
腕元で時刻を刻む時計。その中でもニッチな市場である「手巻き腕時計」は、時計愛好家の心を掴んで離さない存在だ。
今回は、そんなロマンあふれる手巻き腕時計の基礎からオススメのモデルまでを一挙ご紹介。腕時計の奥深い世界にぜひ足を踏み入れてみて。
INDEX
【ピックアップ】おすすめの手巻き腕時計
「手巻き」の腕時計とは? 魅力を知る

一般的な腕時計といえば、内蔵された電池を動力として針が動くタイプ(クォーツ式)を想像するだろう。一方で「手巻き腕時計」は、上記のような電池などの動力がないため、ゼンマイを手で巻いて動かす機械式時計のことをさす。ケースの横にあるリューズを回すことでゼンマイが巻き上げられ、その力で歯車が動き、針が時を刻む仕様だ。
同じくゼンマイを手で巻いて動かす機械式時計に「自動巻き」というものがあるが、これは着用している限りは腕の振りなどで動き続けることができる時計だ。一定の期間が経つと止まってしまう手巻きの腕時計との大きな違いはここにある。
手巻き腕時計の特徴である「日々の巻き上げ」だが、手間がかかる反面、時計と対話するような楽しみを味わえるのが魅力だ。クォーツ式が主流となる現代でも、そのアナログな魅力と巻き上げ体験から、多くの時計愛好家やヴィンテージコレクターに支持されている。
さらには機械の精密さや職人技を感じられるため、時計の歴史や伝統が詰まったムーブメントを楽しみたい方におすすめのスタイルとなっている。
ロマンあふれる手巻き腕時計の魅力に気づいたら、時計の沼への一歩となるだろう。
手巻き腕時計のメリット・デメリット
●手巻き式腕時計のメリット

①手間をかける楽しさがある
手巻き腕時計の最大の魅力は、なんといっても日々の巻き上げや時刻調整という手間をかける過程そのものにある。
時計を手に取り丁寧にリューズを回してゼンマイを巻くことで、所有者と時計が深くつながる時間が生まれる。機械式時計ならではのアナログな操作と、動力を自分の手で与える感覚は、現代の効率重視の道具にはない独自の満足感をもたらすだろう。
こうした日々のルーティンは時計への愛着や趣味性を高め、手間がかかる分だけ長く使い続けたいという気持ちも高まるのが手巻き腕時計ならではだ。
②メンテナンスコストが低い
手巻きの腕時計は構造がシンプルなため、故障が少なく長寿命なのも大きな利点。定期的なオーバーホールを行えば、何十年も使い続けることができるだろう。
③軽量・薄型モデルが多い
手巻き式腕時計の多くは構造がシンプルなため、時計本体が軽量かつ薄型で設計できる点が大きなメリットである。
仕事中やプライベートで長時間装着しても手首の負担が少なく、ジャケットやシャツの袖口にも美しく収まり、ドレスウォッチとしても優秀だ。また、ミニマルなデザインやクラシカルな雰囲気を重視する方からも人気が高い。軽やかで洗練された着け心地は、毎日使いたくなる大きな魅力といえるだろう。
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④ムーブメントの動きを楽しめる
自動巻きの場合は、ローターが時計内部の機構を隠してしまい見えないというデメリットがあるが、手巻き式は機構を存分に見せることができるので、シースルーバックとの相性がよいのが特徴だ。
ゼンマイをはじめとした数々の部品が組み合わさり繊細に奏でるムーブメントは、まるで芸術作品を所有する感覚ともいえる。時計職人の技術や歴史が直接手元で感じられる体験は、クォーツやデジタル時計にはない深い満足感を与えてくれるだろう。

photo:CHOPARD(ショパール)/L.U.C クアトロ │ 161926-1002
●手巻き式腕時計のデメリット

①巻き上げ・時刻合わせの必要性
手巻き腕時計は定期的な巻き上げや時刻合わせが不可欠である。時計との対話を楽しみたい人にはメリットである一方、都度調整しなければいけないことを手間と感じる人もいるだろう。
時計にもよるが、1日ごと・72時間ごと・1週間ごとなど定期的な調整が必要になってくる。
②精度が安定しにくい
手巻き腕時計の精度は、クォーツ式に比べて安定しにくい傾向がある。完全に巻き上げた直後と、ゼンマイがほどけてきた状態では時間のズレが生じることも珍しくない。
③商品の選択肢が少ない
ニッチなアイテムである手巻き腕時計は、その他のモデルと比較するとラインナップや生産数が少ないことも。また、比較的シンプルでクラシカルなデザインが多いため、希望にあう腕時計があるかは人それぞれとなる。
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【ピックアップ】おすすめの手巻き腕時計≪メンズ≫
※2025年12月時点の情報です
OMEGA(オメガ)
スピードマスター ムーンウォッチ
¥ 1,177,000(税込)
6度に渡る月面着陸プロジェクトのすべてに携帯された伝説のクロノグラフであり、オメガの冒険心あふれるパイオニアスピリットを受け継いでいる逸品。
ブラックのレザーストラップが付属する、この42 mmのステンレススティール製ムーンウォッチは、フロントとケースバックにサファイアクリスタルガラスが採用されている。
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PIAGET(ピアジェ)
アルティプラノ

¥ 2,129,600(税込)
ピアジェの薄型ウォッチのアイコンとして無駄を一切そぎ落としたデザイン。
クラシックでエレガントなアルティプラノのアイコン、最もシンプルで洗練された逸品だ。
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CHOPARD(ショパール)
L.U.C 「オール イン ワン」│161925-5002

¥ 49,236,000(税込)
職人の手で一つ一つ手作りされたショパールの腕時計およびムーブメントの類稀なデザイン。そこには、極めて複雑な機構と独特のエレガントなスタイルが見事に融合されている。このグランドコンプリケーションウォッチはトゥールビヨン、パーペチュアルカレンダー、日の出および日没時刻、天空を再現した軌道式ムーンフェイズといった14もの表示を備え、7日間のパワーリザーブを確保。
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HUBLOT(ウブロ)
メカ-10 ブラックマジック

¥ 3,773,000(税込)
2005年の誕生以来、基幹モデルとしてブランドイメージと知名度を飛躍的に押し上げたモデル。
HUBLOTの掲げる“融合(フュージョン)”のコンセプトから生まれたビッグ・バンはセラミック、チタン、カーボンなどの革新的な素材、ウブロの象徴となったラバーベルトを採用しており、まさにフュージョンを体現したアイテムだ。
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Glashütte Original(グラスヒュッテ・オリジナル)
セネタ・クロノメーター
¥ 4,884,000(税込)
セネタ・クロノメーターの新バージョンは、文字盤のシルバーとブルーの配色を基調としたデザイン。42mmケースは手作業で丹念に仕上げられたポリッシュ/サテン仕上げのホワイトゴールドで、表にも裏にもサファイアクリスタルが用いられているため、視認性に優れ、時計内部を眺めることもできる。
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【ピックアップ】おすすめの手巻き腕時計≪レディース≫
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JAEGER-LECOULTRE(ジャガー・ルクルト)
レベルソ・クラシック・スモール・デュエット

¥ 928,400(税込)
たった1つのムーブメントで作動する多彩な2つのダイヤルを搭載したアイテム。優美で洗練され、数々のサプライズを宿したSS製レベルソ・クラシック・スモール・デュエットは、2つのダイヤルを備えた現代的な時計の傑作だ。
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TASAKI(タサキ)
カオス

¥ 5,170,000(税込)
時計という秩序のある世界観に、爆発や分裂といった無秩序を表現しているアイテム。 隙間からムーブメントが覗き、クリエイ ティブかつハイクオリティな腕時計だ。
ホワイトの躍動的なドットプリントで強調したカオスな世界観のダイヤルを、シックなチタンケースが囲むデザインで、くり抜かれたモチーフから美しい機構がのぞくスケルトン仕様。
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PIAGET(ピアジェ)
アルティプラノ トゥールビヨン

¥ 14,344,000(税込)
ピアジェの薄型ウォッチのアイコンとして無駄を一切そぎ落としたデザイン。薄型機械式時計の先駆者としてピアジェが手掛けるトゥールビヨンウォッチ。
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CHOPARD(ショパール)
L.U.C クアトロ│171926-1001

¥ 5,126,000(税込)
完全自社製造ムーブメントを搭載する「L.U.C」コレクション。18Kホワイトゴールド製でダイヤモンドがセットされたL.U.C クアトロは、クラシックでありながらも個性的なモデルだ。 ケースは直径43 mmで、洗練されたシルバーの文字盤の下には、ブランドの偉業ともいえるL.U.Cキャリバー 98.01-Lが搭載されており、その極めて精巧な機構にもかかわらず、L.U.Cクアトロテクノロジーによって9日間のパワーリザーブが確保されている。
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手巻き腕時計の注意点とメンテナンス

手巻きをする際は、停止した状態から30~40回程度、止まるまで巻くこと。この巻き上がった状態から無理に巻こうとするとぜんまいが破損してしまう恐れがあるため、要注意だ。手巻き腕時計は定期的な巻き上げが非常に重要であり、毎日同じ時間にリューズを回す習慣をつけるとムーブメントの負担を軽減できる。
また数年に一度の定期的なオーバーホール、部品の洗浄や注油などの専門的なメンテナンスを受けることで、時計の耐久性や精度を長期間維持できる。加えて、ガラスやケースの汚れを柔らかい布で拭き取り、日常的な掃除を怠らないことも必要である。
しばらく使用しない際は、正しい保管方法が不可欠である。直射日光や高温・多湿の場所、磁気の近くを避け、風通しの良いケースや専用ボックスで保管することでムーブメントの耐久性が向上する。こうした心遣いが、時計への愛着をより一層深めてくれるだろう。
手巻き腕時計の歴史

腕時計の歴史は、懐中時計からはじまる。実用性を高めるために時計職人によって技術革新が行われ、ゼンマイとムーブメントをコンパクトにまとめ腕時計の形にすることで携帯性が向上した。
その際採用されていたのが、アナログな手巻き式。15~16世紀ごろに開発され、その後自動巻きやクオーツ式などが登場するも、約400年の間は手巻き式が主流となってた。まさに、時計史を語るにあたっては外せない技術なのである。
18世紀ごろ、機械式ムーブメントが発展し自動巻き式が開発される。当時は懐中時計への搭載がメインだったが、19世紀ごろから腕時計が浸透し始めた際に手間がかからない自動巻き式が採用され、現在に至るまで手巻き式はニッチな層に好まれるものとなった。
このように歴史や技術背景を理解することで、一本一本に込められた物語をより深く味わうことができるだろう。







