
"雄大な自然×欧米スタイル"の最新ハワイウエディング
お付き合いをはじめてから、何度もハワイを訪れていたという北村さんご夫妻。結婚式をどこで挙げるかという話になったとき、すぐに頭に浮かんだのが思い出の地ハワイだったと言います。新婦の帆乃夏(ほのか)さんは、当初からゲストとゆっくり過ごせる“欧米スタイルのウエディング”のイメージが明確にあったとか。ハワイの中でも伝統と自然が色濃く残るパラダイス・コーブを選び、センスフルな挙式をかなえたその様子を詳しくお聞きしました。
ハワイ上級者だからこそ難航した式場選び

何度もハワイに来るにつれて、その雄大な景色や気候など自然そのものに魅力を感じるようになったという帆乃夏さんと新郎の和己(かずき)さん。
「ハワイにいるときは、目の前に広がる自然を眺めながらのんびり過ごすことが多いですね」という和己さんに、帆乃夏さんも「ハワイはあちこちに手付かずの自然が残っているのがとても好きで。もともと結婚式をするなら自由で開放的な欧米スタイルにしたいと思っていたので、ここならゲストとともにゆったりと落ち着いた気持ちで過ごせそうと、ハワイでの挙式を決めました」と話す。

そんな“ハワイ上級者”のふたりにとって、最重要事項は式場選び。ところが、探しはじめてすぐに問題にぶつかってしまった。
「有名ホテルというよりは、もっとローカルな、大自然に囲まれているような場所がよかったのですが、なかなか見つからなくて……」と帆乃夏さん。脳内にははっきりとしたイメージがあっただけに、「途中からは『ぜったい実現する!』と意地になって探していましたね」と笑う。
段々と焦りが募るころ、やっとインスタグラムで見つけたのが、ウエディングプランナー石田えりさん主宰の「GARBO WEDDINGS & DESIGN」だった。
「私は海外挙式を紹介したアカウントもよく見ていたのですが、石田さんが手掛けたウエディングの画像を見た時、同じセンスを感じて。『この方なら』とメッセージをお送りしました」と話す帆乃夏さん。石田さんは10年以上の期間、日本とハワイのウエディングプランナーとして経験を重ねたのち、現在はハワイと日本の両方で活躍中だ。
和己さんは、「最初の打ち合わせは日本で、対面で出来たので安心しました。妻は『こういう風にオリジナリティを出したい』というのがあったようで、石田さんに伝えたところ、『大丈夫、出来ますよ』と言っていただけてホッとしていましたね」と振り返る。式場の候補も帆乃夏さんが下見に行けることになり、それぞれの雰囲気を見てから決めることになった。
結婚式では楽しげに歩くふたりをドローンが撮影

実際に見てみた結果、決まったのはオアフ島の南西にあるパラダイス・コーブ。島の伝統文化を大切に守っているエリアで、豊かな緑を背に静かなビーチが広がる、まさにイメージ通りの場所だ。
「初めは近くにあるもう少し大きい式場も視野に入れていました。パラダイス・コーブは公式サイトを見ると素朴な感じだったので、『本当にここで出来るのかな?』とちょっとだけ思いました(笑)。それでも石田さんが『ぜひ』と勧めてくれたのと、下見に行ってみたら予想よりずっとステキなロケーションだったので、ここに決めました」と帆乃夏さん。

そしておふたりは挙式当日、その選択が間違っていなかったことを実感したそう。
「結婚式は午後から夕方にかけてだったのですが、この季節だけパラダイス・コーブの真正面の水平線に太陽が沈んでいくんです。僕たちは食事中だったのですが、コーディネーターの方が『いま一番いい景色なので撮りましょう!』と言ってくださって。僕たちはリラックスして楽しい気持ちのまま、ふたりで手をつないでビーチに歩いて行っただけなんですが、ドローンで空から撮っていただいた動画を、あとで観て驚きました」と和己さん。
画面いっぱいに広がる大きな夕陽ときらめく海に向かって、芝生の上を楽しげに歩いていくドレスとタキシード姿のおふたり。それを空から追っていく映像は、まるで映画のワンシーンのような美しさだ。

「打ち合わせでは、ドローン映像はどんな風になるかわからないということだったんです。それはそうですよね、結婚式は当日の一回きりですし、天候にも左右されるので。でもせっかくハワイで式を挙げるのだからと撮影関係は一番よいプランでお願いしていました。その分、他を節約したのですが、こんなにステキな映像が残せたので本当によかった!」と嬉しそうな帆乃夏さんだ。
ドレスコードから引出物までこだわりを詰め込んで

「ヘアメイクさんやフローリストさんなども、石田さんがこちらの『こういう風にしたい』という希望をすぐに理解してくださって、何人かご提案いただきました。他の担当者も理想通りの方をご紹介いただけたので、とても安心でしたね」という帆乃夏さん。たしかにセンスはコアな部分で噛み合わなければ、いくら話し合いを重ねてもすり合わせは難しいもの。その点でも、海外挙式では特に分かり合えるプランナーが成功のカギと言えそうだ。

ちなみに「腰の後ろのお花のようなフリルが気に入って」という帆乃夏さんのドレスは、日本で購入してハワイに持ってきたもの。
「ドレスだけは着てみないとわからないので、セミオーダーでも自分に合ったサイズに調整してもらえるものにしました。最後のお直しは出発1週間前だったのですが、身幅を詰めるのだったらあと3キロ痩せなきゃいけないと言われて、気合いでクリア(笑)」と帆乃夏さん。そのこだわりは、ガーデンパーティの世界観にも。

「ゲストは家族と友人で20人ぐらい。日本の結婚式よりはカジュアルに、でもやっぱり欧米スタイルにしたいので、女性のドレスコードはピンクにしました。ガーデンパーティは白とピンクとグリーン(植物)の3色でまとめていたので、ドレスコードも揃えたことで海外のブライズメイドみたいな雰囲気が出せたのではと思います」。
大変だったのは薔薇のアーチだ。パラダイス・コーブは風が強いので、重量やバランスなどをフローリストに何度も相談して敢行した。

食事はワイキキにあるイタリアンの名店「タオルミーナ シチリアン キュイジーヌ」のシェフに依頼することに。ガーデンパーティー会場での食事提供ということで、事前にシェフが下見を実施。当日は調理設備を用意し、その場で調理した食事をゲストに提供できた。座席表は革製のネームタグにしてお土産に。引出物のギフトはフラガールが描かれた「フェイラー」のマナマナシリーズや、「ホテルライクインテリア」のトラベルセットにゲストの名前を刺繍したもの。センスある“使える”ギフトはゲストからも好評だったとか。
“結婚式”への考え方が、その前後で変わった

ゲストにとっても忘れられない思い出となった結婚式。
「皆はずっと動画を撮ってくれていて、『こんな特別な場所には二度と来られないだろうから、式に呼んでくれてありがとう』と。今でも『映画の中にいるみたいだった』と言ってもらえるので、ハワイにしてよかったと思います」と帆乃夏さんは話す。
隣の和己さんからは、「実を言うと最初は彼女がアクセルをずっと踏んでいる状態で、僕は『そこまでしなくてもいいんじゃない』と言っていたんですよ」との言葉が。「あれもこれもとなると予算が膨らんでしまうし、僕は男兄弟で、女性のこだわりもよく分かっていなかったので(笑)」と和己さん。
「でも石田さんが妻の想いを噛み砕いて共有してくださったおかげで、少しずつ“結婚式”に対して前向きになれました。当日は現地のコーディネーターが心に寄り添ってくれるような対応をしてくださり、家族に『いい結婚式だったね』と言ってもらえたのが嬉しかったですね。それでふと、父は単身赴任が長くて家族旅行の記憶があまり無かったことを思い出したら、『いま家族で旅行に来ているんだな』という気持ちが急に込み上げてきて……」と心の変化を教えてくれた和己さん。帆乃夏さんも「式が終わってバスに乗り込んだとき、彼が目を腫らしながら『やってよかった』と言ってくれて。私も彼とこういう日を迎えられて本当に幸せだなって思ったんです」と、和己さんと顔を見合わせて笑顔になった。
結婚式を考えているカップルには、「家族や友人に改めて感謝の気持ちを伝えることって、なかなか無いですよね。結婚式は自分たちのためではあるのですが、その場を借りて想いを伝えられるというのがいいところだなと思います」と背中を押す帆乃夏さん。「そのときは、写真や動画撮影は絶対いいプランがいいね」と和己さんが付け加えると、笑い合うおふたり。“結婚式”を通じて互いをもっと知るようになった、そんな和やかな空気がこちらにも伝わってきた。
プランナー/GARBO WEDDINGS & DESIGN
撮影/Jason deng(V I S I O N A R I)
取材・文/藤野さくら(書斎ジュディス)