香港で大ヒット『トワイライト・ウォリアーズ』 新旧スター競演とカオスなるものへの郷愁
2025/01/16 更新
男たちの友情と決別を描いた『男たちの挽歌』(1986年)や『インファナル・アフェア』(2002年)などのノワール系の大ヒット作を生み出してきた香港映画から、新たなる傑作が誕生した。ルイス・クー、レイモンド・ラム、サモ・ハンらが共演した『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』は、観客の心をがっちり鷲づかみするエモーショナルなアクション大作となっている。
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香港映画の新旧人気スターが大結集

香港映画界の兄貴ルイス・クー(画像左)とレイモンド・ラムが共演
香港映画界の新旧人気スターを結集させたキャスティングと、佐藤健主演の新感覚時代劇『るろうに剣心』(2012年)をアジア各国で大ヒットさせた谷垣健治アクション監督の斬新なアクション演出が話題を呼び、香港映画史上最大の動員記録を打ち立てている(2024年9月現在)。
香港映画界のイケメン男優たちの熱いドラマを堪能するのもよし、『るろ剣』からさらに進化したアクションシーンのつるべ打ちに酔いしれるのもよし。突き抜けたアジアンエンターテイメントが125分間にわたって楽しめる。
9億円を投じて再現された「九龍城砦」

日本でも人気が出そうなテレンス・ラウ(画像左)とトニー・ウー
物語の主人公となるのは、難民として香港にやってきたチャン・ロッグワン(レイモンド・ラム)。地下格闘技の世界で食いつないでいたが、黒社会の大ボス(サモ・ハン)に逆らったことから、命からがら九龍城砦へと逃げ込む。
この街の治安を守るロンギュンフォン(ルイス・クー)はトラブルが起きることを嫌い、チャンを追い返そうとする。だが、どこにも行き場がないと懇願するチャンを見捨てることができず、仕事や寝る場所を世話することに。流れ者に対しても、寛容な街だった。真面目に働き始めたチャンは、やがてロンの一番弟子・信一(テレンス・ラウ)たちと交流し、友情を育んでいく。
物語後半、チャンの意外な生い立ちが明らかになり、香港黒社会との大抗争へと発展する。
食事シーンが美味しそうな映画にハズレなし

チャン・ロッグワンが食べる叉焼飯がめちゃめちゃ美味しそう
昨秋、TBS系で放映された神木隆之介主演の日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』が話題となった。高度経済成長期の日本を支えた「軍艦島」で働く炭鉱夫一家の歴史を描いたドラマだったが、香港の人たちにとっては、今は亡き九龍城砦が特別な感慨をもたらすようだ。
みんな貧しかったけど、困っている人がいれば、手を差し伸べる心の豊かさがあった。悩みごとがあれば、親身に相談に乗ってくれる仲間がいた。身分証なしでも、働きたい者はすぐに働くことができた。1990年代初頭までは香港にも、そんな人間味を感じさせる自由なコミュニティーが実在した。
お金のないチャンを、理髪店を営むロンが食堂へ連れていくシーンがある。チャンは地元名物の叉焼飯にかぶりつく。白いご飯の上に厚切りの叉焼を一枚載せただけのシンプルなメニューだが、トロトロの叉焼がたまらなく美味しそうだ。食事シーンを美味しそうに描いている映画には、決してハズレがない。
CGは極力使わない谷垣健治アクション監督

演出中の谷垣健治アクション監督(画像左)
本作を撮ったソイ・チェン監督とは、中国全土でメガヒットしたドニー・イェン主演作『モンキー・マジック 孫悟空誕生』(2014年)などでもコラボしている。
和製ドラゴンこと倉田保昭のアクションクラブで修行した谷垣健治は、ジャッキー・チェン主演のカンフー映画に憧れ、香港に渡ったのが中国返還を控えていた1993年。この年から翌年にかけて九龍城砦は取り壊され、跡地は公園として整備されている。そうした時代に下積みを経験している谷垣だけに、本作のアクション指導も普段以上に熱いものになったようだ。
「生きたレジェンド」サモ・ハンらが見せる超絶技

悪役のサモ・ハンは、迫力ある棒術を披露する
若手時代には『燃えよドラゴン』(1973年)でブルース・リーと手合わせしている、まさに「生きたレジェンド」であるサモ・ハン。浮き沈みの激しい香港映画界を生き抜いてきたタフさが、マフィアのボスという今回の役とすごくマッチしている。
九龍城砦の守護神であるロンギュンフォン役のルイス・クーは、現在の香港映画を支える超売れっ子俳優。ジョニー・トー監督の裏社会もの『エレクション』(2005年)、ドニー・イェン主演作『導火線 FLASH POINT』(2007年)、娘を拐われた警察官役を熱演した『SPL 狼たちの処刑台』(2017年)など多くの作品に出演してきた二枚目俳優だが、50代になって渋みが加わり、貫禄のある兄貴分を好演している。
四大天王のひとりとして大人気を誇ったアーロン・クオックが、ルイス・クーのライバル役で出演するなど、助演陣も見逃せない配役となっている。
香港注目のライジングスターたち

ナイフ使いの信一を演じたテレンス・ラウ。ワイルドなイケメンだ
さらに注目なのが、気功を使ってチャンたちを苦しめる悪役・王九役のフィリップ・ン。リアルな格闘家でもあり、疲れ知らずのアクションでクライマックスを大いに盛り上げている。
大ヒット作『プロジェクトA』(1983年)から、ジャッキー・チェン、サモ・ハン(当時はサモ・ハン・キンポー)、ユン・ピョウが大ブレイクしたように、本作からも新しいスターが続々と誕生するに違いない。
日本と文化的距離の近い香港

冷酷な悪役を演じ切ったフィリップ・ン。素顔はかなりの二枚目
香港映画界の新旧スターたちが、体を張ってバチバチと火花を散らし合う。野心、怒り、プライド、友情、そして狂気……。そうした情念が渾然一体となって、スクリーンを観ている私たちの心を揺さぶる。
人間には美しく、整ったものを求める心理がある一方、わい雑なもの、混沌としたもの、底知れぬ粗野なエネルギーに惹かれる一面もあるのではないだろうか。九龍城砦に懐かしさを感じるのは、香港人だけではない。中国返還前の香港を知らない日本人が観ても、ノスタルジーを掻き立てられるものが本作にはあるはずだ。
『トワイライト・ウォリアーズ』作品データ

監督/ソイ・チェン アクション監督/谷垣健治 音楽/川崎憲治
出演/ルイス・クー、レイモンド・ラム、テレンス・ラウ、トニー・ウー、ジャーマン・チョン、サモ・ハン、フィリップ・ン、リッチー・レン、ケニー・ウォン、アーロン・クオック
配給/クロックワークス PG12 1月17日(金)より新宿バルト9ほか全国劇場にて公開
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