時計ジャーナリスト 篠田哲生Selection 【Vol.7】 技術を民主化し、よい時計のレベルを上げる「OMEGA(オメガ)」

時計は社会生活に欠かせない道具だが、“人生という時間”を可視化する役割もある。つまり時計とは、ふたりで過ごした思い出を刻んでいくものでもあるのだ。だから結婚という人生の大きな節目に、素敵な時計を手に入れたい。
それはふたりで歩むこれからの時間を、大切にしていきたいという意思表明になるだろう。



数々のマスターピースがそろうOMEGA(オメガ)


OMEGA(オメガ)

物事の考え方として、「○○をしてあげた」「○○をしてあげる」という自分本位の思考はよくない。たとえそれが正しいことだとしても、個々の経験や価値観を押し付け、強要することは無用な軋轢を生むだろう。逆にどれだけ素晴らしいことでも、それを特別なこととせず、サラリと取り入れて全体の質を高めていく方が、断然スマートである。

そう、時計の話である。

時計愛好家では無くても、「OMEGA(オメガ)」の名を知らない人はいないだろう。創業は1848年という老舗で、さまざまなマスターピースを作ってきた。

OMEGA(オメガ)

一般的に有名なのは「スピードマスター」で、 1965年にアメリカ航空宇宙局NASAの公式装備品として採用され、1969年に行われたアポロ11号による月面着陸ミッションにも使用されたことから「ムーンウォッチ」とも呼ばれる傑作だ。さらにあのジェームス・ボンドも愛用するダイバーズウォッチ「シーマスター」やラグジュアリーとスポーティが融合した「コンステレーション」など数々のコレクションを持つ。



歴史を変えた革新的な技術


しかし今回注目したいのは、モデルよりも技術面である。
そもそもOMEGA(オメガ)は高精度時計で知られており、1932年のロサンゼルスでのオリンピックで、初めて単独の時計ブランドとして公式計時を任された。その後も夏季・冬季のオリンピックで公式計時を担当し、もちろん今年のパリ2024の計時も担当するほどの技術力をもつ。

オリンピックで公式時計を担当したOMEGA(オメガ)

しかしOMEGA(オメガ)の技術開発は、もっともっと未来を見ている。
機械式時計は約400年前に基本的な機構が完成したが、どうしても避けられない2つの弱点があった。それが潤滑油の品質低下による精度劣化と磁気による精度劣化であり、時計師を何百年のも悩ませ続けてきた。OMEGA(オメガ)はこのふたつの難問に明快な答えを出したのだ。

まずは「潤滑油」。多くのパーツの集合体である機械式時計は、摩擦が生じる場所に潤滑油をさしている。しかし潤滑油はどうしても時間経過とともに劣化してしまうので、それが理由となって精度の劣化を招いていた。
そこでOMEGA(オメガ)では、最も精度に影響を与える調速脱進機の無注油化を目指し、時計師ジョージ・ダニエルズとの共同開発によって、極めて摩擦が少なく注油を必要としない「コーアクシャル脱進機」を完成させた。もちろん他の部分への注油は必要なので“完全無注油”というわけではないが、重要パーツが無注油になるだけでも精度劣化を軽減させる効果は大きい。

OMEGA(オメガ)コーアクシャル脱進機

さらに「磁気」による問題も解決した。精度をつかさどるヒゲゼンマイという繊細なパーツは鉄系の合金でつくられていたが、ここが磁気を帯びると精度を狂わせる。OMEGA(オメガ)では長年、耐磁素材研究を重ねてきたが、非磁性素材であるSi14シリコンを使用したヒゲゼンマイを開発し、2008年からムーブメントに使用し始めた。
さらにチタンやニッケルリンといった非鉄素材をムーブメントパーツの素材に用いることで15,000ガウスの耐磁性能を獲得した。これによって理論上は、磁気の問題を根絶した⁠といえる。

OMEGA(オメガ)ヒゲゼンマイ




“究極”という意味を持つ「OMEGA(オメガ)」に相応しい理念


さて、こういった脱進機も特別な耐磁素材だが、少量生産して特別なモデルに搭載するのであれば、レベルの差はあれどもさほど珍しくないことである。しかし数本程度の限定生産や数千万円クラスの高価なモデルとして発売するのでは、そういった技術を会得したとはいえないだろう。むしろそこまでしないとクリアできない大きな技術的問題であると認めているともいえる。

OMEGA(オメガ)の技術

しかしOMEGA(オメガ)は、こういった技術を特別なものはしない。それどころか、定番モデルなどに使用する“普通の技術”として扱っている。さらに現在はコーアクシャル脱進機を使用してクロノメーター以上の高精度を実現し、そこに15,000ガウスの耐磁性を組み合せたムーブメントへと進化させており、現行モデルのほとんどに搭載するところまで技術を熟成させている。ちなみにこのムーブメントたちはスイスの公的認定機関であるスイス連邦計量⁠・認定局(⁠METAS⁠)が定める高精度・高耐磁の認証「マスター クロノメーター」を取得しており、公的にもその性能を認められている。

OMEGA(オメガ)は時計業界を代表する技巧派だが、その功績をあまり大きな声で喧伝しない。彼らにとって大切なのは、より良い時計をユーザーに届けることであり、そのために潤滑油や磁気という問題を解決した高度な技術さえも“民主化”し、誰もが享受できるようにしてきた。OMEGA(オメガ)は時計業界をけん引する存在として、自己満足に陥ることなく時計を進化させている。そんな崇高な理念を持つブランドなのだ。



篠田哲生セレクトウォッチ


スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル
OMEGA(オメガ) スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル

アポロ11号のミッションに同行した歴史ある“ムーンウォッチ”のスタイルを継承しつつ、1列が5つのアーチ形リンクからなるブラッシュ仕上げのシームレスなブレスレットにアップデート。搭載ムーブメントは伝統的な手巻き式。しかしCal.3861はマスター クロノメーター認定を受けた最新版。伝統と革新を融合した時計だ。手巻き、SSケース、ケース径42㎜。¥1,078,000

▼詳細はこちら
https://www.omegawatches.jp/watch-omega-speedmaster-moonwatch-professional-co-axial-master-chronometer-chronograph-42-mm-31030425001001




シーマスター ダイバー300Ⅿ
OMEGA(オメガ) シーマスター ダイバー300Ⅿ

10時位置にヘリウムガスエスケープバルブを備えた、プロ仕様のダイバーズウォッチ。波模様がはいったダイヤルはセラミック素材であり、独特の光沢感も楽しい。マスター クロノメーター認定のCal.8800を搭載する。自動巻き、SSケース、ケース径42㎜。¥858,000

▼詳細はこちら
https://www.omegawatches.jp/watch-omega-seamaster-diver-300m-co-axial-master-chronometer-42-mm-21032422001001




コンステレーション
OMEGA(オメガ) コンステレーション

ケースとブレスレットが一体化したデザインは、カジュアルやドレス、ビジネスなど、さまざまなスタイルとに合わせられる。29㎜径という小ぶりサイズながら機械式ムーブメントを搭載。Cal.8700はもちろんマスター クロノメーター認定を取得。自動巻き、SSケース、ケース径29㎜。1,210,000円

▼詳細はこちら
https://www.omegawatches.jp/watch-omega-constellation-co-axial-master-chronometer-29-mm-13110292055001








writer-篠田 哲生

篠田 哲生氏
1975年千葉県生まれ。2002年に独立し、時計記事の取材や執筆を始める。
時計学校を修了し、スイスやドイツへの取材経験も豊富。
近著の「教養としての腕時計選び」(光文社新書)は、韓国と台湾でも翻訳版が出版された。

RELATED
ARTICLES
関連記事
CONTENTS
RANKING
人気コンテンツ
PICK UP
CONTENTS
おすすめ編集コンテンツ


TOPへ戻る

結婚式場探しならマイナビウエディング

ウォッチ(時計)トップ

コンテンツ一覧

時計ジャーナリスト 篠田哲生Selection

時計ジャーナリスト 篠田哲生Selection 【Vol.7】 技術を民主化し、よい時計のレベルを上げる「OMEGA(オメガ)」