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時計は社会生活に欠かせない道具だが、“人生という時間”を可視化する役割もある。つまり時計とは、ふたりで過ごした思い出を刻んでいくものでもあるのだ。だから結婚という人生の大きな節目に、素敵な時計を手に入れたい。
それはふたりで歩むこれからの時間を、大切にしていきたいという意思表明になるだろう。
「王の宝石商、宝石商の王」Cartier (カルティエ)
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価値観とは長い時間をかけて、個々の中で醸成されたもの。だからどちらかが正しいわけでもないし、絶対的な正解を探しても意味はない。お互いに主張をぶつけ合うのではなく、むしろ双方が共感できる領域を見つけよう。そうすればお互いの価値観に対する理解も深まるし、コミュニケーションはより円滑になる。
そう、時計の話である。
このサイトを見ているのなら、よもや「Cartier (カルティエ)」の名を知らぬ人はいないだろう。1847年にフランスの宝石細工師のルイ=フランソワ・カルティエがパリに工房を設立。1853年にジュエリーブティックをオープンし、多くの貴婦人たちの間で評判となる。
また英国王エドワード7世は、Cartier (カルティエ)を「王の宝石商、宝石商の王」と激賞したことでさらに名声を高めた。特に三代目当主のルイ・カルティエは、創造性に富むだけでなく、世界中を旅してインスピレーションを磨いて、革新的なジュエリーデザインをいくつも生み出した。結果として現在も多くの女性の憧れるブランドであり続け、ジュエリーだけでなく時計でも人気が高い。
“世界初”の腕時計「サントス」の誕生秘話
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しかし実はカルティエは、メンズウォッチの世界でも超一流ブランドである。
そもそも男性が持つ時計は、長らく懐中時計が主流だった。しかし19世紀後期から飛行船や気球といった最先端のテクノロジーが登場し、世界がスピードアップしていくと、懐から悠長に時計を取り出す余裕はなくなっていく。
そんな時代の寵児だったのが、ブラジルのコーヒー王の息子で、パリで遊学していたアルベルト・サントス=デュモン。彼はパリ社交界の有名人で、飛行船を操ってパリ郊外のレストランに食事に行くような粋人だった。
ファッションにも一家言あった彼は当然懐中時計を愛用していたが、残念ながら飛行船や気球を操縦しながら時間を確認するのに不向き。そこで友人だったルイ・カルティエは、彼のために腕に着ける小型の時計を製作してプレゼントした。
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1911年には市販化もされたその時計「サントス」ウォッチは、世界初の実用的な紳士用腕時計であり、瞬く間にパリの紳士たちの注目を集めるようなる。
男性もあこがれるコレクションの数々
しかしルイ・カルティエの創造性は、まだまだ尽きない。第一次世界大戦の終結を決定づけ、再びヨーロッパに平穏な日々をもたらした平和の象徴である戦車(タンク)を上から見た形から着想を得て、デザインしたメンズウォッチ「タンク」は1917年に誕生。映画俳優やファッションデザイナーなど多くのセレブリティに愛され、彼らは「タンキスト」と呼ばれるほどの話題となった。
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またカルティエの上顧客であった、モロッコのマラケシュの太守(パシャ)だったエル・ジャヴィ公から「プールで泳げる時計が欲しい」という注文を受け、1931年に生まれた防水時計をルーツとするのが「パシャ」。初代は角形で、現代モデルのルーツとなるラウンドデザインは‘43年に誕生した。
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「サントス」「タンク」「パシャ」は、どれもが女性からの人気も高い時計だ。しかしそのルーツは、男性用の時計にあった。カルティエは女性が憧れるブランドだが、男性が憧れるブランドでもある。そして美的感性や価値観をパートナーと共有し、共感を分かち合えば、ふたりの関係はより深くなるだろう。カルティエは共感を生み出す時計なのだ。
篠田哲生セレクトウォッチ
【サントス】
(男性におすすめ)「サントス ドゥ カルティエ」ウォッチ
品番:WSSA0018
Vincent Wulveryck © Cartier
男性にはメタルブレスレットのスポーティなモデルがおすすめ。ベゼルやブレスレットに取り入れたビスは20世紀初頭のパリに作られたエッフェル塔の構造をイメージしたもの。カーフストラップも付属する。自動巻き、SSケース、ケース縦47.5×横39.8㎜。¥1,174,800
(女性におすすめ)「サントス デュモン」ウォッチ
品番:WSSA0023
Vincent Wulveryck © Cartier
女性なら小ぶりケースのレザーストラップモデルを。ルイ・カルティエが作った初代モデルのスタイルを継承し、ローマン数字インデックスのデザインも繊細。ブルースピネル製のカボションは、カルティエのアイコンデザインだ。クオーツ、SSケース、ケース縦38×横27.5㎜。¥594,000
【タンク】
(男性におすすめ)「タンク マスト」ウォッチ
品番:WSTA0041
Antoine Pividori © Cartier
ケースサイドをそのまま伸ばすようにしてラグとし、太めのストラップと組み合わせるのが、「タンク」のデザインの特徴。シャープなラインと柔らかな曲線が融合したデザインは、アールデコ様式の特徴でもある。クオーツ、SSケース、ケース縦33.7×横25.5㎜。¥522,500
(女性におすすめ)「タンク フランセーズ」ウォッチ
品番:WSTA0065
Antoine Pividori © Cartier
女性人気の高いこちらは、1996年にデビュー。ケースはややシャープになり、ブレスレットへとシームレスにつながる。アクセサリーのように使いたい時計だ。クオーツ、SSケース、ケース縦25.7×横21.2㎜。¥555,500
【パシャ】
(男性におすすめ)「パシャ ドゥ カルティエ」ウォッチ
品番:WSPA0009
Maxime Govet © Cartier
鎖付きの竜頭カバーによって10気圧の防水性能を実現。丸形のダイヤルに角形のミニッツトラックを合わせるデザインも、パシャの伝統である。道具不要で簡単にブレスレットの着脱ができ、ダークグレーのアリゲーターストラップに交換可能。自動巻き、SSケース、ケース径41㎜。¥1,122,000
(女性におすすめ)「パシャ ドゥ カルティエ」ウォッチ
品番:WSPA0021
Antoine Pividori © Cartier
カレンダーも秒針もないタイプなので、ダイヤルデザインがすっきりした。フューシャ(赤紫)カラーのアリゲーターストラップも付属しているので、ファッションやシーンによって時計を着替えるように使い分けたい。クオーツ、SSケース、ケース径30㎜。¥803,000
writer-篠田 哲生
1975年千葉県生まれ。2002年に独立し、時計記事の取材や執筆を始める。
時計学校を修了し、スイスやドイツへの取材経験も豊富。
近著の「教養としての腕時計選び」(光文社新書)は、韓国と台湾でも翻訳版が出版された。