こんにちは、藤原麻里菜と申します。『無駄づくり』というYouTubeチャンネルで無駄なものを作っています。今まで『10回腹筋をしたらマシュマロが1個だけでてくるマシーン』や『歩くたびにおっぱいが大きくなる装置』などを作った私ですが......。すみません。私なんかより、龍とシーサーの置物のほうが気になりますよね。心なしか、ピントもそっちに合っている気がする。
今、私は弁護士事務所にいます。著作権で気になることがあるんです。
少し前に、ネットでこんな話題があがったのをご存知ですか?
一通り読んだんですけど、
結婚式のBGMに関する著作権、ややこしすぎる!
何が良くて何がダメなのかさっぱり分かりません。正直、パソコンから焼いたCDを結婚式場で流しちゃダメなんて、初めて知りました。
そこで今回は、著作権ってどうなってんの? ということを、弁護士さんにじっくり聞いてみたいと思います。
今回、お話を伺ったのは、弁護士の中谷寛也先生。
著作権法に明るく、自身でも著作権の管理をしているのだとか。
「いきなりですが、著作権、ややこしすぎないですか?」
「ややこしいです」
「そもそもの話ですが、著作権を侵害するとどうなるんですか?」
「10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金が法律で定められています」
「『親告罪だからバレなきゃいいっしょ!』と思ってるかたが多いと思いますが、犯罪ですもんね。 披露宴で捕まるとか縁起でもなさすぎるので勉強させてください!」
まずは著作権の基本を知ろう
まずは著作権の基本的な内容から教えてもらいます。
※私はマンガ『クローズ』の舞台になりそうな高校が最終学歴のため、今回は特別にものすごく分かりやすく説明してもらっています。
「楽曲の著作権には、作詞作曲をした人が持つ著作権と、演奏している人と製作者(レコード会社など)が持つ著作隣接権があります」
「きゃりーぱみゅぱみゅは著作隣接権を持っていて、中田ヤスタカは著作権を持っているというわけですね」
「楽曲を商用利用する際は、著作権者と場合によって著作隣接権者に許可をもらう必要があります。例えば、きゃりーぱみゅぱみゅさんのCDを流す場合は、中田ヤスタカさんに許可を取らなければいけません。しかし、中田ヤスタカさんはお忙しいので、いちいち対応してられないですよね。そこで著作権管理事業者があるというわけです」
「でた、JASRAC」
「JASRACをはじめとする著作権管理事業者を通せば、楽曲の使用許可は簡単に取れるというわけです」
「なるほど」
「そもそも、結婚式のBGMって商用利用なんですか? 私的使用に含まれないんですか?」
「個人や家族で楽しむのが私的使用と考えると、式場のような大人数の場には当てはまりません。
式場のサービスのひとつに『BGMを流すこと』も含みますよね? そこから『営利目的での使用』と判断されるんです。
でも多くの式場はJASRACと契約していますから、市販されているCDなら流せます。CD-Rなどに複製(コピー)した音源を流す際は、別途許可を取る必要がありますが......」
「もうややこしい」
「結婚式場で楽曲を流すには、演奏利用と複製利用があるんですよ。次で詳しく説明してみましょう」
演奏利用って何?
「式場で、市販されているCDを渡してBGMとして流すという行為を演奏利用といいます。これは、式場側が著作権管理事業者(JASRAC等)と契約していれば問題ありません」
「じゃあ、式場でアーティストの曲をバンド演奏する場合は?」
「これも上記と一緒で、問題ありません」
複製利用って何?
「次に、複製利用について説明します。みなさん、好きな曲を集めたオリジナルのCDを作ることがあると思いますが、これを複製利用と言います。CD以外でもitunesでプレイリストを作る等、データを複製すること全てが複製利用とみなされます。
これは、私的な利用だと問題ないのですが、結婚式だと著作権法違反になってしまいます」
「あれ?式場が著作権管理事業者と契約していたら、曲を流していいのでは?」
「演奏利用は、著作権者に許可をもらえば大丈夫です。しかし、複製利用は、著作隣接権もかかわってくるのです。著作権管理事業者は、著作隣接権の管理は行っていません」
「うーん。結婚式でプロフィールムービーを流すじゃないですか。あれのBGMはどうでしょうか」
「ムービーと楽曲を1枚のディスクにすることは、複製利用です」
「もしかして、結婚式を録画したDVDを後日配るのも?」
「はい。BGMが録音されてしまうので、複製利用とみなされます」
「じゃあ、『このサビの部分だけ使いたいから!』と編集するのは?」
「それは、著作者人格権と実演家の人格権の侵害になるので許諾が必要ですね」
「ぜんぶ勝手に使ったらダメじゃん」
複製利用の申請方法って?
私が理解するまで一生懸命説明してくれる中谷先生
「だいたいは理解できたのですが、これって好きな曲をまとめて流せないですよね。式場のスタッフに『このCDの3曲目をこの場面で流して~』なんて大量のCD持っていかなきゃならないってことですよね。廃止!この法律、廃止にしましょう!」
「何にしても、権利を持っている方に許可をもらえば大丈夫です!」
「許可を取るってめちゃくちゃ面倒そうじゃないですか」
「著作権については、著作権管理事業者と契約している著作者であれば、書面を一枚書いて使用料を払えば大丈夫だそうです」
「意外と簡単ですね。でも、複製利用の場合は著作隣接権者にも許可をもらわなきゃいけないんですよね」
「そうです。レコード会社等に許可をもらわなければならないのですが、これは個人だと難しいんです」
「もういやだ」
「ただ、複製利用の許諾を代行して取ってくれるISUM(アイサム)という社団法人があります。ここも個人で頼めるわけではないのですが、加盟している式場やブライダルの映像制作会社であれば利用できます」
「じゃあ複製利用したいなら、
個人→式場(ブライダル業)→ISUM→JASRAC等、レコード会社という流れですか?」
「もっとシンプルになればいいのですが。現状は、そうなりますね......」
まとめ
中谷先生の説明のおかげで、だいぶスッキリしました!
でも予想以上に、複雑すぎる著作権。それでも法を侵さないためにはキチンと手続きを踏まなければなりません。
今回学んだことをまとめると、
・CDをそのまま流す『演奏利用』は、JASRAC等と契約している式場であればOK。
・CDをコピーしたり映像と楽曲を同じディスクに収録する『複製利用』は、ISUMに加盟している式場か、制作会社に依頼すればOK(JASRAC等やレコード会社にも許諾をとってもらえる)。
ということになりました。
いろいろとややこしいですが、皆さんが好きな音楽を作っているのは、プロのアーティスト。その人たちの権利を守るためにあるのが著作権なので、ルールを守ることでそのアーティストを応援することにもなるのです。
実際の結婚式準備では、式場側もリードしてくれるハズ。皆さんが清く正しく、美しい結婚式を行えますよう、参考になればうれしいです!
中谷先生、ご協力ありがとうございました!
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中谷寛也先生
桑田・中谷法律事務所
ウェブサイト:http://www.kn-law.jp/
初回は相談料が1時間無料だそうです。
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参考リンク
○JASRAC
- ブライダルでの音楽利用について
http://www.jasrac.or.jp/info/bridal/
- 作品データベース検索サービス
http://www2.jasrac.or.jp/eJwid/
- 使用料計算シミュレーション
http://www.jasrac.or.jp/info/create/calculation.php
○ISUM(アイサム)
■余興のムービーを制作することになったら...!?
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