こんにちは、ライターのカツセマサヒコです。
先日、友人の結婚式の余興でバンド演奏をしたのですが、パートがカスタネットだったのに「ヘタ」って言われました。どうしていいかわからない。
ところで、チャペルなどで行う結婚式ではオルガンや聖歌隊がBGMを奏でてくれますが、神社や神殿で行う和の結婚式では「雅楽(ががく)」と呼ばれる邦楽器の音色が式をより厳かにしてくれるそうです。
僕は神前式の結婚式に一度も出席したことがないので、「和のめでたい音楽」と言われると勝手に盆踊りみたいなものをイメージしているのですが、どうやらこれは完全に間違っているとのこと。
じゃあいったいどんな楽器でどんなことやってんのよ? と思ったので、今回は実際に結婚式場などで雅楽を演奏している人に会って、どんな楽器なのか聞いてみることにしましたー!!
今回、雅楽について語っていただくのは清田裕美子さんです! 清田さんは習い事として雅楽を始めて、今は本格的に勉強するために音楽学校に通っているのだそうです。
雅楽で使われる楽器の種類は結構多い
ーー清田さん、よろしくお願いします!
よろしくお願いします!
ーーさっそく伺いたいんですけど、雅楽ってなんですか?
雅楽は古くに、
ーーオーケストラっていうといろんな楽器があるイメージですけど。
たとえば旋律楽器でメインとされるのは、「横笛(おうてき)」と「篳篥(ひちりき)」です。横笛にも三種類あって、その中でも結婚式によく使う「龍笛(りゅうてき)」のほか、「高麗笛(こまぶえ)」「神楽笛(かぐらぶえ)」があります。
ーーリコーダーにソプラノやアルトがあるのと同じ感じですか......?
正確には違うんですけど、いろいろな種類があるという意味では近いでしょうか。笛にはほかにも「笙(しょう)」があります。
ーーやばい、すでに多すぎて理解できない。
ちなみに、雅楽でよく皆さんが目にするオーソドックスな編成は、龍笛3人、篳篥3人、笙3人、「打ちもの」と称される打楽器3人と、琵琶2人、箏(そう)2人です。もちろんこれ以外の編成もいろいろあります。
踊りもできる! オールマイティな雅楽演奏者たち
ーー清田さんはどのパートを担当しているんですか?
結婚式では、メインは「龍笛」ですね。でも笛以外に、糸もの、
これが「龍笛(りゅうてき)」。約40センチ程度で、「高麗笛(こまぶえ)」「神楽笛(かぐらぶえ)」の中間の大きさになる。雅楽では主旋律を奏でることが多い重要なパートのひとつ。
ーー全部のパートができるって、オーケストラを一人で全部できちゃうってことですか?
雅楽を演奏する「楽師(がくし)」は、横笛、篳篥、笙から一つと、琵琶・箏から一つと、2種類の「舞(まい)」から一つ、そして「歌もの」を学ぶ必要があるんです。
ーーえ? じゃあ清田さんも、演奏もできれば踊りもできるってことですか?
はい、そういうことになります。
ーーすごいな......! 習得する順番みたいのはあるのでしょうか?
私の場合は、笛→打楽器を表す「打ちもの」→弦楽器を表す「糸もの」→舞という順番でしたね。一番オーソドックスかと思います。
ーーそれだけ覚えることが多いと正直、やめたくなりません? めちゃくちゃしんどそうですし。
辞めたいと思うことはなかったのですが、
ーーあと、なんかそういう楽器ってめちゃくちゃ高いイメージがあるんですけど。
洋楽器やピアノなどと比べると、龍笛はそれほどでもありません。
ーーえ、いくらぐらいなんですか?
高くても40万円前後でしょうか。
ーー高い。感覚がおかしい。
ーー50万! そんな大金あったら1カ月くらい会社休みたいんですけど。
雅楽器の中で比較的高いのは笙で、高いものだと200~300万とかいうものもあると聞いたことがあります。ヴィンテージをあらわす「古管」になるとまた値段があがって、
ーー淡々と話されてますけど、結構すごい話だと思いますよそれ......。
「漠然と横笛(よこぶえ)に憧れて」始める雅楽の世界
ーーどういった経緯で雅楽と出会ったんですか?
子どものころから和のものが好きで、なんとなく日本の横笛(よこぶえ)に憧れていたんです。そういう意味では、
ーーえ、もっと「プロになる!」とか意識高めな理由があるのかと思いました。
いえ全然(笑)。雅楽の稽古場をいくつか見学させていただき、あるところに通うことにしたのですが、そこが本格的なところでして、最初は週に1回通っていたはずだったのに、いつのまにか稽古の日が増えていって、練習をしているうちに、お仕事を頂くようになりました。
ーーあっさり言ってますけど、明らかに才能あったんでしょうね......。
そこから「もっと勉強したい」と思うようになって、今は学校に通っています。
ーー子どものころから和が好きって時点で、ちょっと変わった子どもだったんじゃないですか?
家が昔、お茶の稽古場をしていて、茶室もあって、着物とかもあったんです。装束とかも好きでしたし、そういった環境が身近にあったので、和のものは好きだったのかなと思います。
ーーまず家に茶室があるって時点で何か違う。うちなんて茶室くらいの敷地面積に住んでたのに......。
うちの茶室は本当に小さいものでしたよ?(笑)
結婚式のときの演奏はめちゃくちゃシビア
ーー結婚式中、雅楽はずっと演奏しっぱなしなんですか?
いえいえ!
ーーお、案外短いですかね? そもそもどんなタイミングで演奏しているんですか?
よくあるホテルでの結婚式だと、
・新郎新婦の入場のとき
・三三九度のとき
・親族固めの杯のとき
・玉串拝礼(新郎新婦が榊を神前におそなえする)とき
・式が終わるとき
の5~6ポイントぐらいです。
ーー結構多いですね。
最初は、奏楽するときは本当に緊張しました。だいたい神前式で奏楽する曲は、
ーーミスできないですもんね?
演奏がどうこうよりも、式の妨げにならないようにするのが大切なんです。
神前式では、少人数での奏楽がほとんどですが、
ーーなにその日本人的すぎる感じ。
そうですね(笑)。空気を読むのに集中する必要があるから、
ーー何回練習してもできる気がしないですよ、それ。
せっかくなので、実際に吹いているところを見せてもらいました。
「この音、聞いたことあるやつだ!!」 って、一音目でわかる。
雅楽が多くの人に届くような演奏活動をしていきたい
ーー今は学校に通っているとのことですけど、卒業されたらどうされるんですか?
今も積極的に現代音楽や空間を作る活動をしているのですが、
ーー確かに、若い人たちには雅楽ってあんまり浸透してないイメージがありますね......。
そうですそうです、そこのハードルを下げる活動をしたいと思っています。雅楽に限らず、
ーーやっぱり危機意識はみなさんお持ちなんですね。
そうです。聞いてくれる人がいて、「価値がある」と思ってお金を払ってくれる人がいないと、古典芸能は衰退していく一方だと思います。雅楽は格式のあるものですが、伝統やしきたりを壊すことではなく、まずは聞くことへのハードルを下げて、多くの人に興味をもって頂きたいと思っているところです。
ーーVJなどとコラボして現代アート的な作品を制作したら、若い人にも刺さりそうですよね? そういう活動だったら全然シェアされていきそうな気がするんですけどねえ......。
これから頑張りどころだと思います。応援して頂けるようにがんばります!
こうして取材が終了しました。
僕も取材するまで雅楽って言葉自体、馴染みがほとんどないものだったんですけど、でもこうして人知れず危機に瀕している文化ってまだまだたくさんあるんだろうなあと思った次第でした。
これから和装の結婚式に参列する予定がある方、ぜひ出席した際にはこの記事のことを思い出していただければと思います。
清田さん、ありがとうございましたー!
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