【愛のカタチ】幼なじみの結婚はマンガみたいな展開かと思ったら全然違った

4歳で出会って、中学校までずっと一緒

波多野「今日は幼なじみ婚のカップルと伺って、胸を高鳴らせて来ました。色々お話聞かせてください！　さっそくですが、2人の初めての出会いはいつ頃？」

香奈さん「4歳の頃ですね」

波多野「4歳!?　思っていたよりもヘビー級の幼なじみ......！　その頃の記憶ってあるんですか？」

香奈さん「はい。幼稚園の年小の頃、バスの停留所で出会ったんです。彼は年中から同じ幼稚園に通い始めたんですが、それまでずっと2歳年上のお姉ちゃんを毎日お母さんと一緒に見送りにきていて」

純平さん「僕は憶えていないんだけど、よく覚えてるよね（笑）」

香奈さん「お母さんに抱っこされて、細っこくて。いつも白いハイソックス履いてたよね。おさるのジョージみたいでさ。かわいいなぁ、と思っていました」

純平さん「おい、恥ずかしいよ～」



波多野「のっけからキュンキュンさせてくるなー（笑）。じゃあ、幼稚園はほとんど一緒だったわけですね。その後もずっと同じ学校？」

香奈さん「小学校、中学校まではずっと同じでしたね」

波多野「わー思春期の多感な時期を一緒に過ごしてたとか想像しただけでもドキドキ?！ 当時の写真ってあるんですか？」

香奈さん「ありますよ～。ちょっと待っててくださいね、たしか卒アルがどこかに......」

波多野「卒アル～！」

香奈さん「あ、あった。これが中学時代の私です」



波多野「か、かわいいー！！！！！！！ じゃあ、純平さんは？？？」



純平さん「僕のも見ちゃいます？ これですね」


波多野「今と変わらなさが衝撃（笑）」

純平さん「よく言われます、アップデートしないヤツだなって」

香奈さん「小学校時代から一緒に写ってる写真がたくさんあるんですよ。なぜかお互いが微妙な距離感で立っている写真が多いんですけど（笑）」

波多野「へえー。思い出が同じアルバムや写真に残っているってすてきですね。あどけない顔をしてた同級生同士が今こうして結婚してるとか、ほんと胸熱。いいなー」

「無関心」からの奇跡の出会い

波多野「これは私の勝手な妄想なんですけど、その後の展開はこういうことでよろしいでしょうか？　まるで兄妹のように仲良しだった純平と香奈。でも小学校に入学すると、近すぎるその距離感が次第にうっとうしく感じられるように。周囲のからかいの声も照れくさく、少しずつ疎遠になっていく2人。しかし中学生のある日、香奈が同じクラスの男子Aと下校する様子を目撃してしまった純平の心に、それまでにはなかった複雑な感情が芽生えて......」

香奈さん＆純平さん「いやいやいや（笑）」

香奈さん「ずっと近くにいすぎて気づかなかったけど、オレ、もしかして香奈のこと......初めて香奈を異性として意識した純平は、幼い頃よく一緒に遊んだ神社の境内に香奈を呼び出し......」

純平さん「全然憶えてないんですよ」

波多野「今いいところなので、ちょっと邪魔しないでもらえますか？」

純平さん「だから...幼稚園以降のお互いの印象が全然ないんですよ」



波多野「へ？　そんなことってあるの......？」

香奈さん「異性として意識したことが、まったくなかったんです。小3、小4、中2で同じクラスだったのに、ほとんどしゃべった記憶がなくて」

純平さん「そうなんです。僕はどちらかというと、女子が苦手なくらいで......」

波多野「今、私のなかの夢が完全に壊れました......！ じゃあ2人の人生は、どこで重なり合うことになるんですか？」



香奈さん「んー25歳くらいのときだっけ？」

純平さん「うん、そうだね」

香奈さん「同窓会で再会したんです。とは言っても、私は純平の親友と話をしていて、隣に純平がいたみたいな。そのときもひとことふたこと言葉を交わした程度だったよね」

f純平さん「うん、女子は苦手で......」

波多野「シャイ過ぎる25歳！ じゃあそこからどうやって進展したんですか？」

香奈さん「その翌年に純平から一斉送信でメールが来たんです。『こっちに帰ってきてるから、来れるヤツは集まろうぜ』って」

純平さん「僕は仕事で道路や橋の修繕事業に携わっているんですが、1年ごとに赴任先が変わるんです。たまたまその頃、東日本大震災の復興のために宮城に戻ってきていたので、昔の友達に会いたいなと思って。震災の翌年なので、2012年ですね」

香奈さん「でも、なぜかその集まりに行ってみたら......純平と私だけだったんです」

純平さん「そう。5人くらい集まるはずだったのに、香奈以外全員ドタキャンで」

波多野「面白くなってきた～っ！　香奈さんはどんな気持ちだったんですか？」

香奈さん「うわぁ......って思いましたね（笑）。でも仕方ないから、とりあえず居酒屋でも行こうかって。2人きりで話すなんてほとんど初めてだったんですけど......」



香奈さん「結局すっごく楽しかったんです」

波多野「甘酸っぱくて最高～！」

純平さん「そのときはフェルメールの話がきっかけで盛り上がったんだよね」

波多野「え、フェルメール？ 画家の？」

香奈さん「はい。たまたま私も純平もフェルメールが大好きだったんです。それが判明して、そこからは一気に距離が縮まりました。話をしているうちに、幼なじみなのに全然知らない一面が出てくるからすごく新鮮で」

波多野「あ、だから部屋にフェルメールのポスターを飾ってたんですね！ それにしても、フェルメールで意気投合とかかなりレアパターンのような」

香奈さん「そうですよね。私もびっくりでした」



波多野「そこから一気に付き合うモードに？」

純平さん「いや、すぐにというわけでもないですね。その後僕は都内に転勤になったんですけど、たまたま東京都美術館でフェルメールの『真珠の耳飾りの少女』の原画の展示があったんです。香奈がフェルメール好きだったなと思って、見においでよと連絡しました」

香奈さん「私は躊躇したんですけど、『この機会を逃すなんてありえないよ！』って。それで、内心ビクビクしながら上京したんですけど、会ってみたら純平がまるでガイドさんみたいに東京案内してくれて......。その行動力にグッときちゃったんですよね」

波多野「香奈さん、わかりやすくギャップにやられがちですよね（笑）。でもわかる気がする。それで付き合うことに？」

香奈さん＆純平さん「いえ、まだ......」

波多野「この2人、ひっぱる～！」

小さなコミュニティのなかで付き合い、そして結婚する

純平さん「付き合い始めたのは、フェルメールを見た翌月ですね」

香奈さん「純平がなんか突然うちにクルマでやってきたんですよ。当時、純平と仲良くしていることは親に話してはいたけど、親も当然純平は知っているし、『えー！あの我妻さんとこの純平！？」みたいなリアクションだったから、家に上げるのは気まずくて、そのままクルマで出掛けたんです。そしたら道中でいきなり純平が、笑顔で『付き合ってください』って」

純平さん「香奈とはやっぱり趣味も合うし、お父さんもお母さんも幼稚園の頃から知っているから、それは僕にとって大きかったんです。不安がられず受け入れてもらえるかなって。だからいきなり家に行ってしまった」

波多野「ということは、告白した時点で結婚も視野に入れていたんですか？」

純平さん「はい。年齢的にも、付き合うからにはこの人と結婚かな、と」

波多野「男らしくて格好いい！ 最近の結婚を先のばしにしがちな男子に見習って欲しい......！　それで、香奈さんの答えは？」

香奈さん「最初は『やめたほうがいいよ』って言いました。共通の知り合いが多すぎて、もしダメになってしまった時につらいかな、と思ったので」

波多野「たしかに。それは幼なじみ婚のひとつのデメリットかもしれませんね」

香奈さん「でも、結局押しの強さに根負けして、付き合うことにしたんですけどね（笑）。結婚の話も周りには秘密に進めていたんですけど、すぐにばれちゃって......」

純平さん「うちの親は僕が報告する前に、スーパーでたまたま会った近所のおばちゃんから僕たちが結婚する話を聞いたみたいです（笑）」

香奈さん「友達がそれぞれのフェイスブックの投稿から推測していたらしいんですよ。『香奈と純平、同じ場所ばっかり行ってない？』って。そこから親につながって、それがめぐりめぐって近所のおばちゃんにまでっていう」

波多野「コミュニティが小さいと、噂が広まるスピードも早いのかもしれないですねー。親御さんも含め、みなさん祝福ムードだったんですか？」

香奈さん「最初はみんな、すごくびっくりしていました。幼なじみとはいえ、大人になるまでそこまで親しかったわけじゃなかったから。でも覚悟を決めたことをわかってもらえたら、みんなちゃんと祝福してくれましたね」

「知らなかった」からこそ「深くなれた」

波多野「結婚式はしたんですか？」

香奈さん「はい、しました。付き合って一年で塩竈神社で結納をして、翌年に仙台で盛大な式と披露宴を。友達も親戚も、新郎側・新婦側とか隔てなく、ひとつの大きなテーブルにギュッと。なにせみんな知り合いなので（笑）」



波多野「いいですね。幼なじみ婚ならでは！」

香奈さん「親族同士も仲がいいんですよ。嫁姑問題も今のところないですし、それぞれの親が、私達を分け隔てなく実の娘・息子みたいに可愛がってくれるのもありがたいです。私達がいないときは、両家の親同士でお茶を飲みに行ったり、野菜のおすそ分けをし合ったりもしているみたいです」

波多野「おお。それはまた理想的な......」

香奈さん「将来子どもができたとしても、里帰りは楽だろうなって。子どもを連れて旦那さんの実家に帰るのは結構ストレスだと聞くけど、うちの場合はそれがないので」

純平さん「そうだね。今日はうちの実家、明日は香奈の実家、明後日はそれぞれの家で、とか自由に動けるもんね」

波多野「いいなー幼なじみ婚。私の妄想とはちがう、現実的な良さを感じてきました！ むしろ、マンガみたいな幼なじみ恋愛って、現実にはなかなか難しいのかもしれないですね」

香奈さん「私たちは幼なじみだけど、お互いのことを知らなかったのがよかったんだと思います。知らなかったからこそ、相手の新しい一面が見えてきて、どんどん惹かれていった。逆に小さい頃から相手のことを知りすぎていたら、きっと恋愛対象にはならなかったのかなと」

純平さん「うん。大人になって深く知れた。それが良かったよね」



波多野「考え方や気持ちが通じ合っていて、すてきな関係ですね。最後に、お互いの好きなところを聞いてもいいですか？」

純平さん「料理が上手なところ！　直して欲しいのは......今のところないです！」

香奈さん「え～言いにくくなっちゃった（笑）。純平の好きなところは、くよくよしないところかな。私が悩みやすいタイプなので、サラッと流してくれるところが好きですね。いつまでも、ずっと一緒にいられたらいいな」

波多野「最後までラブラブすぎる......！　今日はありがとうございました」

取材を終えて

この日の取材は、2人の住むマンションで行われました。玄関から奥のリビングに通してもらうと、窓の外には隅田川とスカイツリー。部屋には2人の思い出の「真珠の耳飾りの少女」のポスターや、結婚式の写真が丁寧に飾られ、温かな雰囲気が心地よいすてきなお住まいでした。

実は私は小中高一貫の女子校育ちなので、幼なじみの男の子との恋愛がまったく想像できませんでした。だから、初めに「幼なじみ婚」と聞いたとき、出会いから付き合うまでに紆余曲折あって、くっついたり離れたりしながら、最終的には運命に導かれるように結婚するんじゃないかって、マンガみたいな妄想を勝手に抱いていたのです。

私は今回2人の話を聞いて、「あらためて出会い直す」という恋愛のカタチを知りました。正直最初は「思ってたのと違う～！」と歯がゆく感じたのも事実。でも、そっと蒔かれた小さな種を、ゆっくりゆっくりはぐくんできた2人の道のりを思うと、なんだかジン......と心が温かくなって、もしかしたら、マンガみたいな幼なじみの結婚も現実にあるのかもしれないけれど、これはこれですごくいいなーって思えたんです。

純朴な2人の小さな愛のエピソード。このホッコリとした雰囲気を、少しでもお届けできたなら幸いです。

香奈さん、純平さん、末長くお幸せに！


【書いた人】

波多野友子
カメラマン／ライター／編集者見習い。サッカーメディア、ファッション誌、女性ライフスタイル系webマガジンなどで活動中。尊敬する人物はPerfumeのあ～ちゃんです。

Twitter ID:@ogwtmk3