こんにちは、ライターのちょく(直)です。
突然ですが皆さま、ライオンってカッコイイと思いませんか。
「百獣の王」の名を欲しいままにしている、強そうで勇ましいビジュアル。
一匹のオスに対して何匹ものメスが囲んでいる姿は古くからの「王様」をイメージさせますし、メスが狩りで手に入れた食糧にありつくオスの様子もさすがの貫禄......
......って、あれ?
オスライオンって、何もやってなくない?
メスをいっぱい囲んで、食事は持ってきてくれてって......つまりハーレムでヒモってこと? 百獣のハーレム王? ヒモのカリスマ? オスライオンって、最高なのでは?
個人的に「何もしないでモテて、しかも働かなくていい」というのは男の理想の最終形だと思っているのですが、ライオンのオスに限ってそんなにうまい話があるのでしょうか。許せません。きっと何か秘密があるはず。
ということで詳しい人に聞いてみましょう。
今回お話を伺った学校法人 川原学園 東京動物専門学校 学校長 北村健一さん。過去には動物園の園長もやられていたとのことで、ライオンについてかなり詳しいお話を聞けそうです。
「ということでですね、今回はオスライオンの生態について詳しくお話を伺いたく......」
「いやー......」
「............」
「僕もよくわかってないんだよね」
「......え?」
「野生の動物と動物園にいる飼育動物って、もう生態が全然違うのよ。動物園はエサが勝手にもらえるでしょ。それに、そもそも日本にはライオンを研究する人が少ないんじゃないかな。ライオンに日本種なんていないから、そりゃあ研究も進まないよね」
「確かに今回いろんな大学の教授を当たってみましたが、ライオンに詳しい人はほぼいませんでした」
「でしょう? 少なくとも関東でライオンに詳しい人なんてあまり聞かないねえ」
「でもせっかくここまで来たので、何か知ってること教えてくださいよ」
「うーん。どんなことが知りたいの? 例えば大体の動物って群れを作って集団行動するんだけど、猛獣の中で群れを作って行動するのはほぼライオンだけなんだよね。理由は明らかになってないけど。こういう話?」
「おぉ、そういう話を聞きたいです! あとは、群れを引き連れてるだけでオスライオンは何もしてない説について!」
「何もしてないってことはないんじゃない? ライオンの群れを『プライド』って言うんだけどね。プライドを守るのはオスライオンの役目なのよ」
「え、そうなんですか? 何もしないでのうのうと生きてるんじゃないんですか?」
「いやいや、そんなことはないよ。プライドは常にほかのオスライオンに乗っ取られる可能性があって、守れなかったら死ぬか放浪の旅に出なきゃいけないから」
「え? 死ぬの!?」
「うん、そうなると子どもも全て殺されるし」
「子どもまで......!?」
「うん。それが自然界のライオンでは当たり前だから」
「マジですか。オスライオンの人生、めちゃくちゃハードじゃないですか」
......つまりこういうことらしい。
ライオンの群れの仕組み
①プライド内で成長したオスは、兄弟同士で独身オスの群れを作り、放浪する
↓
②成熟したら、プライドを狙う
↓
③オス同士が戦う
↓
④勝ったオスがプライドを乗っ取る。負けたほうは死ぬかそのまま去る
↓
⑤負けたオスの子どもを殺す
↓
⑥残されたメスは発情し、新しいオスの子を身ごもる
↓
⑦ ①に戻る
ライオンの群れは母系社会で、メス同士や子どもは血縁関係でつながっているけれど、オスとの血縁関係は直接の子ども以外なくなるらしい。
そしてオスはプライドを守るために、なわばりをパトロールしたり、侵入者を追い出したりしているそうだ。
まんま弱肉強食の世界だったー!!
「ライオンのオスも、プライドを守るのに必死なんですね。家庭を守るという意味では、人間の男も同じかあ」
「そうだよ。オスが歳をとったり病気になってプライド取られるっていうのもあるしね。大黒柱が倒れたら大変って意味では、人間と同じっちゃ同じ。まさに野生動物の世界は弱肉強食だからね」
「ある意味人間より過酷だなあ......」
「そうだねえ。あと、肉食動物って草食動物より多く産まれるんだから、不思議よね?」
「え! そうなんですか?」
「そうじゃない? だって馬とか牛って、一度の出産で一頭ずつしか産まないでしょ? なのに猫や犬って、一度にたくさん産んでるよね?」
「言われてみればそうですね!? 捕食動物の方がたくさん産むのか。不思議だ」
「肉食動物同士でも熾烈な競争があるからなのよ。そりゃあ狩りで獲物の取り合いにもなるし。動物園のライオンはそんなことないけど、野生の世界は、本当に弱肉強食の競争社会よ」
「想像していたよりも厳しい世界でした」
「意外でしょ? こうした野生のライオンの生態は外国でしか見られないから、動物園の飼育員がアフリカまで見学に行くことがあるんだけど、野生のライオンの姿を見て、自信をなくして帰ってくることもあるよ」
「そんなに!?」
「さっきも言ったとおり、動物園って実物の動物をお客さんに見せるためにあるのに、野生と飼育動物では生態が全然違うからね。野生の動物を見て学びを得る飼育員もいれば、ショックで辞めちゃう飼育員もいるんだよ」
「確かにギャップはすごそうだもんなあ......」
意外と大変だったんですね、オスライオンさん
「当たり前かもしれないですけど、野生のライオンの話を聞くと、ディズニーの『ライオンキング』みたいな世界を思い出しますね......。あれ本当の話だったんだ」
「ああ、僕もブロードウェイでライオンキング観たよ。あれはよくできてるね~」
「おお、先生が言うんだから本物っぽい。やっぱり弱肉強食の世界を上手に表現できてるってことですか?」
「ううん、キリンの動きがよく再現されてた」
「あ、キリンですか......」
「あのキリンの動きは手足の動きが本物とほぼ同じですごかったなあ」と感心してる北村さん
そういえば校舎の入り口にキリンのオブジェがあったのでキリンがお気に入りなのかもしれません。たぶん。
「そういえば僕、昔は動物園の園長やってたんだけどね。一回だけ動物園で結婚式やったことがあるよ」
「え! そうなんですか!? 動物園の職員さん同士とか......?」
「いや、一般の人で。しぶしぶ了承したけど......。サル山で記念撮影とかしてたよ。もうやりたくないなー」
「何でですか? 素敵な式になると思いますが......」
「いやぁ、やっぱり臭いからね」
「はぁ......なるほど......?」
「それより海外の動物園はキレイでオシャレだからね。やる人もいるんじゃないかなぁ」
「水族館で結婚式をやるサービスは日本にもありますけどね」
「あぁ! 水族館はいいね! オシャレでキレイだし臭くないしね!」
「なるほど、北村さんは臭いを結構気にするんですね」
「そりゃ誰だって結婚式が臭かったらイヤでしょ」
まとめ
「話をまとめますと、ライオンのオスはなにもしてないということではなく、プライドを守るために大黒柱として頑張っているということですね! 人間の家庭と同じ!」
「うーん、まぁ。そうなのかなぁ? そういうことでいいのかなぁ......」
「違いますか?」
「いや、一概にはそうだって言えないのよ。やっぱり動物っていうのはわからないことがまだ沢山あるしね。結局は『そう言われている』っていうことだから」
「それもそうですね......。すいません、無理矢理まとめようとしてしまい......」
「まあ、本にもそう書いてあるから、いいんじゃないかな」
「いいんだ」
ということで、北村先生から話を伺ってきました。
冒頭では「オスライオンってハーレムでヒモなんでしょ?」みたいなノリで大変失礼なことを言ってしまい、ライオンに大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。
実際はそんなこともなく、オスライオンも生きていくのに必死なようですね。
結局は一つのプライド(家庭)を守るという意味で、オスの役割は我々人間と変わらないのかもしれません。僕も一家の大黒柱として、もうちょいしっかりしなきゃな、と思いました。無職だし。
マジで頑張ろう。ほんと頑張ろう。
取材協力
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