感が楽しめる。

異様なテンションの高さでレコーディングされた『レッド・ツェッペリンI』の1969年1月リリースに続き、同年10月に発表されたセカンドアルバム『レッド・ツェッペリンII』からは初期ツェッペリンの代表曲「胸いっぱいの愛を」が流れる。ファンの胸もいっぱいだ。

発見されたジョン・ボーナムのインタビュー音源


若き日のツェッペリン。右から2番目が「ボンゾ」ことジョン・ボーナム
ツェッペリンというと名曲「天国への階段」が思い浮かぶ人もいるだろうが、メンバー4人の個性がぶつかり合う最初の2枚のアルバムを、ツェッペリン最強のアルバムに推すファンは多い。本作はそんなファンを選曲、音質も含めて満足させるに違いない。

32歳で亡くなったジョン・ボーナムのインタビューが収録されていることも特筆される。ジョン・ボーナムに関する音声記録は残っていないとされていたが、映画スタッフは懸命に探し、オーストラリアの国立公文書館に眠っていたインタビュー素材を見つけ出すことに成功している。

「ボンゾ」の名で知られたジョン・ボーナムのドラム演奏は他のミュージシャンたちとは違う、独特の味わいがある。そんなボンゾとのセッション映像を、80歳を迎えた現代のペイジらが懐かしそうに振り返る。若かりし頃の彼らのロックオデッセイがあったことで、現代のロック音楽が存在することを感じさせる。

ビートルズの成功をめぐる光と影の物語


デビュー前のビートルズを描く『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』
劇映画『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』も見逃せない1本だ。ビートルズをブレイクさせたことで知られるマネージャーのブライアン・エプスタイン(ジェイコブ・フォーチューン=ロイド)だが、もともとは英国のリヴァプールにあるレコード店の経営者だった。

流行する音楽に敏感だったエプスタインの耳に留まったのは、リヴァプールのライブハウス「キャヴァン・クラブ」で若者たちを熱狂させていたビートルズだった。「エルヴィス・プレスリーをしのぐ人気者になる」とエプスタインは彼らの才能を確信し、芸能マネージャーの経験はまったくないにもかかわらず、ビートルズをレコードデビューさせることに尽力する。

らつ腕プロデューサーのジョージ・マーティンの意向から、ドラマーのピート・ベストをリンゴ・スターに変えるなどのシビアな体験もするエプスタインだった。やがて、エプスタインの粘り強い売り込みが成功し、米国の『エド・サリバンショー』への出演をきっかけに、ビートルズの人気は世界中へと広まっていく。

若き日のジョン・レノン、ポール・マッカートニーらは、雰囲気の似た若手キャストを起用し、デビュー前後の神話的エピソードの数々が再現されている。ビートルズが成功するために献身的に尽くすエプスタインだったが、同性愛者だった彼の悩みは誰にも打ち明けられることはなかった。音楽の世界に革命をもたらしたビートルズだが、当時の社会は同性愛には不寛容だった。史実に基づく形で、ショービジネスの世界の光と影が綴られていく。

ブライアン・エプスタインがドラマの中心ではあるものの、「サム・アザー・ガイ」「プリーズ・ミスター・ポストマン」「ベサメムーチョ」「マネー」といったデビュー前後のビートルズの人気レパートリーが劇中で披露されるので、ビートルズファンも充分に楽しめるだろう。

ステージを破壊しまくったザ・フーのライブドキュメンタリー


パワフルなライブパフォーマンスで人気を集めたザ・フー。『ザ・フー キッズ・アー・オールライト』より
ビートルズのブレイクに少し遅れ、1964年にデビューしたのがザ・フーだ。英国発祥のモッズカルチャーに多大な影響を与え、彼らの前衛性はパンクミュージックのルーツになったとも言われる。「マイ・ジェネレーション」「ピンボールの魔術師」などザ・フーのヒット曲を満載したライブドキュメンタリー『ザ・フー キッズ・アー・オールライト』は1979年に英国で公開され、そのHDレストア版として日本で劇場初公開となる。

ギタリストのピート・タウンゼントが腕をぶんぶん振り回すウインドミドル演法、ヴォーカルのロジャー・ダリトリーがコード付きのマイクをカウボーイの投げ縄のように扱うパフォーマンスは感涙ものだ。もちろん、ドラムスのキース・ムーンのスティック投げ、ベースのジョン・エントウィッスルの寡黙な演奏スタイルも忘れられない。

ライブがクライマックスに達すると、ピート・タウンゼントはギターを床に叩きつけ、キース・ムーンはドラムをなぎ倒してしまう。彼らのライブ後はステージがめちゃくちゃになり、ライブの収益よりも機材やセットの修理代のほうが高くついたという逸話は、いかにもザ・フーらしい。

ジョン・ボーナムと同じ32歳で亡くなったキース・ムーンにとって、本作の撮影のために行なわれた「シェパートン・スタジオ」でのライブ演奏が最後のパフォーマンスとなった。インタビューでは人を喰ったような対応でインタビュアーを煙に巻くキース・ムーンだが、彼のパワフルなドラム演奏はこのバンドにはなくてはならないものだった。

キース・ムーンはオーバードーズにより1978年9月に亡くなり、ザ・フーはやがて解散を余儀なくされる。70年代が終わりを迎え、ロック界はひとつの節目を終えた感がある。

U2のサラエボ公演の内幕を追った異色ドキュメンタリー


ボスニア紛争を無視できず、U2のボノはサラエボでの公演を約束する。(c)Bill Carter
1980年代になり、新たなロック界のカリスマ的存在となっていったのは、アイルランド出身のU2だ。ヴォーカルのボノが作る曲は、社会的メッセージが込められたものが多い。俳優のマット・デイモンとベン・アフレックがプロデュースした『キス・ザ・フューチャー』は、U2が1995年に行なったサラエボ公演が実現するまでの過程を追った社会派ドキュメンタリーとなっている。

1992年に起きたボスニア紛争によって、サラエボの街は民族の違いや宗教の違いによってズタズタに分断された状態だった。ZOO-TVツアー中だったU2は、内戦に巻き込まれたサラエボの人々とツアー会場となったスタジアムを生中継で繋ぎ、内戦の悲惨さを世界に向けて発信したことが知られている。

「サラエボで演奏する」という約束をボノは守り、U2のサラエボ公演が紛争終結後に実現する。集まった4万5000人の観衆に向かって、ボノが叫ぶ。

「過去よ さらば、未来にキスを。サラエボ万歳!」

ステージ中にボノの声が出なくなるアクシデントが起きるが、ボノの様子を見守っていた観客が一斉に歌い始める。内戦によって引き裂かれた観客の心が、U2のライブがきっかけでひとつに繋ぎ合わさっていく。常識まみれの大人になることにNOを突きつけてきたロックが、戦争に対してもNOを突きつけた瞬間だった。

ボスニア紛争の内情に比重が置かれ、U2のライブシーンはクライマックスに限定されているものの、国境や民族の壁を超えて支持されているU2の存在感を改めて感じさせる。

オアシス時代の名曲ぞろいとなった野外ライブ


野外フェスの醍醐味を伝える『リアム・ギャラガー ライブ・アット・ネブワース2022』
再結成したオアシスの来日公演(10月25日、26日 東京ドーム)が大きな話題となっているが、オアシスのヴォーカルであるリアム・ギャラガーの単独公演ながら2日間で17万人を動員した『リアム・ギャラガー ライブ・アット・ネブワース2022』も見応えのあるライブドキュメンタリーだ。16曲あるセットリストのうち、10曲は「Wonderwall」などオアシス時代の名曲となっている。

関係者やファンへのインタビューやメイキング映像などはなく、ネブワースに集まった大観衆がリアムのステージングと一体化し、陶酔していく様子がダイレクトに伝わってくる。すべての観客が、リアムが歌う曲の歌詞を知っているというのも、オアシスの人気ぶりを感じさせる。しかも、アンコールには元ストーン・ローゼスのギタリスト、ジョン・スクワイアが登場する。UKロックファンには堪らない内容だ。野外フェスの醍醐味がたっぷり詰まった80分間となっている。

この秋は、ぜひ映画館でロック三昧してほしい。洋楽好きな彼(彼女)も、きっと興味を示すのではないだろうか。

作品公開データ


『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』(原題『MIDAS MAN』)
監督/ジョー・スティーヴンソン 出演/ジェイコブ・フォーチューン=ロイド、エミリー・ワトソン、エディ・マーサン
配給/ロングライド PG-12 9月26日(金)より有楽町TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
(c)STUDIO POW (EPSTEIN).LTD
https://longride.jp/lineup/brian

『レッド・ツェッペリン:ビカミング』(原題『BECOMING LED ZEPPELIN』)
監督・脚本/バーナード・マクマホン 出演/ジミー・ペイジ、ジョン・ポール・ジョーンズ、ジョーン・ボーナム、ロバート・プラント
配給/ポニーキャニオン 9月26日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかIMAX同時公開
(c)2025 PARADISE PICTURES LTD.
https://zep-movie.com

『ザ・フー キッズ・アー・オールライト』(原題『The Kids Are Alright』)
監督/ジェフ・スタイン 音楽監督/ジョン・エントウィッスル
配給/オンリー・ハーツ 9月26日(金)より角川シネマ有楽町ほか全国順次公開
(c)Who Group Ltd
http://who.onlyhearts.co.jp

『キス・ザ・フューチャー』
プロデュース/マット・デイモン、ベン・アフレック 監督/ネナド・チチン=サイン
配給/ユナイテッドピープル 9月26日(金)よりキノシネマ新宿ほか全国順次ロードショー 
(c)2023 FIFTH SEASON,LLC. ALL RIGHTS RESERVED
https://unitedpeople.jp/kiss

『リアム・ギャラガー ライブ・アット・ネブワース2022』(原題『Liam Gallagher - Live at Knebworth 2022』)
監督/トビー・L
配給/WOWOW 10月17日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
https://www.wowow.co.jp/film/liam-gallagher
長野辰次【MWJ映画部】
映画ライター。劇場パンフレットや「キネマ旬報」「映画秘宝」などに寄稿する他、美術系情報サイト「アートアジェンダ」などのネットメディアでも執筆。結婚を考えている人向けの話題作、注目作を紹介します。
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