お腹の中の赤ちゃんは、妊娠中期から音が聞こえるようになるそうです。赤ちゃんの感性を優しく刺激するためにも、お母さんの気持ちを安定させるためにも、胎教にクラシック音楽は効果的だと言われます。
さらに、クラシック音楽を聞かせると植物の発育が良くなるとか、食品の熟成がうまくいくなんていう話もあって、クラシック音楽を聞かせた野菜、ワイン、味噌、鰹節まで、いろいろな商品も存在します。耳のない野菜や味噌にも影響があるというのですから、クラシック音楽は細胞や分子レベルでよい効果があるのかも。
そこで、安心の定番曲からスルドイ感性が育まれそうなマイナー曲まで、「胎教で聴かせたいクラシック10選」をお届けします。
1.モーツァルト 2台ピアノのためのソナタ ニ長調K.448
まずは定番、モーツァルト。モーツァルトの音楽には、聴くと脳からα波が出る"ゆらぎ"を持つものが多いとか。リラックスできる、脳の発育が良くなる、集中力が高まるなど、いろいろな効果に期待が寄せられています。
そんな"モーツァルト効果"ブームの発端が、『2台ピアノのためのソナタ』。
1993年に米「Nature」誌で、この曲を聴かせた学生のIQテストの点が上がったという論文が発表され、注目を集めました。この研究には反論も出ているので科学的実証が充分とはいえませんが、実際、仕事場でモーツァルトを流すことにより作業ミスが減少したという事例なども報告されているので、きっと何かしらの効果はあるのでしょう。
漫画『のだめカンタービレ』では、主人公ののだめと千秋が初めて一緒に弾く曲としても登場。2台のピアノが戯れ、愛らしいメロディと美しいハーモニーを奏でます。
2.ベートーヴェン 交響曲第6番 ヘ長調『田園』
自然の中の音には、リラックス効果があると言われています。
交響曲第6番『田園』は、楽聖ベートーヴェンが自然の情景をオーケストラで表現した作品。特に「小川のほとりの情景」と題された第2楽章では、小川のせせらぎや小鳥のさえずりを表現する音楽が現れます。森に行かずして、大自然に包まれる気持ちを味わえそう。
そして第4楽章の『雷雨、嵐』では、荒れ狂う自然がそれは見事に表現されています。お腹の中で赤ちゃんが嵐に巻き込まれたと思ってびっくりしないよう、気遣ってあげてくださいね(それくらい、嵐が見事に再現されたすばらしい音楽です!)。
3.ショパン『24の前奏曲』Op.28
情緒豊かなお子さんに育ってほしいとお望みなら、ピアノの詩人ショパンの『24の前奏曲』がおすすめ。
短い曲が次々現れ、あふれんばかりの喜び、行き場のない哀しみなど、起伏に富んだ感情を表現します。不安定になりがちな妊娠中のママの気持ちに寄り添ってくれることでしょう。有名な「雨だれ」や、某胃腸薬のCMで使われるメロディも登場するので、クラシックに馴染みのない方でも聴きやすいはず。
ちなみに、素敵な恋愛を思い出しながらショパンを聴くと、女性ホルモンが分泌されて若返り効果があるという説も! 産後も継続して聴きたいところです。
4.J.S.バッハ『ゴルドベルク変奏曲』BWV988
続いてもピアノの名作。不眠症に悩む伯爵の依頼により、眠れぬ夜を過ごすための音楽として書かれたと言われています。冒頭のアリアが華麗に変奏(主題をさまざまな技法によって姿を変えて演奏すること)されたあと、終曲で再び戻ってきたとき、ものごとの誕生と終わり、そして輪廻のようなものに想いを馳せずにいられません。複数のメロディが美しく絡み合うさまを追っていると、自然と心が落ちつきます。
ところでバッハはとても子だくさんでした。2人の妻との間に授かった子供の数は、なんと20人! そのうち5人が音楽家になりました。なにか縁起の良さのようなものも感じますね。
5.プッチーニ オペラ『蝶々夫人』
「蝶々夫人」は、長崎を舞台に、アメリカ海軍士官ピンカートンと、没落した藩士の娘である蝶々さんの悲恋を描いた物語です。夫ピンカートンが国に帰った後、蝶々さんは子供を産み、愛する人の戻りをひたすら待ちます。
プッチーニは日本に来たことがありませんでしたが、知人から日本の民謡を教えてもらって作品に取り入れました。「さくらさくら」や「君が代」など、随所でなじみのあるメロディが登場します。
ピンカートンと蝶々さんが愛をささやき合う二重唱は幸福感に満ち、彼の帰りを待つ蝶々さんが歌う有名な「ある晴れた日に」では、切なさがあふれる......。美しいメロディの宝庫です。全体で2時間以上あるので、気に入った曲を抜粋して聴くのもおすすめ。
6.シューベルト ピアノ五重奏曲『ます』D667
学校の校内放送などで耳にしたあの有名なメロディは、第4楽章で登場します。これはもともと歌曲として作曲されていて、その詞は、ずるい漁師が姑息な手をつかって魚を釣り上げるさまから、"男はこういうふうに女をたぶらかす。若い娘さんは気を付けて"という内容。もしも赤ちゃんが女の子なら、お腹にいるうちから聴かせておくといいかも!?
楽曲はピアノと4つの弦楽器による絶妙な掛け合いが、キラキラの音楽を生み出します。聴けば明るい気持ちになる、シューベルトの名作です。
7.チャイコフスキー バレエ音楽『くるみ割り人形』Op.71
幸福感てんこもりの作品といえば、コレ! クリスマスの夜、少女がプレゼントされたくるみ割り人形が、夢の中で王子に変身して、彼女をお菓子の国に導くという物語。お菓子の精が踊る「葦笛の踊り」や「花のワルツ」など、どこかで聞いたメロディが次々登場します。幸せな音楽にどっぷり浸りましょう。
8.ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 Op.18
浅田真央選手が2014年のソチ・オリンピックで使用したことで知られる作品。フィギュアスケートの演技では第1楽章が4分半ほどに短くアレンジされていますが、全楽章を聴くと30分少々あります。
ロシアの母なる大地を思わせる壮大な音楽に包まれ、安らぎを感じられる一曲。随所に表現される極上の旋律を聴いて、赤ちゃんも大きな心を持った子に育つかも。
9.プーランク ピアノ協奏曲 FP.146
ファンタジーにあふれ、空想の世界で空を飛んでいるような気持ちになるこの作品。20世紀フランスの作曲家プーランクが1949年に作曲したものなので、数世紀続くクラシック音楽史の中では比較的新しい作品です。
鮮やかなハーモニー、ユーモアと洗練が感じられる音楽に、否応なくイマジネーションが刺激されます。クリエイティビティ豊かなお子さんが生まれてくるかも!
10.ジョン・ダウランド 「流れよ、我が涙」ほか(リュート歌曲集より)
最後は一気に時代をさかのぼり、中世イギリスの作曲家、ダウランドの作品から。
リュートとは、ギターのように弦をはじいて弾く中世~バロック時代に流行した楽器。ダウランドは自らリュートを爪弾き、愛や孤独について切々と歌う楽曲を数多く残しました。
代表作「Flow My Tears(流れよ、我が涙)」(歌曲集第2集)に加え、「Come Again」、「Can She Excuse My Wrongs?」(歌曲集第1巻)など、今聴いても古さを感じません。
クラシック作品としてメジャーなものではありませんが、スティングがカバーし、2006年にアルバム『ラビリンス』をリリースしたことで再注目されました。なんでも彼は英国のミュージシャンとして、シンガーソングライターの先駆けであるダウランドを尊敬しているのだとか。あたたかいリュートの音とセクシーなスティングの歌声のハーモニーがたまりません。
胎教に良いクラシックが集められたオムニバスCDはたくさんありますが、ここであえて推奨したいのは、「ママがちゃんと選んで、ちゃんと聞かせる」ということ。そのときの気持ちに合う曲をセレクトして、ゆったりと耳を傾けてはいかがでしょう。
ちなみに、同じ作品でも演奏家が変わると印象が違って聴こえるので、いくつかの演奏を聴き比べてみてくださいね。胎教で聴かせていた曲を、別の演奏家のCDで流していて、生まれてきたお子さんが突然、「ママ~、これお腹の中で聴いてたのと違う」と言ったとしたら......生命の神秘ですね。その子は天才かもしれません。大切に音楽の才能を伸ばしてあげてください!
(文・高坂はる香)
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