シャネル ウォッチの驚くべき進化。そこにはマドモアゼル シャネルの本質を極める最高峰の技術がある

昨今、時計やジュエリーを専門とするメゾンばかりではなく、新潮流ともなるブランドの動きから目を離すことができない。例えばファッションの長い歴史の中で受け継がれてきたストーリーを、時計および宝飾分野における最高峰の技術力をもってして表現する。そんなブランドの先駆けとして活躍してきたメゾンが、シャネルである。ジュエリーの世界でもめくるめく輝きの世界を構築してきたシャネルの感性は、時計製作においても健在だ。多くの時計愛好家からも注目が寄せられ続けるメゾンの魅力を、二つのコレクションから紐解いてみよう。



シャネル初の腕時計「プルミエール」


まずシャネル最初の腕時計であり、主にレディスモデルの代表作として愛されてきた時計が「プルミエール」だ。プルミエールが誕生したのは、1987年のこと。デザインを手がけたのは、当時シャネルのアーティスティックディレクターを務めていたジャック・エリュである。デザインの源泉となったのは、シャネルを象徴する香水「シャネル N°5」やヴァンドーム広場。シャネル N°5の香水のボトルストッパーは特長的な八角形のフォルムへと象られ、ハンドバックのチェーンは、ブラックレザーを編み込んだゴールドプレーテッドのストラップへと仕立てられた。先述した“伝統的なアイコンを時計というクリエーションへと融合させる”メゾンの手腕が、このファーストモデルにも見て取ることができるだろう。
プルミエール
「プルミエール オリジナル エディション」
SS×イエローゴールドコーティング、ブラックレザーストラップ、¥ 902,000
香水「シャネル N°5」のボトルストッパーを象った八角形のフォルムや、ハンドバックのチェーンを模したストラップなど、発表当時から受け継がれてきたアイコニックなデザイン。


その後も同じく八角形のボトルストッパーのフォルムをマスキュリンに表現した「ボーイフレンド」や、バッグのキルティングモチーフやクラスプをデコード(解釈)したウォッチ「コード ココ」、カンボン通り31番地4階のアトリエのドアにかかげられた言葉に由来する時計とジュエリーを融合したジュエリーウォッチ、「マドモアゼル プリヴェ」など、マドモアゼル シャネルにまつわるモチーフは実に豊かな表現力とともに、様々なデザインへ織り込まれていくようになる。

プルミエールが誕生したこの1987年、シャネルはモンターニュ通りに最初のウォッチブティックをオープン。フランス語で「一番最初」を意味する名の時計が示す通り、メゾンにとってまさに今後のウォッチメイキングを予感させる、記念すべき始まりの年ともなったのである。

プルミエール リボン
「プルミエール リボン」
SS× ダイヤモンド、ヴェルヴェットタッチのブラックラバーストラップ、クォーツ、9月6日発売、¥896,500 (シャネル/シャネル カスタマーケア tel. 0120-525-519)
デイリーにも使い勝手が良い、ダイヤモンドを施したステンレススティールモデル。時計名の“リボン”が語るように、ヴェルヴェットタッチのラバーストラップが何ともしなやかな着け心地。


進化を続けるアイコンウォッチ「J12」


その一方で、ジャック・エリュの鬼才が花開いた名作と呼ばれる時計が、かの「J12」である。2000年に初めて登場して以来、瞬く間にシャネルのアイコンへと君臨したこのJ12は、男女問わず身に着けることができるジェンダーレスな魅力を持つ腕時計だ。プルミエールのようにメゾンのアイコニックな象徴を注ぎ込んできたウォッチメイキングから一転、エリュはここで新たな試みとして、自身もこよなく愛したヨットやヴィンテージ ・カーという男性的な世界観を投影する。J12の“J”とは、アメリカズ・カップのJクラスヨットと、ジャックの頭文字から名づけられた。

ジャック・エリュが描いた「J12」のドローイング
左は2005年に発表された「J12 トゥールビヨン」のスケッチ。
右はJ12開発時に起こされた初期スケッチ。
©CHANEL 


逆回転防止ベゼルを施したスポーティな魅力を持つJ12の最たる特長は、やはり独自の高耐性セラミックにある。酸化しづらく、高硬度の高耐性セラミックは、鮮やかな発色がエリュのデザインを際立たせ、かつ男性用腕時計に求められるタフさをも兼ね備える素材として選ばれた。今では多くのセラミックモデルが市場で見られるようになったが、このJ12はまさにその先駆けとして登場したモデルなのである。最初のモデルは、ブラック。その後2003年にはホワイトが登場し、「黒という色にはすべての要素が含まれている、白も同じ」と語った、マドモアゼル シャネルにふさわしいカラーコードが構築されていくこととなる。その後もインデックスや針までをもオールワントーンカラーで仕上げた「J12 ファントム」(2013年)や、加工の難しいセラミックを接着させ、黒と白の二色を一つの時計に集約させた「J12 パラドックス」(2020年)など、ブラック&ホワイトの世界観がどこまでも自由なイマジネーションの中に繰り広げられていったことには驚かされる。

そして、大きなリニューアルを果たしたのが、2019年のこと。ベゼル幅や刻み、リュウズサイズ、ブレスレットのリンクやレイルウェイトラックのデザイン、“AUTOMATIC”と“SWISS MADE”の表記の書体や位置の変更など、一見分からないが、実は70%以上の微細なマイナーチェンジが果たされている。“何も変えずにすべてを変える”という矜持を叶えた、実にシャネルらしい試みだ。

J12
資本参加するケニッシ社との協業により開発された、2019年に登場したキャリバー 12.1搭載の「J12」
高耐性ブラックセラミック×SS、直径38mm、自動巻き(キャリバー 12.1)、¥1,160,500
(シャネル/シャネル カスタマーケア tel. 0120-525-519)


かつこのリニューアルモデルで注目を寄せられたのが、新ムーブメント「キャリバー 12.1」を搭載したという点。シャネルは2011年から資本出資をしてきた「ローマン・ゴティエ」の協力のもと、2016年に「ムッシュー ドゥ シャネル」搭載の自社製ムーブメント「キャリバー 1」を発表するなど、ムーブメント開発にも実に意欲的な姿勢を見せてきた。このJ12にはメゾンが出資参加をするケニッシ社との共同開発によるオリジナルムーブメントを搭載し、C.O.S.C.認定かつ約70時間のパワーリザーブを確保した。高精度のこのムーブメントをべースに、2022年には小ぶりな33mmに「キャリバー 12.2」が搭載されるなど、クリエーションの幅はさらに広がるように。ちなみにシャネルは、1987年当時から協働してきた外装マニュファクチュール、「G&Fシャトラン」の経営を引き継ぎ、1993年以降は自社工房としてその規模と中身を発展させてきた。J12においても高耐性セラミックケース&ブレスレットを製作。J12の外装からムーブメントに至るまで、メゾン独自の進化を続けているのである。

J12 キャリバー 12.1

資本参加するケニッシ社との協業により開発された、2019年に登場したキャリバー 12.1搭載の「J12」。

シャネルがJ12に掲げたメッセージにこのような一文がある。「J12は、立ち止まらない。だから、進化し続ける。決して変化することなく」。本質を追い求めるためのたゆみない歩みが、いつしか“アイコン”と呼ばれ、世界で賞賛される不変のクリエーションを生み出すのである。


文/野上亜紀



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