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高畑充希&岡田将生主演『1122』が配信開始!「婚外恋愛」を認めた夫婦生活はありえる?

2024/06/13 更新
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地上波よりもハードな内容の配信ドラマ


一子(高畑充希)と二也(岡田将生)は、自他ともに認める「いい夫婦」だったが……
19世紀のフランスの詩人、シャルル・ボードレールは「結婚は人生の墓場だ」という言葉を残したと言われている。その真偽のほどは後ほど触れるとして、独身時代に自由な恋愛を謳歌した人にとっては、身につまされる台詞かもしれない。

 結婚後、一生にわたってパートナーのことだけを愛し続けることができるのか? パートナーの前ではそう誓ったものの、心のどこかで「本当か?」と呟いているもう一人の自分がいるのではないだろうか。新婚当初はそう思っていても、次第に結婚生活が恒常化してくると、はなはだ怪しいものになってくる。

 そんな夫婦生活のリアリティを、妻側、夫側、双方の視点から描いたドラマ『1122 いいふうふ』全7話が、Prime Videoにて2024年6月14日(金)より配信される。渡辺ペコの原作コミック『1122』(講談社)全7巻を、高畑充希、岡田将生、西野七瀬、高良健吾、吉野北人、成田凌、風吹ジュンら多彩なキャストを起用してドラマ化したものだ。

 現在公開中の映画『からかい上手の高木さん』や『愛がなんだ』(2019年)など恋愛コメディの名手として人気の今泉力哉監督が演出し、今泉力哉監督の妻であり、映画監督でもある今泉かおりさんが脚本を担当している。今泉力哉監督ならではのコミカルなやりとりが楽しめる一方、地上波ドラマではなかなか難しいハードな展開も盛り込まれている。

世間的には「いい夫婦」だが、実はセックスレス


夫婦仲のいい一子と二也は、公認制「婚外恋愛」を採用する
主人公となるのは、結婚7年目を迎えた30代半ばとなる一子(高畑充希)と二也(岡田将生)の夫婦。一子はフリーランスのウェブデザイナーで、二也は文具メーカーに勤めている。一子は少しズボラな一面があるが、細かいことに気づく二也がフォローし、夫婦仲は良好だった。

 ところが、この夫婦は世間一般とは異なる変わったルールを取り交わしていた。それは「婚外恋愛」を認めるというもの。お互いに隠しごとはせず、好きな相手ができたらデートしてもOK。ただし、そのことは家庭内には持ち込まないようにしなくてはいけない。

 もともとは仕事で疲れ、セックスが面倒になっていた一子から言い出したものだった。「家族になったんだから、セックスはしなくてもいいんじゃない」というのが一子の言い分だ。最初は納得しかねていた二也だったが、趣味で通い出した生花教室で、既婚者の美月(西野七瀬)と懇意になり、毎週木曜は生花教室の後で美月とのデートを楽しみ、毎月第3木曜はお泊まりしていた。

 自分から言い出したことなので、「これは嫉妬ではない」と自身に言い聞かせる一子だったが、頭(理性)と身体(性欲)は別ものだ。大学時代からの友人たちとの女子会で「女性向け風俗」があることを知り、好奇心から一子は訪ねてみることに。そこで出会ったのが、礼儀正しく、清潔感のあるセラピストの礼(吉野北人)だった。いい夫婦のはずだった一子と二也だが、お互いに別の相手とベッドを共にすることになってしまう。

一方通行の恋愛感情を描く今泉力哉監督


美月(西野七瀬)と二也は、生花教室で逢瀬を重ねることに
夫婦間のセックスレス、不倫、女性向け風俗店、さらにはED(勃起障害)……。結婚をこれから考えている人たちにとっては、一種のタブーとも言えるパワーワードが次々と並び、カップルが観るには「取り扱い要注意」なドラマとなっている。だが、主演の高畑充希と岡田将生の演技は軽妙かつ的確なもので、意外なドラマ展開にグイグイと引き込まれていく。

 7年目の結婚記念日に二也からセックスを拒否られた一子のショックを受けた表情や、二也のスマホを盗み見する際などの高畑の演技は実にお見事。アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』(2021年)や『ゴールド・ボーイ』(2024年)でクセの強い二枚目を演じた岡田だが、今回は女系一家で育ったフェミ男役を嫌味なく演じてみせている。

 大人向けの恋愛ドラマとして楽しめる『1122』を演出した今泉力哉監督は、劇映画デビュー作『こっぴどい猫』(2012年)からずっと一方通行の恋愛模様を描いてきた。主人公たちが恋にジタバタする姿は、本人は真剣でも外野から見ると滑稽極まりない。今泉力哉監督は、そんな煩悩まみれな人たちを魅力的に見せるのが抜群にうまい。

 今泉力哉監督の作品でより多くの人に愛されているのは、岸井ゆきの&成田凌のブレイク作となった『愛がなんだ』だろう。出版社に勤めるマモル(成田凌)のことが好き過ぎるテルコ(岸井ゆきの)の姿を通し、「片想い」という言葉の枠をこえた、形容しがたい愛の形が描かれていた。言語化できない感情や関係性を描いているという点では、『ラウンダバウト』『にこたま』『恋じゃねえから』でも知られる渡辺ペコが描くコミックの世界と、今泉力哉監督作品は通じるところがある。

一瞬で崩壊してしまう、夫婦の関係性


高級エステに勤めるセラピストの礼(吉野北人)は礼儀正しい若者だった
一子と二也の関係性は、世間一般的な夫婦関係ではなく、また恋人や友人との関係とも異なるものだ。ふたりの間には子どもがいないので、母と父という関係性でもない。セックスレス状態となっていても、お互いの体調が悪いときや精神的にひとりでいることがしんどい場合は、真っ先に駆けつける。

 とりわけ、一子は実家で暮らす実母(風吹ジュン)と幼い頃から折り合いが悪く、ふたりの間に二也が入ることで、うまくバランスを保っていた。一子の欠けている部分を、補ってくれるのが二也だった。二也もそれが苦ではない。お互いに得難い関係性であることは、はっきり認識していた。

 強く結ばれていたはずの一子と二也の夫婦関係だが、不倫相手の美月との別れ話がこじれ、二也はED(勃起障害)に陥ってしまう。一方の一子も、セラピスト・礼の『娼年』(2018年)の松坂桃李ばりのその魅力にはまってしまう。7年間かけて築いてきたふたりの関係性だが、崩壊するのはあっという間だった。

 シリーズ序盤はコメディとして楽しませるが、第3話以降の展開はこちらの予想を次々と裏切るものとなっている。性に関する問題は、長く連れ添った夫婦間でもやはりナイーブなものであることがよく分かる。

夫婦によるコラボ作が多い映画界


会社人間の志郎(高良健吾)は、妻の美月に育児を任せっぱなしだった
本作では、今泉力哉監督の妻・今泉かおりさんが脚本を手掛けており、夫婦での初コラボレーションとなった。これまでも今泉力哉監督が書き上げた脚本は、かおりさんに最初に読んでもらうようにしていたそう。今回は正式に脚本家という立場にかおりさんが就いたことで、意見の相違点などで激しく言い交わすことになり、「結婚してから最大の危機(笑)でした」と今泉力哉監督は語っている。その分、双方の本音が生かされたドラマになったのではないだろうか。

 映画界は夫婦によるコラボ作が少なくない。有名なところでは、米国インディペンデント映画の巨匠として知られるジョン・カサヴェテス監督。彼の妻である女優ジーナ・ローランズを起用した作品を次々と生み出している。『こわれゆく女』(1974年)は夫婦愛を描いた名作だ。ハードボイルド系の『グロリア』(1980年)は、ナタリー・ポートマンのデビュー作『レオン』(1994年)の元ネタとなっている。

 ファンタジー色の強い『岸辺の旅』(2015年)や『散歩する侵略者』(2017年)などで、夫婦間の不思議なパートナーシップを描いた黒沢清監督も、愛妻家として知られている。大学時代からの映画仲間だった夫人に、脚本づくりの際にアイデアをもらうことがあるそうだ。『ゴジラ−1.0』(2023年)でアカデミー賞視覚効果賞を受賞した山崎貴監督も、夫人である佐藤麻衣子監督とのコラボ作が多い。

 お互いの長所と短所を知り抜いた関係性は、多くのスタッフやキャストが関わる映画づくりにおいても重要な屋台骨になっているようだ。

ボードレールが残した言葉の真意とは?


一子と二也は、ふたりの今後を話し合うことに
冒頭で取り上げたボードレールの「結婚は人生の墓場」という言葉だが、実は日本語の誤訳であるという説も語られている。出典もとがはっきりしないが、ボードレールの言葉は「自由恋愛はやめて身を清め、お墓のある教会で結婚式を挙げなさい」というものだったらしい。当時のフランスは性病が流行しており、不特定多数の相手と交遊するよりも、ひとりの相手を深く愛することを薦めたという。

 ボードレール自身が性病で苦しんでおり、実体験に基づいた教訓だったようだ。ところが、本人の意図したものとはちがった解釈で、日本では広まってしまったことになる。

 愛という名の方程式には、正解はない。当事者同士がしっかりと話し合っても、必ずしも正しい結果に至るとは限らない。また、愛は不定形の生ものゆえに、取り扱いは容易ではない。でも、だからこそ尊く、愛おしく思えるのではないだろうか。一子と二也のふたりが最終的にどんな愛の形を見つけるのか、ぜひ最終話まで見届けてほしい。

Prime Videoにて2024年6月14日より世界独占配信

原作/渡辺ペコ『1122』(講談社)
脚本/今泉かおり 監督/今泉力哉 撮影/四宮秀俊
出演/高畑充希、岡田将生、西野七瀬、高良健吾、吉野北人、中田クルミ、宇垣美里、土村芳、菊池亜希子、内田理央、芹澤興人、前原滉、橋本淳、市川実和子、片桐はいり、森尾由美、宮崎美子、成田凌、風吹ジュン
Prime Videoにて2024年6月14日(金)より第1話~3話、6月21日(金)より第4話~5話、6月28日(金)より第6話~第7話(最終話)を世界独占配信
(C)渡辺ペコ/講談社 (c)murmur Co.,Ltd.
https://1122-drama.com/
長野辰次【MWJ映画部】
映画ライター。劇場パンフレットや「キネマ旬報」「映画秘宝」などに寄稿する他、美術系情報サイト「アートアジェンダ」などのネットメディアでも執筆。結婚を考えている人向けの話題作、注目作を紹介します。
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