その時代の文化や芸術、技術を今に伝える貴重な建物
それぞれの時代によって育まれた文化や芸術、技術を後世に残すものとして、当時の人々が威信をかけて作り上げた建造物。今日に至るまでに戦争や震災など数多くの困難によって、多くの建物が姿を消したが、現存するいくつかの建造物は文化財などに認定され大切に守られている。今回は、長きに渡る時間を経た今も美しい姿を保ち、人々が集う結婚式の場に利用されている貴重で魅力的な会場をご紹介。
それぞれの時代によって育まれた文化や芸術、技術を後世に残すものとして、当時の人々が威信をかけて作り上げた建造物。今日に至るまでに戦争や震災など数多くの困難によって、多くの建物が姿を消したが、現存するいくつかの建造物は文化財などに認定され大切に守られている。今回は、長きに渡る時間を経た今も美しい姿を保ち、人々が集う結婚式の場に利用されている貴重で魅力的な会場をご紹介。
東京駅が開業したのは1914年(大正3年)のこと。日本近代建築の父と呼ばれる辰野金吾が設計した東京駅丸ノ内本屋は、明治の市区改正計画に基づき建設された首都東京を象徴する貴重な建築物として、国の重要文化財にも指定されている。東京駅開業の翌年に、国内外の賓客をお迎えする宿泊施設として駅舎内に誕生したのが東京ステーションホテル。ウエディングでは、赤レンガ造りの壮麗な駅舎を舞台にしたロケーションフォトや100年の歴史を誇るクラシックホテルならではの雰囲気とサービスを堪能することができる。
ゲストを迎えるロビーの床には、「旅人の喜び」という花言葉を持つ、クレマチスをデザインした真鍮のレリーフが。「旅の素敵なひとときを体験してもらいたい」という願いが込めらているそう。
東京ステーションホテルでのウエディングの魅力は、なんといっても東京駅丸の内駅舎ドームや駅前広場など、特別に撮影が許可されていること。重要文化財を舞台にした撮影そのものが貴重な体験になるはず。
江戸時代には紀州徳川家の大名屋敷があった千代田区紀尾井町。由緒ある土地柄を示すシンボル的な存在が、「赤坂プリンス クラシックハウス」。1930年(昭和5年)に、旧李王家東京邸として旧宮内省内匠寮の技師たちによって建設され、その後、「グランドプリンスホテル赤坂 旧館」として親しまれたチューダー様式の美しい洋館。2011年には東京都指定有形文化財に指定され、建設当時の資料を基に照明器具や外壁などの主要部分が復元された。建設から90年以上経った今も、優美な姿を見せる洋館でのウエディングは貴重な経験になるはず。
90年以上前に建てられた当時のままに受け継がれる貴重な調度品。その代表的なものが、大階段を彩る日本純正の色ガラスを使用したステンドグラス。歴史的価値のある空間はフォトスポットとしても大人気。
東京都指定有形文化財に指定されている空間で少人数ウエディングを行える会場が「鏡の間」。1930年に建築された当時の趣を残す意匠や時計などの調度品に囲まれながら優雅なひとときがかなう。
1920年(大正9年)、日本の工業の発展を目的として当時の有力実業家によって設立され、1999年に登録有形文化財に指定された「日本工業倶楽部」。東京駅の目の前に聳える重厚な外観は、当時流行した西欧のセセッション様式を取り入れたシンプルな幾何学的構成になっている。内観はイオニア式の柱やステンドグラスの窓が並ぶ大階段など、華やかな意匠が見どころ。建設から100年以上にわたり、日本経済の象徴として歴史的な価値をとどめてきた会館を舞台にしたウエディングは、ノーブルかつ華やかなひとときがかなうと評判。
大正9年に建設された当時のまま保存され、今も大切に使用されているメインホール。7.4mの天井まで続く漆喰の壁やアイオニック円柱、石膏彫刻などのディテールに包まれる空間は、佇むだけで優雅な気分に。
館内を彩る調度品は、100年以上もの間、さまざまな社交の場を見守ってきた貴重なものばかり。重厚な空間を華やかに彩るシャンデリアやステンドグラス、家具、そして数々の絵画を眺めるのも楽しい時間になる。
1927年(昭和2年)、京都市役所の北隣に誕生した島津製作所旧本社ビル。設計を担当したのは、関西建築界の父と言われる武田五一。アールヌーボーやセセッション様式の影響を受けた建物は今なお、風格ある佇まいを見せている。京都の発展を見守り続けてきた建物は、2012年にリノベーションされ、フォーチュンガーデン京都へ名称を一新。アーチ型の正面玄関や蛇腹式のエレベーター、丸い窓ガラスなどを建築当時のまま残し、外観や内装も昭和初期のノスタルジアを再現。レストランやウエディングの舞台として活用されている。
細かなアイアンの細工が入った扉や蛇腹式のエレベーターなど、1927年に旧島津製作所本社ビルとして建てられた当時のものを大切に受け継いでいる「フォーチュンガーデン京都」。モダンレトロな雰囲気が魅力。
屋上には展望台として使われていたと思われる塔屋があるなど、設計・監修を手掛けた武田五一のこだわりを感じる空間が広がる。今も残るその屋上では、オリジナリティあふれる人前式での挙式を行うこともできる。
大阪駅から5分の都心にあって、約4000坪の広大な敷地を持つ「ザ・ガーデンオリエンタル・大阪」。かつて「大阪市公館」として親しまれたその建物は、1959年(昭和34年)に大阪市の迎賓館として設立された由緒ある建築物。モダニズムの造形美を基調とした格式高い建築は、大阪株式取引所や大阪能楽会館などの設計に携わり関西建築界に名声を博した竹腰健造の代表作。近代建築の洋館と、四季折々に表情を変える庭園。外壁の「レリーフテラコッタ」や屋内照明に施されたアール・デコの装飾など、随所に歴史的な品格が漂う。
外壁の「レリーフテラコッタ」や屋内照明にさりげなく施されたアール・デコの装飾は華美すぎず上品な意匠が特徴。モダニズムの造形美を基調とした格式高い建築は上質感を求める大人のウエディングにぴったり。
広大な庭園の中には、水都大阪の中之島に見立てて建てられた茶室「二水亭」が。池から流れる二本の水流に挟まれた茶室は和装でのロケーションフォトやゲストへのおもてなしの舞台として使用することも可能。
大阪・桜の名所「桜の通り抜け」で親しまれる造幣局の向かい側に佇む「旧桜宮公会堂」。旧桜宮公会堂は、今から150年以上前の1871年(明治4年)に、造幣寮として竣工。造幣寮は国内最初期の本格的な西洋式の大工場群であり、その象徴的存在が、美しい柱列をもった石造りの玄関。鋳造場のファサードとして造られた正面玄関は、1935年(昭和10年)に完成した明治天皇記念館の正面玄関として移築され、戦後は桜宮公会堂となり、1956年(昭和31年)に重要文化財に指定。現在は「旧桜宮公会堂」として大切に守られている。
国指定の重要文化財である正面玄関は、明治時代の初期に建てられた貴重な建築。青の竜山石を使った6本のトスカーナ式列柱や妻造りの屋根などの特徴を持つ外観を背景にした結婚式を行うこともできる。
メインダイニングは、過去の改修工事によって覆い隠されていたステージを蘇らせて、1935年の明治天皇記念館竣工当時のままの姿として復活。そのステージを披露宴では生演奏などの舞台として使うことも可能。
Photo: https://produce.novarese.jp/kyusakuranomiya-kokaido/
源氏物語の時代から、景勝の地として知られる須磨。約1万㎡の広大な敷地の中に佇む神戸迎賓館は、1919年(大正8年)に貿易商として成功を収めた西尾類蔵氏の自邸として建てられたもの。主屋である洋館を手掛けたのは、初代通天閣をはじめ、近代の関西で活躍した建築家の設楽貞雄。セセッション様式の洋館は重厚な造りで圧倒的な存在感を放ち、その価値が認められ兵庫県指定重要有形文化財に指定。かつて、西尾邸への招待は「ステイタスの証」と言われた大正ロマンが薫る社交の場は、現在、ウエディングの舞台として利用されている。
本館にあるメインバンケット「鳳凰の間」は、建設当時から「大広間」として設けられた迎賓のための場。城郭を思わせる格天井や鳳凰を透かし彫りにした欄間など、大正時代の贅と粋をふんだんに取り入れた意匠は見事。
100年後に最も美しく見えるようにと計算されて造形され、名勝に指定されている日本庭園。庭園内には大正期の財界人をもてなした茶室も現存し、それぞれ兵庫県指定重要有形文化財に指定されている。
1934年(昭和9年)、イギリス人貿易商のアーネスト・W・ジェームスが、神戸・垂水の塩屋に外国人居留地を開拓した際に自宅として建てた「ジェームス邸」。地下1階、地上2階建ての主屋はオレンジ色の丸瓦とクリーム色の土壁をベースに、アーチ状の玄関ポーチや円筒状の塔などのアクセントが彩るスパニッシュスタイル。竜山石の石積や陶製の「泰山タイル」など日本的なエッセンスが散りばめられているのも特徴。庭の緑と瀬戸内海の海に瀟洒な洋館が映える、異国情緒あふれる邸宅は、2012年に神戸市指定有形文化財の指定を受けている。
外観を特徴づけているのはクリーム色の外壁と橙色で円すい形のスペイン瓦葺、そして展望室となっている望楼。望楼の窓からは、東には須磨の海岸、西には淡路島東岸と、360度見渡せる、見事な眺望が広がる。
屋内はイギリス伝統のジャコビアン様式を踏襲。琥珀色のガラスからは温かみのある光が差し込み、ステンドグラスなどの装飾も必見。社交の場でもあった地下のレンガ積みのバーラウンジは現在も活用されている。
Photo: https://produce.novarese.jp/james-tei/
京都・鴨川のほとりでひと際目を引く、五層楼閣の純和風建築。「FUNATSURU KYOTO KAMOGAWA RESORT(鮒鶴京都鴨川リゾート)」は、明治初期1870年(明治3年)に老舗料亭旅館の「鮒鶴」としてその歴史を刻みはじめ、今も多くの人々が集う場として愛されている。建物は、1925年(大正14年)に竣工した旧館と、1943年(昭和9年)に増築された新館による南北に連なる五層楼閣建築で、2012年に国の登録有形文化財に登録。2024年3月には全館リニューアルされ、さらなる注目を集めている。
昭和初期に増築された新館4階にある挙式スペース。新郎新婦の船出を祝う意味を込め、天井は船底天井、左右の窓枠はオールをモチーフにした内装は昭和初期のまま。椅子に座ったまま、東山の山並みを一望できる。
書院造りの折上格天井や東山の景色が施された一枚板の欄間など、伝統建築様式が随処に見られる「Grand Ball Room」。歴史的価値あるものに彩られた空間でウエディングを行なうことができる。
1918年(大正7年)に完成して以来、100年以上にわたって中之島の景観にかかせない建築物として親しまれている「大阪市中央公会堂(中之島公会堂)」。地上3階・地下1階建ての鉄骨煉瓦造の建物は、ネオ・ルネッサンスを基調にバロック的な躍動感を加味した意匠が特徴。細部にはセセッション様式を取り入れており、アーチ状の屋根と、松岡壽によって「天地開闢」が描かれた特別室の天井画・壁画なども見どころ。日本の近代建築史上重要な煉瓦を主体とした公会堂建築として2002年(平成14年)12月26日、国の重要文化財に指定。
創建当時、貴賓室として使用されていた「特別室」。松岡壽による天井画と壁画「天地開闢」や大阪市章である澪標(みおつくし)と鳳凰がモチーフのステンドグラスが彩る空間は壮大。この壮麗な空間が挙式会場に。
天井高9mのヨーロピアンスタイルの優美な趣きの「中集会室」。桧材を使用した壮大なアーチや優雅な回廊、建設時から100年の歴史を刻むシャンデリアが彩る空間美は圧巻。着席で160名までの披露宴がかなう。