はじめまして、ライターでカメラマンの波多野友子です。
いきなりみなさんを置き去りにするようで恐縮ですが、好みのタイプはサッカー選手の"うっちー"こと内田篤人選手です!
内田選手といえば、去年しちゃいましたね「幼なじみ婚」。結婚報道が飛び出した直後は「お相手はモデルか? 女子アナか?」などと憶測が飛び交い、私もショックのあまり、なかば白目で事の成り行きを見守りました。
ですが、お相手が小学校からの同級生だと判明した途端......
「幼なじみなら仕方ないわ~!」
とホッと胸をなでおろす自分が。
私から愛しのうっちーを奪い去ったお相手なんて、本当なら藁人形に五寸釘レベルで憎むべき存在。しかし、その相手が幼なじみだったというだけで、なぜか気持ちがほっこりして許せてしまった自分がいたのです。不思議?。
湧き上がる嫉妬心すらも、許しに変えてしまう幼なじみの存在ってなんなんでしょうか。
そこで今回は、実際に幼なじみ同士で結婚したカップルを直撃。幼なじみ同士の結婚とはどういうものなのか、ちょっぴり野次馬気分でお話を聞かせてもらいました。
【取材した人】
我妻香奈さん(30)/我妻純平さん(30)。宮城県塩竈(しおがま)市出身、東京都在住。夫の純平さんは道路や橋の修繕事業を行う会社に勤務。結婚3年目の新婚カップル。
4歳で出会って、中学校までずっと一緒
「今日は幼なじみ婚のカップルと伺って、胸を高鳴らせて来ました。色々お話聞かせてください! さっそくですが、2人の初めての出会いはいつ頃?」
「4歳の頃ですね」
「4歳!? 思っていたよりもヘビー級の幼なじみ......! その頃の記憶ってあるんですか?」
「はい。幼稚園の年小の頃、バスの停留所で出会ったんです。彼は年中から同じ幼稚園に通い始めたんですが、それまでずっと2歳年上のお姉ちゃんを毎日お母さんと一緒に見送りにきていて」
「僕は憶えていないんだけど、よく覚えてるよね(笑)」
「お母さんに抱っこされて、細っこくて。いつも白いハイソックス履いてたよね。おさるのジョージみたいでさ。かわいいなぁ、と思っていました」
「おい、恥ずかしいよ~」
「のっけからキュンキュンさせてくるなー(笑)。じゃあ、幼稚園はほとんど一緒だったわけですね。その後もずっと同じ学校?」
「小学校、中学校まではずっと同じでしたね」
「わー思春期の多感な時期を一緒に過ごしてたとか想像しただけでもドキドキ?! 当時の写真ってあるんですか?」
「ありますよ~。ちょっと待っててくださいね、たしか卒アルがどこかに......」
「卒アル~!」
「あ、あった。これが中学時代の私です」
「か、かわいいー!!!!!!! じゃあ、純平さんは???」
「僕のも見ちゃいます? これですね」
「今と変わらなさが衝撃(笑)」
「よく言われます、アップデートしないヤツだなって」
「小学校時代から一緒に写ってる写真がたくさんあるんですよ。なぜかお互いが微妙な距離感で立っている写真が多いんですけど(笑)」
「へえー。思い出が同じアルバムや写真に残っているってすてきですね。あどけない顔をしてた同級生同士が今こうして結婚してるとか、ほんと胸熱。いいなー」
「無関心」からの奇跡の出会い
「これは私の勝手な妄想なんですけど、その後の展開はこういうことでよろしいでしょうか? まるで兄妹のように仲良しだった純平と香奈。でも小学校に入学すると、近すぎるその距離感が次第にうっとうしく感じられるように。周囲のからかいの声も照れくさく、少しずつ疎遠になっていく2人。しかし中学生のある日、香奈が同じクラスの男子Aと下校する様子を目撃してしまった純平の心に、それまでにはなかった複雑な感情が芽生えて......」
「いやいやいや(笑)」
「ずっと近くにいすぎて気づかなかったけど、オレ、もしかして香奈のこと......初めて香奈を異性として意識した純平は、幼い頃よく一緒に遊んだ神社の境内に香奈を呼び出し......」
「全然憶えてないんですよ」
「今いいところなので、ちょっと邪魔しないでもらえますか?」
「だから...幼稚園以降のお互いの印象が全然ないんですよ」
「へ? そんなことってあるの......?」
「異性として意識したことが、まったくなかったんです。小3、小4、中2で同じクラスだったのに、ほとんどしゃべった記憶がなくて」
「そうなんです。僕はどちらかというと、女子が苦手なくらいで......」
「今、私のなかの夢が完全に壊れました......! じゃあ2人の人生は、どこで重なり合うことになるんですか?」
「んー25歳くらいのときだっけ?」
「うん、そうだね」
「同窓会で再会したんです。とは言っても、私は純平の親友と話をしていて、隣に純平がいたみたいな。そのときもひとことふたこと言葉を交わした程度だったよね」
「うん、女子は苦手で......」
「シャイ過ぎる25歳! じゃあそこからどうやって進展したんですか?」
「その翌年に純平から一斉送信でメールが来たんです。『こっちに帰ってきてるから、来れるヤツは集まろうぜ』って」
「僕は仕事で道路や橋の修繕事業に携わっているんですが、1年ごとに赴任先が変わるんです。たまたまその頃、東日本大震災の復興のために宮城に戻ってきていたので、昔の友達に会いたいなと思って。震災の翌年なので、2012年ですね」
「でも、なぜかその集まりに行ってみたら......純平と私だけだったんです」
「そう。5人くらい集まるはずだったのに、香奈以外全員ドタキャンで」
「面白くなってきた~っ! 香奈さんはどんな気持ちだったんですか?」
「うわぁ......って思いましたね(笑)。でも仕方ないから、とりあえず居酒屋でも行こうかって。2人きりで話すなんてほとんど初めてだったんですけど......」
「結局すっごく楽しかったんです」
「甘酸っぱくて最高~!」
「そのときはフェルメールの話がきっかけで盛り上がったんだよね」
「え、フェルメール? 画家の?」
「はい。たまたま私も純平もフェルメールが大好きだったんです。それが判明して、そこからは一気に距離が縮まりました。話をしているうちに、幼なじみなのに全然知らない一面が出てくるからすごく新鮮で」
「あ、だから部屋にフェルメールのポスターを飾ってたんですね! それにしても、フェルメールで意気投合とかかなりレアパターンのような」
「そうですよね。私もびっくりでした」
「そこから一気に付き合うモードに?」
「いや、すぐにというわけでもないですね。その後僕は都内に転勤になったんですけど、たまたま東京都美術館でフェルメールの『真珠の耳飾りの少女』の原画の展示があったんです。香奈がフェルメール好きだったなと思って、見においでよと連絡しました」
「私は躊躇したんですけど、『この機会を逃すなんてありえないよ!』って。それで、内心ビクビクしながら上京したんですけど、会ってみたら純平がまるでガイドさんみたいに東京案内してくれて......。その行動力にグッときちゃったんですよね」
「香奈さん、わかりやすくギャップにやられがちですよね(笑)。でもわかる気がする。それで付き合うことに?」
「いえ、まだ......」
「この2人、ひっぱる~!」
小さなコミュニティのなかで付き合い、そして結婚する
「付き合い始めたのは、フェルメールを見た翌月ですね」
「純平がなんか突然うちにクルマでやってきたんですよ。当時、純平と仲良くしていることは親に話してはいたけど、親も当然純平は知っているし、『えー!あの我妻さんとこの純平!?」みたいなリアクションだったから、家に上げるのは気まずくて、そのままクルマで出掛けたんです。そしたら道中でいきなり純平が、笑顔で『付き合ってください』って」
「香奈とはやっぱり趣味も合うし、お父さんもお母さんも幼稚園の頃から知っているから、それは僕にとって大きかったんです。不安がられず受け入れてもらえるかなって。だからいきなり家に行ってしまった」
「ということは、告白した時点で結婚も視野に入れていたんですか?」
「はい。年齢的にも、付き合うからにはこの人と結婚かな、と」
「男らしくて格好いい! 最近の結婚を先のばしにしがちな男子に見習って欲しい......! それで、香奈さんの答えは?」
「最初は『やめたほうがいいよ』って言いました。共通の知り合いが多すぎて、もしダメになってしまった時につらいかな、と思ったので」
「たしかに。それは幼なじみ婚のひとつのデメリットかもしれませんね」
「でも、結局押しの強さに根負けして、付き合うことにしたんですけどね(笑)。結婚の話も周りには秘密に進めていたんですけど、すぐにばれちゃって......」
「うちの親は僕が報告する前に、スーパーでたまたま会った近所のおばちゃんから僕たちが結婚する話を聞いたみたいです(笑)」
「友達がそれぞれのフェイスブックの投稿から推測していたらしいんですよ。『香奈と純平、同じ場所ばっかり行ってない?』って。そこから親につながって、それがめぐりめぐって近所のおばちゃんにまでっていう」
「コミュニティが小さいと、噂が広まるスピードも早いのかもしれないですねー。親御さんも含め、みなさん祝福ムードだったんですか?」
「最初はみんな、すごくびっくりしていました。幼なじみとはいえ、大人になるまでそこまで親しかったわけじゃなかったから。でも覚悟を決めたことをわかってもらえたら、みんなちゃんと祝福してくれましたね」
「知らなかった」からこそ「深くなれた」
「結婚式はしたんですか?」
「はい、しました。付き合って一年で塩竈神社で結納をして、翌年に仙台で盛大な式と披露宴を。友達も親戚も、新郎側・新婦側とか隔てなく、ひとつの大きなテーブルにギュッと。なにせみんな知り合いなので(笑)」
「いいですね。幼なじみ婚ならでは!」
「親族同士も仲がいいんですよ。嫁姑問題も今のところないですし、それぞれの親が、私達を分け隔てなく実の娘・息子みたいに可愛がってくれるのもありがたいです。私達がいないときは、両家の親同士でお茶を飲みに行ったり、野菜のおすそ分けをし合ったりもしているみたいです」
「おお。それはまた理想的な......」
「将来子どもができたとしても、里帰りは楽だろうなって。子どもを連れて旦那さんの実家に帰るのは結構ストレスだと聞くけど、うちの場合はそれがないので」
「そうだね。今日はうちの実家、明日は香奈の実家、明後日はそれぞれの家で、とか自由に動けるもんね」
「いいなー幼なじみ婚。私の妄想とはちがう、現実的な良さを感じてきました! むしろ、マンガみたいな幼なじみ恋愛って、現実にはなかなか難しいのかもしれないですね」
「私たちは幼なじみだけど、お互いのことを知らなかったのがよかったんだと思います。知らなかったからこそ、相手の新しい一面が見えてきて、どんどん惹かれていった。逆に小さい頃から相手のことを知りすぎていたら、きっと恋愛対象にはならなかったのかなと」
「うん。大人になって深く知れた。それが良かったよね」
「考え方や気持ちが通じ合っていて、すてきな関係ですね。最後に、お互いの好きなところを聞いてもいいですか?」
「料理が上手なところ! 直して欲しいのは......今のところないです!」
「え~言いにくくなっちゃった(笑)。純平の好きなところは、くよくよしないところかな。私が悩みやすいタイプなので、サラッと流してくれるところが好きですね。いつまでも、ずっと一緒にいられたらいいな」
「最後までラブラブすぎる......! 今日はありがとうございました」
取材を終えて
この日の取材は、2人の住むマンションで行われました。玄関から奥のリビングに通してもらうと、窓の外には隅田川とスカイツリー。部屋には2人の思い出の「真珠の耳飾りの少女」のポスターや、結婚式の写真が丁寧に飾られ、温かな雰囲気が心地よいすてきなお住まいでした。
実は私は小中高一貫の女子校育ちなので、幼なじみの男の子との恋愛がまったく想像できませんでした。だから、初めに「幼なじみ婚」と聞いたとき、出会いから付き合うまでに紆余曲折あって、くっついたり離れたりしながら、最終的には運命に導かれるように結婚するんじゃないかって、マンガみたいな妄想を勝手に抱いていたのです。
私は今回2人の話を聞いて、「あらためて出会い直す」という恋愛のカタチを知りました。正直最初は「思ってたのと違う~!」と歯がゆく感じたのも事実。でも、そっと蒔かれた小さな種を、ゆっくりゆっくりはぐくんできた2人の道のりを思うと、なんだかジン......と心が温かくなって、もしかしたら、マンガみたいな幼なじみの結婚も現実にあるのかもしれないけれど、これはこれですごくいいなーって思えたんです。
純朴な2人の小さな愛のエピソード。このホッコリとした雰囲気を、少しでもお届けできたなら幸いです。
香奈さん、純平さん、末長くお幸せに!
【書いた人】
波多野友子
カメラマン/ライター/編集者見習い。サッカーメディア、ファッション誌、女性ライフスタイル系webマガジンなどで活動中。尊敬する人物はPerfumeのあ~ちゃんです。
Twitter ID:@ogwtmk3
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