眞栄田郷敦が至高の通過儀礼に挑む『ブルーピリオド』 安定した将来よりも、心の豊かさを選ぶという生き方
2024/08/10 更新
連日のような酷暑が続いているが、それ以上に熱いのが映画『ブルーピリオド』だ。「マンガ大賞2020」を受賞した山口つばさのベストセラーコミック『ブルーピリオド』を実写化したもので、主人公の矢口八虎(やぐち・やとら)を、人気俳優の眞栄田郷敦が演じるほか、高橋文哉、板垣李光人、桜田ひより、中島セナ、秋谷郁甫ら注目の若手キャストが起用されている。
絵を描くことの面白さに目覚めた高校生が、難関中の難関である東京藝術大学を受験するというシンプルなストーリーながら、アートの世界に関心がない人の心も惹きつける熱いドラマが展開されていく。見終わった後には、心地よい爽快感が残る文化系の青春ドラマだ。ちなみに「ブルーピリオド」とは、パブロ・ピカソの青春時代の画風「青の時代」を指している。
絵を描くことの面白さに目覚めた高校生が、難関中の難関である東京藝術大学を受験するというシンプルなストーリーながら、アートの世界に関心がない人の心も惹きつける熱いドラマが展開されていく。見終わった後には、心地よい爽快感が残る文化系の青春ドラマだ。ちなみに「ブルーピリオド」とは、パブロ・ピカソの青春時代の画風「青の時代」を指している。
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八虎の人生を変えた、一枚の絵
スクールカースト上位者の八虎だが、友達と遊んでいても空虚さを感じていた
そんな八虎の人生が、一枚の絵をきっかけに大きく変わっていく。美術の授業で「好きな風景」という課題を与えられた八虎は、渋谷でオールして遊んだ後の早朝の渋谷の光景を、青い水彩画として描き上げた。その絵を描いたことで、八虎はそれまで感じたことのない高揚感や開放感を味わったのだ。
絵を描くことで開放感を得る主人公
予備校で出会った世田介(板垣李光人)は、八虎のことを嫌っていた
家庭の経済的事情から、八虎が私立大に進むこと、浪人することは許されなかった。国立大学である東京藝術大学は合格率200分の1という超難関校で、三浪四浪が当たり前という世界だ。同じ美術部にいる「ユカちゃん」こと鮎川龍二(高橋文哉)と共に、美大専門の予備校に通い始めた八虎。そこで天才的な画力の持ち主である高橋世田介(板垣李光人)らライバルたちと出会い、数々の課題をクリアしていき、デッサン力やテーマの解釈力を身につけていく。
「好きなことをする努力家は最強」
美術の佐伯先生(薬師丸ひろ子)は、名言メーカー
だが、その正しいと思っていた「安定した将来」に対し、八虎自身が熱くなることができない。あろうことか、見下していた絵画の世界に魅力を感じ、その世界を極めてみたいという想いに取り憑かれてしまう。
大学でより本格的に絵の勉強がしたい。しかし、藝大に合格できる確率はとても低い。そもそも、自分に才能があるかどうかも分からない。思い悩む八虎の背中を、美術の佐伯先生(薬師丸ひろ子)が「好きなことをする努力家は最強なんです」という言葉で後押しする。好きなことを、人生のもっとも大きなウエイトに置こうと、八虎は決断する。それまでソツのない生き方を送ってきた八虎にとっては、自分の生涯を賭けた大勝負だった。
藝大受験を目指す八虎の前に立ちはだかる存在
絵画特訓を受けた眞栄田郷敦が、「勝利」をテーマにして描いた最終課題
映画化された『ブルーピリオド』は、この親子の対峙シーンが物語中盤の大きな山場となっている。夜、キッチンでうたた寝していた真理恵を、八虎はなにげにスケッチする。やがて目を覚ました真理恵に、八虎はこう言う。
「熱いお湯で食器を洗うから、母さんの手がささくれているとか、買い物の荷物が重いから意外と腕に筋肉がついているとか……。絵を描いてなかったら、こんなことにも気づけなかった」
八虎は絵を描くことで、対象物がどんな存在であるかをしっかりと見極め、その本質までも理解する人間に成長を遂げていた。やんちゃだった息子は、もう子どもではなかった。八虎の内面的な成長を知った真理恵は、それ以上は息子の決断に反対することはできなくなってしまう。子どもが自立した瞬間を鮮やかに描いたシーンとなっている。
実は藝大を受験していた眞栄田郷敦
合同絵画会での眞栄田郷敦。撮影本番でなくても真剣な表情だ
郷敦は中学・高校時代は吹奏楽部に所属し、サックス漬けの青春を送っている。高校卒業時には東京藝大音楽学部を受験したものの、合格は叶わずに俳優の道に転向したという経緯がある。それゆえに藝大を目指す八虎役は、相当に気合が入っていたはずだ。
どんなアート作品よりも美しいヌード
八虎を触発した、森まる(桜田ひより)先輩の描く「天使の絵」
原作者の山口つばさは東京藝大出身者であり、受験のプレッシャーで八虎がじんましんに苦しむなど、至高の通過儀礼に挑む主人公の葛藤が、生々しく描かれている。また、自分が見つけた道を真っ直ぐに突き進む八虎に刺激され、女装男子のユカちゃん、引きこもり生活を送っていた世田介らも、八虎に反発しつつ、それぞれの生き方を懸命に模索することになる。
ポスト印象派の画家が残した名言
八虎(眞栄田郷敦)とユカ(高橋文哉)は共に東京藝大を受験する
森先輩が「先生に言われた受け売りだけどね」というこの言葉は、おそらくはゴーギャンが元ネタだろう。ゴーギャンは若い画家ポール・セリュジエに教えを乞われ、「木が青く見えるのなら、青く塗ればいい」と言ったことが伝えられている。
ポスト印象派として知られるフランスの画家ポール・ゴーギャンは、実に数多くの示唆に富んだ言葉を残している。
「見るために、私は目を閉じる」
「芸術は盗作であるか、革命であるかのいずれかである」
「恋する女であれ。そうすれば幸せになれる。神秘的な女であれ。そうすれば幸せになれる」
「愚かさとは何か、自分で実験してみないとわからない」
画家になる前は裕福な証券マンだったゴーギャンだが、35歳のときに画業に専念する。経済的には楽ではなかったものの、ゴッホら同時代の文化人らと交流し、南洋のタヒチなどを旅することで、独特な画風を確立していった。誰もがゴーギャンのような生き方をまねることはできないが、ゴーギャンの絵には豊かな色彩が溢れている。
周囲の声を気にすることなく、自分の想いに正直に生きる道を選んだ八虎の決断は、どんな結末を迎えるのだろうか。八虎たちの描く作品は、荒削りでまだ未熟だが、観る人の心に訴えかけるものがある。若き芸術家らの奮闘を、ぜひ見守ってあげてほしい。
『ブルーピリオド』 公開劇場
原作/山口つばさ 脚本/吉田玲子 監督/萩原健太郎 音楽/小島裕規“Yaffle”
絵画指導/海老澤功 美術アドバイザー/川田龍
出演/眞栄田郷敦、高橋文哉、板垣李光人、桜田ひより、中島セナ、秋谷郁甫、兵頭功光、三浦誠己、やす(ずん)、石田ひかり、江口のりこ、薬師丸ひろ子
配給/ワーナー・ブラザース映画
(c)山口つばさ/講談社 (c)2024映画「ブルーピリオド」製作委員会
https://wwws.warnerbros.co.jp/blueperiod-moviejp/
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