【私たちの知らない世界】和の結婚式で演奏される「雅楽」がどんなものか聞いてみた
2025/07/08 更新
この記事は2016年にKekoon powered by マイナビウエディング にて配信されたものです
こんにちは、ライターのカツセマサヒコです。
先日、友人の結婚式の余興でバンド演奏をしたのですが、パートがカスタネットだったのに「ヘタ」って言われました。どうしていいかわからない。
ところで、チャペルなどで行う結婚式ではオルガンや聖歌隊がBGMを奏でてくれますが、神社や神殿で行う和の結婚式では「雅楽(ががく)」と呼ばれる邦楽器の音色が式をより厳かにしてくれるそうです。
僕は神前式の結婚式に一度も出席したことがないので、「和のめでたい音楽」と言われると勝手に盆踊りみたいなものをイメージしているのですが、どうやらこれは完全に間違っているとのこと。
じゃあいったいどんな楽器でどんなことやってんのよ? と思ったので、今回は実際に結婚式場などで雅楽を演奏している人に会って、どんな楽器なのか聞いてみることにしましたー!!

今回、雅楽について語っていただくのは清田裕美子さんです! 清田さんは習い事として雅楽を始めて、今は本格的に勉強するために音楽学校に通っているのだそうです。
先日、友人の結婚式の余興でバンド演奏をしたのですが、パートがカスタネットだったのに「ヘタ」って言われました。どうしていいかわからない。
ところで、チャペルなどで行う結婚式ではオルガンや聖歌隊がBGMを奏でてくれますが、神社や神殿で行う和の結婚式では「雅楽(ががく)」と呼ばれる邦楽器の音色が式をより厳かにしてくれるそうです。
僕は神前式の結婚式に一度も出席したことがないので、「和のめでたい音楽」と言われると勝手に盆踊りみたいなものをイメージしているのですが、どうやらこれは完全に間違っているとのこと。
じゃあいったいどんな楽器でどんなことやってんのよ? と思ったので、今回は実際に結婚式場などで雅楽を演奏している人に会って、どんな楽器なのか聞いてみることにしましたー!!

今回、雅楽について語っていただくのは清田裕美子さんです! 清田さんは習い事として雅楽を始めて、今は本格的に勉強するために音楽学校に通っているのだそうです。
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雅楽で使われる楽器の種類は結構多い
よろしくお願いします!
ーーさっそく伺いたいんですけど、雅楽ってなんですか?
雅楽は古くに、主にシルクロードや中国などを経て大陸から伝わってきた古典芸能の一つなのですが、改めて聞かれるとどこから話せばいいかわからないのですね......。「世界最古のオーケストラ」と称されることもありますが、和製のオーケストラに近いイメージと考えてもらえればと思います。
ーーオーケストラっていうといろんな楽器があるイメージですけど。
洋楽のオーケストラにパーカッションやヴァイオリンなどがあるように、雅楽にも打楽器や弦楽器など、いくつか種類があるんです。
たとえば旋律楽器でメインとされるのは、「横笛(おうてき)」と「篳篥(ひちりき)」です。横笛にも三種類あって、その中でも結婚式によく使う「龍笛(りゅうてき)」のほか、「高麗笛(こまぶえ)」「神楽笛(かぐらぶえ)」があります。
ーーリコーダーにソプラノやアルトがあるのと同じ感じですか......?
正確には違うんですけど、いろいろな種類があるという意味では近いでしょうか。笛にはほかにも「笙(しょう)」があります。
ーーやばい、すでに多すぎて理解できない。
ちなみに、雅楽でよく皆さんが目にするオーソドックスな編成は、龍笛3人、篳篥3人、笙3人、「打ちもの」と称される打楽器3人と、琵琶2人、箏(そう)2人です。もちろんこれ以外の編成もいろいろあります。

踊りもできる! オールマイティな雅楽演奏者たち
結婚式では、メインは「龍笛」ですね。でも笛以外に、糸もの、打ち物、舞などすべてやります。

これが「龍笛(りゅうてき)」。約40センチ程度で、「高麗笛(こまぶえ)」「神楽笛(かぐらぶえ)」の中間の大きさになる。雅楽では主旋律を奏でることが多い重要なパートのひとつ。
ーー全部のパートができるって、オーケストラを一人で全部できちゃうってことですか?
雅楽を演奏する「楽師(がくし)」は、横笛、篳篥、笙から一つと、琵琶・箏から一つと、2種類の「舞(まい)」から一つ、そして「歌もの」を学ぶ必要があるんです。

ーーえ? じゃあ清田さんも、演奏もできれば踊りもできるってことですか?
はい、そういうことになります。
ーーすごいな......! 習得する順番みたいのはあるのでしょうか?
私の場合は、笛→打楽器を表す「打ちもの」→弦楽器を表す「糸もの」→舞という順番でしたね。一番オーソドックスかと思います。
ーーそれだけ覚えることが多いと正直、やめたくなりません? めちゃくちゃしんどそうですし。
辞めたいと思うことはなかったのですが、しんどいことはあります。オーケストラと違って、雅楽の演奏会は譜面を見ないことが多いので、すべての曲を暗譜しなくてはならないのです。暗譜するために、常に譜面のメモをポケットに入れています......。
ーーあと、なんかそういう楽器ってめちゃくちゃ高いイメージがあるんですけど。
洋楽器やピアノなどと比べると、龍笛はそれほどでもありません。
ーーえ、いくらぐらいなんですか?
高くても40万円前後でしょうか。
ーー高い。感覚がおかしい。
ピアノやヴァイオリンなどに比べたら安いかと思いますよ(笑)。数百万から数千万の楽器を使っている学生もおりますし。ヴァイオリンの弓などは、50万以上するようなものも普通に使ってるみたいです
ーー50万! そんな大金あったら1カ月くらい会社休みたいんですけど。
雅楽器の中で比較的高いのは笙で、高いものだと200~300万とかいうものもあると聞いたことがあります。ヴィンテージをあらわす「古管」になるとまた値段があがって、かつて、一本500~600万程度もの値がついたこともあるらしい、と噂を聞いたことがあります。
ーー淡々と話されてますけど、結構すごい話だと思いますよそれ......。
「漠然と横笛(よこぶえ)に憧れて」始める雅楽の世界
子どものころから和のものが好きで、なんとなく日本の横笛(よこぶえ)に憧れていたんです。そういう意味では、雅楽は子供のころから興味がありましたが、最初は能楽の能管と龍笛で迷いました。単に横笛に興味があったのです(笑)。
ーーえ、もっと「プロになる!」とか意識高めな理由があるのかと思いました。
いえ全然(笑)。雅楽の稽古場をいくつか見学させていただき、あるところに通うことにしたのですが、そこが本格的なところでして、最初は週に1回通っていたはずだったのに、いつのまにか稽古の日が増えていって、練習をしているうちに、お仕事を頂くようになりました。
ーーあっさり言ってますけど、明らかに才能あったんでしょうね......。
そこから「もっと勉強したい」と思うようになって、今は学校に通っています。
ーー子どものころから和が好きって時点で、ちょっと変わった子どもだったんじゃないですか?
家が昔、お茶の稽古場をしていて、茶室もあって、着物とかもあったんです。装束とかも好きでしたし、そういった環境が身近にあったので、和のものは好きだったのかなと思います。
ーーまず家に茶室があるって時点で何か違う。うちなんて茶室くらいの敷地面積に住んでたのに......。
うちの茶室は本当に小さいものでしたよ?(笑)
結婚式のときの演奏はめちゃくちゃシビア
いえいえ!1曲だいたい数分で、何曲か吹く形です。
ーーお、案外短いですかね? そもそもどんなタイミングで演奏しているんですか?
よくあるホテルでの結婚式だと、
・新郎新婦の入場のとき
・三三九度のとき
・親族固めの杯のとき
・玉串拝礼(新郎新婦が榊を神前におそなえする)とき
・式が終わるとき
の5~6ポイントぐらいです。
ーー結構多いですね。
最初は、奏楽するときは本当に緊張しました。だいたい神前式で奏楽する曲は、どこの会場でもだいたい決まっているんですが、それでも緊張しましたね。
ーーミスできないですもんね?
演奏がどうこうよりも、式の妨げにならないようにするのが大切なんです。
神前式では、少人数での奏楽がほとんどですが、実際の雅楽の演奏は最低でも16人以上となり、指揮者はいません。クラシックだと指揮者がリードする比重が高いと思いますが、雅楽の場合は、打ち物が主にリードするものの、やはりみんなで息を合わせて演奏するんです。指揮者は誰もいなくて、それでもぴったり合っていますよね。あれってお互い空気を読んでいるんです。
ーーなにその日本人的すぎる感じ。
そうですね(笑)。空気を読むのに集中する必要があるから、譜面をみないで暗譜するのかもしれません。ただ、空気を読むって言ってもアイコンタクトはまずない。肩の動きとか、呼吸の動きを横目で見て判断するしかないんです。
ーー何回練習してもできる気がしないですよ、それ。

せっかくなので、実際に吹いているところを見せてもらいました。
「この音、聞いたことあるやつだ!!」 って、一音目でわかる。
雅楽が多くの人に届くような演奏活動をしていきたい
今も積極的に現代音楽や空間を作る活動をしているのですが、卒業してからも、これまでどおり、古典を大切にすると共に、色んな分野の方々とも協力して、現代だからこそできるクロスオーバーな音楽や空間を作って行きたいと思っています。そして、もうちょっと雅楽や古典芸能に対して抵抗なく見てくれる人が増えたらいいなと思っているんです。
ーー確かに、若い人たちには雅楽ってあんまり浸透してないイメージがありますね......。
そうですそうです、そこのハードルを下げる活動をしたいと思っています。雅楽に限らず、古典芸能全般に言えることかと思いますが、今でも人気のある歌舞伎ですら、未来を危惧されておられる方々もいるようです。
ーーやっぱり危機意識はみなさんお持ちなんですね。
そうです。聞いてくれる人がいて、「価値がある」と思ってお金を払ってくれる人がいないと、古典芸能は衰退していく一方だと思います。雅楽は格式のあるものですが、伝統やしきたりを壊すことではなく、まずは聞くことへのハードルを下げて、多くの人に興味をもって頂きたいと思っているところです。
ーーVJなどとコラボして現代アート的な作品を制作したら、若い人にも刺さりそうですよね? そういう活動だったら全然シェアされていきそうな気がするんですけどねえ......。
これから頑張りどころだと思います。応援して頂けるようにがんばります!

こうして取材が終了しました。
僕も取材するまで雅楽って言葉自体、馴染みがほとんどないものだったんですけど、でもこうして人知れず危機に瀕している文化ってまだまだたくさんあるんだろうなあと思った次第でした。
これから和装の結婚式に参列する予定がある方、ぜひ出席した際にはこの記事のことを思い出していただければと思います。
清田さん、ありがとうございましたー!
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