時計は社会生活に欠かせない道具だが、“人生という時間”を可視化する役割もある。つまり時計とは、ふたりで過ごした思い出を刻んでいくものでもあるのだ。だから結婚という人生の大きな節目に、素敵な時計を手に入れたい。
それはふたりで歩むこれからの時間を、大切にしていきたいという意思表明になるだろう。
スイス時計業界をリードする存在「IWC」
もともとは別々であったものが、何かのきっかけで出会い、終生のパートナーとなる。お互いの感性を刺激し合い、個性を高め合い、時には相手をフォローすることで、いつしか別々であった気持ちはひとつになっていく…。それがとても幸せなパートナーシップだ。
そう、時計の話である。
時計が実用品からアクセサリー的にシフトしてきたことで、小ぶりな時計を男性が好み、大ぶりな時計女性が好むというように、嗜好をクロスオーバーさせる事例も増えている。もはや性別ではなく、スタイルやデザインで好きな時計を選ぶというのが正解なのだ。
「IWC(アイ・ダブリュー・シー)」はそういった時代にあう時計だ。創業は1868年。アメリカ人時計技師のフロレンタイン・アリオスト・ジョーンズが、近代的な時計工場を建てるために、水力発電所に近いスイス北部の街シャフハウゼンに時計会社を設立する。創業当初からエンジニアリングに力を入れており、機構や素材の開発でもスイス時計業界をリードする存在であり続ける。
“シェアウォッチ”としてもおすすめのデザイン性
IWC(アイ・ダブリュー・シー)は、デザイン面でも非常に人気が高い。
そもそもスイス時計産業は、フランスから移住してきた時計師が技術を伝えたため、フランスと国境を接するジュネーブなど、フランス語圏が中心。フランス文化の影響を大きく受けるため、デザインもフランス的な優美なフォルムを得意とする。しかしIWC(アイ・ダブリュー・シー)が拠点を構えるシャフハウゼンはドイツ語圏にあるため、文化面でもドイツの影響を受けており、機能性とシンプルさを重視した辛口のデザインが得意だ。
こういった機能的で辛口なIWC(アイ・ダブリュー・シー)のデザインは男性からの支持が高いが、こういったスタイルを好む女性も少なくないので、“シェアウォッチ”としておすすめしたい。シェアウォッチとは一本の時計をパートナー間でシェアして使うというスタイル。あるいはふたつのモデルを購入して、交換して使うのもいいだろう。同じ時を共有し、離れていても相手を身近に感じられるシェアウォッチは、ペアウォッチとは違った時計の楽しみ方となっている。
代表的な3コレクション
「ポルトギーゼ」は、ポルトガル商人の「マリンクロノメーター級の高精度な腕時計が欲しい」というオーダーをうけて1939年に誕生した時計がルーツ。
高精度な懐中時計用ムーブメントを使用したためケースが大きくなり、可能な限りシンプルに時計を見せるためにベゼルを細くデザインした結果、大型ケースながら端正な時計に仕上がった。そのスタイルは現在まで継承されており、シンプルなのに存在感があるのにエレガントさも楽しめる。
「パイロット・ウォッチ」は、長年続くIWC(アイ・ダブリュー・シー)の伝統的なコレクション。パイロットのための武骨なツールウォッチとして生まれたが、機能のために導き出されたシンプルな機能美は、誰からも好まれる。
そして「ポートフィノ」はイタリアのマリンリゾート地である「ポルト・フィーノ」の流れる甘美な時間を投影したモデル。やや小ぶりなラウンドケースを生かすように、ラグは小さめにデザインしており、柔らかなニュアンスを作り出す。
いずれのモデルも、男性にも女性にも似合う。これをパートナーとシェアすることで、ふたりの時間を特別なものとしたい。
篠田哲生セレクトウォッチ
パイロット・ウォッチ・マーク XX
英国空軍が定めた飛行士用腕時計の規格である「マーク11」に準拠する時計として開発され、1948年にデビューしたのが、マークシリーズの始まり。その後は時代を重ねるたびに進化し、2022年にデビューした「マークXX」が最新作。航空計器を思わせるシンプルな表示と大きな針は、初代から変わらない特徴だ。自動巻き、SSケース、ケース径40㎜。¥792,000
▼詳細はこちら
https://www.iwc.com/jp/ja/watch-collections/pilot-watches/iw328201-pilot_s-watch-mark-xx.html
ポルトギーゼ・オートマティック40
ベゼルを細くデザインすることでドレッシーな雰囲気にまとめ、ダイヤルの面積を広げることで視認性を高めた。あえてインデックスを小ぶりにすることで、優美なリーフ針の存在感が高まる。6時位置のスモールセコンドもダイヤルの縁に沿うように収まっており端正なバランスを崩していない。シースルーバックからは自社製のCal.82200を鑑賞できる。自動巻き、SSケース、ケース径40㎜。¥1,023,000
▼詳細はこちら
https://www.iwc.com/jp/ja/watch-collections/portugieser/iw358304-portugieser-automatic-40.html
ポートフィノ・オートマティック 37
インデックスに12粒のダイヤモンドをセッティングし、さりげない華やかさを楽しめるドレッシーウォッチ。女性にはやや大きめの37㎜ケースなので、凛とした雰囲気を腕元に宿すことができる。一方男性でも、このサイズなら手首とのバランスもよい。ドレスアップの腕元に映える時計となるだろう。自動巻き、SSケース、ケース径37㎜。¥665,500
▼詳細はこちら
https://www.iwc.com/jp/ja/watch-collections/portofino/iw458102-portofino-automatic-37.html
writer-篠田 哲生
1975年千葉県生まれ。2002年に独立し、時計記事の取材や執筆を始める。
時計学校を修了し、スイスやドイツへの取材経験も豊富。
近著の「教養としての腕時計選び」(光文社新書)は、韓国と台湾でも翻訳版が出版された。