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「"理解を広げるチャンス"でもある」LGBTQ+カップルが結婚式を挙げる意義とは

2025年1月、パートナーの杉山さんとともに結婚式を挙げられた溝邊大樹さん(写真右)。溝邊さんは生成AIの活用を普及する仕事を通して、「日本をより良くしたい」と多くの人々の幸せを願い奔走する一方で、「自分自身の幸せは、どんな形にすればいいのだろう?」と立ち止まる瞬間があったそう。そんな時にたどり着いた答えが「パートナーの杉山さんと共に人生を歩むことを“正式”に誓う」という選択だったといいます。この記事では、溝邊さんと杉山さんの結婚式を挙げるまでの道のりとかける想いについてご紹介します。

OVER THE RAINBOW WEDDING

「“私たち自身の幸せ”をしっかり認めて、祝福したい」溝邊さんが結婚式を挙げようと思ったきっかけとは


―まず、結婚式を挙げようと思ったきっかけを教えてください。

溝邊さん「普段は一般社団法人 生成AI活用普及協会で、日本を良くするためにどうするべきかと人々の幸せについてよく考える仕事をしているのですが、仕事が落ち着いた時にふと『自分の幸せってなんなんだろう』と思ったことがあったんです。その時に今一緒に仕事をしていて、かつ事業が大変な時期に支えてもらったパートナーとちゃんと形としてパートナーシップを結べたらいいなと思って、プロポーズに踏み切りました。“プロポーズをしたら結婚式”のようなイコールの考えがあったので、結婚式を挙げることにしました」


―元々、結婚式を挙げたいという気持ちはあったのでしょうか?

溝邊さん「付き合った当初から『結婚式を挙げられたらいいね』という会話はよくしていました。それを記憶していたというのもあります」


―結婚式への想いは溝邊さんとパートナーの杉山さん、どちらが強かったのでしょうか?

杉山さん「そっち(溝邊さん)じゃない?」

溝邊さん「どちらかというと、僕ですかね。思い立ったらすぐ行動するタイプというのもあって、プロポーズしてから2~3週間後には結婚式場探しを始めていました」


3つのテーマを掲げて実現した、“ありのままのふたり”を祝う結婚式


―溝邊さんの方が結婚式への想いが強かったとのことですが、どんな想いで結婚式を挙げられたのでしょうか?

溝邊さん「僕たちの結婚式は、“ありのままを祝う場”、“新しい家族の提示”、“社会へのメッセージ”という3つのテーマを核にしました」

▼溝邊さんが結婚式に掲げた3つのテーマ

1. ありのままを祝う場
カミングアウトまでの葛藤を超えて、「真実の愛を堂々と祝う姿が、次の誰かの勇気になるように」という願い

2. 新しい家族像の提示
3匹のポメラニアンと暮らす日常を結婚式にそのまま取り入れ、“夫・夫・犬たち”という多様な家族の形を可視化

3. 社会へのメッセージ
同性婚が法制化されていない日本で、“結婚式を挙げる”こと自体をポジティブな社会発信とする

―ここまで社会的なメッセージを持って、結婚式を挙げるというケースは珍しいですよね。

溝邊さん「実はこれには背景があって。10年前くらいにゲイのモデル活動をしている時期があったんです。今でいうとトップインフルエンサーのような感じですかね。当時は男性と付き合っていることもSNSでオープンにしていました。そうしたら、『男性と付き合ってもいいんだ!』というコメントをもらったり、僕の投稿を見て新宿2丁目に興味を持ってくれる人が現れたりだとか、僕の発信経由でコミュニティが盛り上がったことがあったんです。この体験をきっかけに、僕が発信することで一歩踏み出す人がいるんだなと。それで、今の僕に何ができるかと考えた時に、僕が結婚式を挙げて発信をすることによって誰かに勇気を与えたり、社会が前進したりすればなと思って結婚式は大々的にやろうと決めました。これは僕にしかできない“使命”だなって」


―それは結婚式を挙げようと思った時から考えていたことなのでしょうか?

溝邊さん「うーん、最初からそう思っていたわけではないですね。結婚式を挙げるとなった時に親しい人たちを招待したいなと思って。でも、僕は周りにはカミングアウトをしていなかったので、そこから一人ひとりにカミングアウトをしていったんです。そこで体感したのが“カミングアウトしたとしても僕自身のことを受け入れてくれて、何も変わらない”ということ。それまでは信頼している人であってもゲイであることを隠していたので、嘘をついているような気持ちで葛藤があったんです。でも、カミングアウトしたことでその気持ちが晴れて、自由になって生きやすくなったなと。そういう経緯もあって、社会に対して問いかけたいなという想いが出てきたという感じです」


結婚式を振り返り、「してよかった」と思える理由


―そんな強い想いで臨んだ結婚式、実際に挙げてみていかがでしたか?

溝邊さん「まずは『してよかった』という気持ちです。結婚式をしたことでパートナーとの絆が深まりましたし、招待したゲストに対しても同じように感じています」


―杉山さんはいかがですか?

「僕としては“純粋に祝ってもらいたい”という気持ちだけだったのですが、感想を母親に聞いたところ、『婚姻届けがなくパートナーシップだけの状況でも、形として結婚式をしたことでけじめになった』と。最初は『そんなに大勢(160名)呼んで、大変なことしなくてもいい』と言っていた母親も、最終的には一番感動してくれていてすごく嬉しかったですね。“息子がゲイである”というしがらみが解け、誰に言っても恥ずかしくないようになったとも言っていました。そういう話を聞くと『やった意味があった』と思えますね」


「結婚式のハードルは高い」LGBTQ+カップルが抱える悩みとは


―おふたりの結婚式にはLGBTQ+の方も招待されたとのことですが、おふたりの周りで結婚式を検討しているカップルはいらっしゃいますか?

溝邊さん「LGBTQ+のカップルってことですよね? それはあんまりいないんじゃないかなと思います。ただ、僕らの結婚式に参列して『いつか僕らもこんな風に式を挙げたいと思った』や『考える機会になった』という声はありました。また、結婚式の様子はSNSでも発信したので、フォロワーからも同じようなコメントをもらいました。結婚式をやるにあたって“僕らの愛の形は特別ではなく普通だよ”ということを社会に問いかけたかったので、僕らの結婚式を見て後発的に同じように式を挙げる人が出てくるといいなと思っています」


―「お金がかかる」や「準備が大変」などの理由から、世間の結婚式需要は年々減ってきていますが、LGBTQ+の方々もこのような理由で式を挙げないという選択をするのでしょうか? それとも、結婚式を挙げること自体にハードルを感じているのでしょうか?

溝邊さん「後者だと思いますね。すでにカミングアウトをしていたとしても、ハードルは高いと思います」


―以前、別のLGBTQ+カップルを取材した際、「ほかのカップルがいる中で、見学やブライダルフェアに参加するのはハードルが高い」と声があったのですが、おふたりはいかがでしたか?

溝邊さん「フェアに参加すると、やっぱりほかの夫婦からの目線は感じますね。ただ、僕らもLGBTQ+カップルがいたら見ちゃうと思うんです」

杉山さん「『あそこにゲイカップルいるね』とか話しちゃうよね」

溝邊さん「だから目線を感じるのには感じると思うのですが、『あの男性同士のカップル、結婚式を挙げるんだ。ステキだね』と思っているかもしれないし。逆にネガティブな反応かもしれないけど、でもそれは僕たちには伝わらないから、結局自分がどう捉えるかという問題ですね。僕には関係ないって思っていました」


―たしかにおっしゃる通りですね。でも、溝邊さんのように誰かが発信していかないと、LGBTQ+カップルの結婚式に対するハードルは高いままですね。

溝邊さん「それは思いますね。これまでのLGBTQ+カップルの結婚式事例は知っていましたが、僕らのようにこんなに大規模にやるっていうのは初めてなんじゃないかと思っていて。それっていわゆるファーストペンギン的なものだから、結婚式を挙げることで批判されるっていうのも想定済みでした。でも、僕が攻撃されたとしても世の中の認知や理解が広がるのであれば、後発的に結婚式をやろうと思っているカップルたちが少しでも楽になるのかなって。だから、こういった発信は必要なんじゃないかなと思っています」


「あなたの愛と人生に“正解”をくれるのは、あなた自身です」実際に結婚式を挙げた溝邊さんだからこそ伝えたいこと

―最後に結婚式を検討しているLGBTQ+カップルにメッセージをいただけますと幸いです。

「結婚式をきっかけにカミングアウトするにあたり、最初は“誰にどこまで伝えるか”で葛藤しました。その時に大切だと感じたのが『自分が安全だと感じる順番』を守ること。まず一人でも味方を見つけると安心感がまったく違います。あと、結婚式は“理解を広げるチャンス”でもあるということですね。『カミングアウト=告白』と捉えるのではなく、『ともに祝ってもらうための招待』と捉えると気持ちが楽になるかもしれません。実際に結婚式に親族を招待するにあたり、招待状やプロフィールブックで僕たちのストーリーをていねいに共有したら、保守的な親族からも『ステキだね』と祝福してもらえました」

「LGBTQ+当事者の方には、『ありのままの自分でいて大丈夫。カミングアウトのペースも、結婚式のスタイルも、“あなたたちの心が納得する形” を選んでください!』と伝えたいですね。それ以外の皆さんに伝えたいのは『世の中にはさまざまな愛の形があります。僕たちがその一例です。知ってもらうことが優しい社会への第一歩だと信じています』ということでしょうか」

「僕らの発信が日本をもう少し住みやすい場所にする小さな前進となり、僕たちに続くカップルが『次は自分たちの番だ』と笑顔でバトンを受け取ってくれたら本望です」

溝邊さんと杉山さんの結婚式の様子はこちら
マイナビウエディング 編集部
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