ライターのカツセマサヒコです。
ひとつ聞かせてください。
皆さんの人生で、初めて好意を抱いた異性の芸能人って、誰ですか?
僕は、
圧倒的に、
安達祐実でした。
まだ5歳にもなってないくらいだと思うんですけど、子役として大活躍していた安達祐実の雰囲気が、好きで好きでたまらなかったんです。だって、彼女のあの、目、鼻、口、耳、全体のアンニュイな雰囲気、もう、最高。最高以外、表せられないじゃないですか。
そんな安達祐実さんが、先日ネット上に、オフィシャルフォトギャラリーを公開したのですが......
これが
本当に
かわいすぎて
死んじゃう!!!!
なんで! どうしてこんなオフすぎる表情!
この! エリエールとか!
生活感が出まくってて!!
最高すぎるでしょ!!!!!!
なぜこんな素敵すぎる写真が撮れるのか、気になって調べてみたところ、このお写真、旦那さんでありカメラマンである桑島智輝さんが撮影したものでした。
なるほどね! 旦那さんだから! あんな! 素敵な! 笑顔と! エリエールを!!
同サイトはSNSによる口コミで大反響を呼び、一時はサーバーが落ちるほどアクセスが集中。
憧れの安達祐実さんのオフすぎる表情を引き出して、圧倒的な反響を生み出したカメラマン・桑島智輝さんって、どんな人なんだろう? 夫と妻でありながら、カメラマンと被写体の関係であることって、どんな気分なんだろう? 桑島さんに実際にお会いして、話を聞いてみることにしました。
桑島智輝(くわじまともき)さん。1978年岡山生まれ。武蔵野美術大学卒後、2年間のアシスタント経験を経て、2004年、フリーのカメラマンとして独立。2010年には法人化し、「株式会社 QWAGATA」の代表となる。現在、プロカメラマン歴12年目。
「こんなに見に来ると思わなくて......」サーバーダウンの裏話
ーーすでにネット上でも散々反響があったと思うのですが、改めて言わせてください。フォトギャラリーのお写真、ものっすごくよかったです。
ありがとうございます。
ーーどういった経緯で、オフィシャルギャラリーの撮影を担当することになったんですか?
無印良品に、写真が256枚入るアルバムが売っているんですけど、知ってます? それが、71冊。仕事を通して彼女を知ってから5年間、フィルムカメラで彼女をひたすら撮り続けていたんです。
ーー256枚入りが71冊ってことは、約1万8,000枚!?
自宅に溢れかえってます(笑)。
彼女はTwitterなどのSNSも運用しているから、情報発信の場は既にいろいろありました。でも、「せっかく撮りためた写真があるなら、どこかで見せたいね」と話をしていたんです。そして企画を詰めていくなかで、「ウェブ上でフォトギャラリーをやる」というアイデアが出て、事務所に話を通した、という流れでした。
ーーじゃあ、事務所主導ではなく、おふたりで始めたことだったんですね。
もちろん事務所の協力もありながらですが、このサイトについては、ふたりでやってることが多いです。サイトに載せている写真も、アルバムから直近1年間のやつをいくつかセレクトしてアップしているんですけど、自分でフィルム写真をスキャンしているんですよ。
ーー個人のホームページみたいじゃないですか!
本当にそうです。前は一カ月に一度、ドバっと更新していたんですけど、見てくれている方から「量は少なくてもいいから、もうちょっと更新頻度を挙げてほしい」と言われて、今、スケジュール調整に悪戦苦闘してます。
ーー日本を代表する女優なのに、手作り感がすごい。でも、そこがあのサイトの良さな気がします。
ありがとうございます。
――リリース後はSNS上で拡散されて、サーバーが落ちるほどの人気になりました。さすがに驚かれたんじゃないでしょうか?
そうですね。「こんなに見に来るの?」ってふたりで驚いていました。率直に、うれしかったです。
でも、そんなに大きなサーバーじゃなかったので、落ちてもおかしくはなかったんです。見られなくなった方々には申し訳なかったんですけど、補強するつもりもあまりなくって。派手に見せていこうとは思っていないし、これからも淡々と進めていこうと思っています。
ーーいろんなサイトがPV至上主義でいる中で、その欲のなさが、質のよいサイトを生んでいる気がしました。
桑島さんの写真への想い
ーーおふたりはお仕事で出会われたんですよね? きっかけは何だったのでしょうか?
知人のヘアメイクさんに紹介されて、祐実の写真集「私生活」のカメラマンに抜擢されたんです。
最初はスタジオで撮影していたんですけど、どうにもいい画が撮れなくて。そこで話し合った結果、ドキュメントタッチで撮ることになったんです。自宅やロケ先などに張り付いてシャッターを切るようになりました。
ーーそこで仲良くなっていったんですね。
いえ、僕、撮影中に被写体の方と会話をするのが好きじゃないので......。長い期間撮影をしていましたが、仕事仲間としての関係が続いていました。
――え、そうなんですか! カメラマンって被写体を笑わせなければいけないシーンもあるじゃないですか。どうされているんですか?
相手を絶対に笑わせなければいけないときは話もしますけど、でも、喋りながら撮るの、本当に苦手で。
「喋りながら撮る」って、一種の「作戦」じゃないですか。笑顔を作るために会話をしているだけなので、会話自体はおざなりになってる気がするんです。それって、相手に対する誠意がないことだと思っていて。喋っているときに撮ると、「撮っている」より「盗んでいる」感じがするんです。
ーーこだわりがあるんですね......。
被写体と、ちゃんと向き合いたいんです。じゃないとその人に対して失礼だなって思うし。あえて笑顔を「盗む」ときもありますけど、普段からそれを狙うことは、できるだけしないようにしています。
――オフィシャルギャラリーに載っている写真は、全てフィルムカメラで撮られているんですよね? そういったところも、何かこだわりがあるのでしょうか?
仕事ではデジタルが圧倒的に多いんですけど......。なんだろうな......人生でも大事なイベントや、思い出に残るような瞬間は、デジタルで撮ると白々しく思えるというか......。
デジタルは消せるし、すぐに見られる。モノとしては残りにくいですけど、昔の家族のアルバムみたいなものって、物質として刻まれている感覚があるんです。フィルムで現実に残していく感覚、修正できないリアリティーは、フィルムにしかないと思っています。
その潔さと、記録性の強さがフィルムの魅力だから、フィルムが存続する限りは、それで撮り続けたいって思っているんですよね。
――そもそも、写真に関する原体験みたいなものがあって、フィルムを選ばれているのでしょうか?
ああ、それもあるかもしれないです。僕、長男なんですよ。しかも初孫で。そのせいか、実家には写真がめちゃくちゃ残されていたんです。それを見返すと、親の温かさというか、親の愛すげーなあって、思い知らされるんですよね。その写真の風合いと色味が「昭和の思い出」って感じで。
あと、もう一つ。僕、写真については90年代の雑誌にすごく影響を受けているんです。僕が高校・大学生だった時期って、雑誌がすごく面白かった時代で、とくにカルチャー誌が最高でした。あの当時の写真の質感に憧れて、それを追体験してるような気持ちでフィルムカメラを触っている気がします。
夫として、カメラマンとして見る、安達祐実
――ここからはフォトギャラリーの写真を見ながら話を伺いたいと思います。撮影されていて、気に入っている写真はありますか?
ラーメン食べている写真、好きです。僕、桂花ラーメンが大好きなんです。「一回食った方がいい!」って力説して、ふたりで食べにいったときのやつですね、これ。
――本当にプライベートなんですね......。いい顔してます。
ね。いい顔してる。
――この写真も好きです。目力が、超いいですよね。
彼女は、眼が強いんですよね。引き込まれる感覚があります。
――この銭湯の写真も、まるで子どもみたいでかわいいんですけど、いつ撮ったんでしょうか?
これは「江戸東京たてもの園」に行ったときに撮ったやつですね。昔の建物を移築してるとこなんですけど、楽しかったですよ。
――かわいい。めちゃかわいい......。
ありがとうございます(笑)。
ーー他に気に入っている写真って、ありますか?
えーっと......。カマキリ持ってるやつ、好きですね。
――あ、これですか。
イイ顔してますよね。「あ、こいつ、カマキリ持った。これはー!」って夢中でシャッター切ったの、覚えています。
――親心みたいな気持ちなんでしょうか?
いや、報道......?
ーー報道!?
こういう、決定的な瞬間って、スクープを撮るような感覚があるんです。「あいつがカマキリ持ったぞー! スクープだー!」って(笑)。
そういう意味では、報道的な立場と、夫としての立場、両方からレンズを覗いている気がしますね。
桑島さんが考える、良き夫婦関係の秘訣
――「ご夫婦の距離感だから撮れたんだろうな」と思える写真もたくさんあったのですが、関係性は、写真にも影響すると思いますか?
もちろん関係するんですけど、ちょっと複雑だと思っています。僕の場合、「愛する人を毎日撮っている」って側面と同時に、「女優さんのプライベートな瞬間を撮っている」という気持ちも同居していて。
さっきのカマキリの話じゃないですけど、妻と一緒にご飯を食べている時間はプライベートなはずなのに、「あ、オムライス食べてる! 撮らなきゃ!」って思う瞬間は、芸能人のスクープにカメラを向けた気分なんです。
この二面性はフォトギャラリーでも出したいと思っていて、ナチュラルに撮影するものもあれば、作為的に変なポーズを取ってもらうこともあるし、きちんとスタジオで撮ったものもあります。
それらを意図的に全て掲載することで、本当も嘘も混ざった混沌とした感覚が表現できるんじゃないかと思って。
――どんなときでもシャッターを切るって、ちょっと緊張感がありますよね。
そうですね。夫として、カメラマンとして、っていう切り替えはもうあえてしていなくて、どちらの自分でも撮ろうと思っています。だから、相手が泣いていても、恐る恐るシャッターを切ることがあります。喧嘩してても、それは同様に。
――バランスが取れなくなることもあると思います。夫婦生活で何か気を付けてることはありますか?
自分に非があることなら、きちんと自分から謝る(笑)。
――大事なことだと思います(笑)。
僕にとって、写真を撮ることは生きることなので、被写体がいなくなったら死んでしまう。だからこそ関係を良好にするよう努めています。
彼女は妻であり、一番の被写体である。ひとりの人間として失いたくないし、最高の被写体としても、離したくない。
打算的に聞こえるかもしれませんが、僕はカメラマンとしての欲が深いので、最高の被写体である彼女を毎日撮り続けていられることに幸せを感じています。
この5年間ずっと撮ってきた写真は、自分のカメラマン人生のコアとなってる部分でもある、これがなくなったらどうなるんだろう? という気持ちにもなります。だから本当に、今後もこの関係を続けて、棺桶に入ったところまで撮ろうと思っています。もちろん、どっちが先に死ぬかはわからないですけど。
おわりに
インタビューして感じられたのは、桑島さんの祐実さんに対する愛の深さと、一カメラマンとして高みを目指す向上心でした。
ただ「かわいい!」「こんな安達祐実見たことない!」「エリエール身近でいい!!」と騒いでいた僕からは想像もできないほどの想いと手間が、あのギャラリーには込められていたようです。
夫婦でありながら、カメラマンと被写体の関係でもある。
そのバランスを保つのは簡単なことではないようですが、それを乗り越えたからこそ映し出される魅力的な写真の数々に、多くの人が心を打たれたのではないでしょうか。
このインタビューを終えてから、オフィシャルギャラリーに写真がアップされるたび、桑島さんの地道な努力を感じられるようになった僕ですが、そのうえで「やっぱり安達祐実かわいい!」と悶えることで、ふたりへの応援の気持ちに替えている今日この頃です。
それでは!
【書いた人】
カツセマサヒコ
下北沢の編集プロダクション「プレスラボ」のライター/編集者。趣味はTwitterとスマホの充電。
Twitter:@katsuse_m
■仲良し夫婦の記事
■大切な人を写真と動画に残そう!
■フォトウエディング、プランも充実!