恋人よりも、自分を理解してくれる存在がいる『男ともだち』『見上げてごらん』『恒星の向こう側』
2026/10/29 更新
松岡茉優と成田凌が共演した『男ともだち』
離れて暮らしているのに、なぜか心が通じ合う人がいる。一緒にいるパートナーや仕事仲間よりも、深く自分のことを理解してくれている。影響力がとても強く、自分が自分らしくあるための唯一無二の存在だと言っていいだろう。
そんな不思議な関係性を描いた映画が、この秋には相次いで公開される。松岡茉優と成田凌が大学時代の先輩後輩を演じた『男ともだち』(11月6日公開)、森田剛と松本まりかが別居中の夫婦に扮した『見上げてごらん』(10月30日公開)、映画監督として国際的に知られる河瀬直美と若手女優の福地桃子が昨年の東京国際映画祭で最優秀女優賞をダブル受賞した『恒星の向こう側』(10月30日公開)だ。
常識では割り切れない、おかしな人間関係を描いた話題作の見どころを伝えたい。
そんな不思議な関係性を描いた映画が、この秋には相次いで公開される。松岡茉優と成田凌が大学時代の先輩後輩を演じた『男ともだち』(11月6日公開)、森田剛と松本まりかが別居中の夫婦に扮した『見上げてごらん』(10月30日公開)、映画監督として国際的に知られる河瀬直美と若手女優の福地桃子が昨年の東京国際映画祭で最優秀女優賞をダブル受賞した『恒星の向こう側』(10月30日公開)だ。
常識では割り切れない、おかしな人間関係を描いた話題作の見どころを伝えたい。
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壊したくない関係性『男ともだち』
学生時代と同様、仲良くラーメンをすする神名(松岡茉優)とハセオ(成田凌)
京都在住のイラストレーター・神名葵(松岡茉優)はもうすぐ30歳を迎える。仕事はまずまず順調で、恋人の彰人(井上祐貴)と同棲しながら、アルバイトをしていた頃に知り合った医師の真司(中島歩)とも関係を持っていた。真司には妻子がいる。
イラストの締切り前は徹夜での作業が続き、彰人とは別々の部屋で寝るようになっていた。神名の仕事を応援してくれている彰人だが、ふたりの間の溝は次第に深まりつつあった。かと言って、エリート医師である真司の家庭を壊すつもりもなかった。このままの生活を続けてもいいのだろうか? ふと疑問を感じるようになった神名は、大学卒業以来となるサークルの先輩・ハセオ(成田凌)と再会する。
大学時代、一番仲のよかったハセオとは、いつでも胸の内を開いて話すことができた。久々に会っても、ハセオとの関係性は昔のままだった。
以前からハセオと神名を知る仲間たちは、不思議がっている。ハセオは異性にモテるタイプなのだが、なぜか神名とは一度も寝たことがなかったからだ。神名にとってハセオは、昔も今も最高の「男ともだち」だった
こじらせ系ヒロインがハマる松岡茉優
妻子持ちの医師・真司(中島歩)と神名は不倫の関係にある
神名はいろんな男たちと交際してきたが、それは男性に対する不信感の裏返しだった。神名は幼少期にトラウマを抱える出来事があった。そのため神名は、SEXや男性に対する幻想を持つことができずにいた。
男と女が懇意になれば、SEXするもの。そんな世間的な常識から、神名とハセオは離れた関係にある。ブレイク作『勝手にふるえてろ』(2017年)をはじめ、松岡茉優はこじらせたヒロイン役がすごくハマる。成田凌も『愛がなんだ』(2019年)などで無邪気さと繊細さを併せ持つキャラを得意としている。松岡茉優と成田凌だからこそ、映画化できた企画だと言っていいだろう。
肌を触れ合うことで関係性が深まる恋人たちもいれば、SEX抜きで理解し合える関係性があってもおかしくはないはずだ。
ハセオは変わりもののオオカミなのか?
福岡市在住の画家・田中千智さんが描いた『赤ずきんとオオカミ』が印象的に使われている
神名が描いた『赤ずきんとオオカミ』のオオカミは、赤ずきんを食べようとする捕食者ではなく、世間知らずの赤ずきんを外敵から守ろうとする守護者のように感じられる。主人公たちの姿が投影された一枚ではないだろうか。
神名が描いた赤ずきんとオオカミのように、男と女の関係性ももっと自由で開放的なものであってもいいのかもしれない。そんなことを考えさせる映画だ。
神名にとってハセオ、ハセオにとっての神名は、お互いに「幻想」のような存在かもしれないが、誰しも人間にはそんな「幻想」的な一面もあるのではないだろうか。離れて暮らしているからこそ、幸せな関係性をふたりは保っているのかもしれない。
森田剛が漫画家アシスタントを演じる『見上げてごらん』
42歳になっても漫画家のアシスタントを続ける輝一(森田剛)
土屋輝一(森田剛)は現在42歳。誰よりも漫画を愛し、漫画家を目指して漫画の世界へと身を投じた。しかし、自分の連載漫画を発表することはなく、大御所漫画家・吉住(武田鉄矢)の右腕的な存在となっている。画力のある輝一がアシスタントたちを束ね、無茶なスケジュールもなんとかクリアすることができていた。
プロのアシスタントとしてプライドを持つ輝一だが、後輩アシスタントが連載デビューを果たすと「こんなのを描くくらいなら、一生アシスタントでいいね」と毒づく。平静さを装っているつもりの輝一だが、内面では嫉妬心は人一倍強い。しかし、自分のオリジナル作を描くことができないままだった。
輝一がアシスタント業を黙々と続けてきたのには理由があった。別居中の妻・莉花(松本まりか)との間にひとり娘のひかり(早瀬憩)がおり、ひかりを育てるために安定した収入が得られるアシスタント業に従事してきたのだ。だが、高校進学を控えたひかりはすでに親離れの時期を迎えようとしていた。
夢の追求か、家族が優先かという現実的な選択肢
輝一の長所と短所を理解する妻の莉花(松本まりか)と娘のひかり(早瀬憩)
たまに会うと「夢を叶えることがそんなに大事なの?」と輝一がいつも絡んでくるため、莉花は辟易してしまう。恋愛していた時期は、魅力的に思えていたパートナーの個性が、今では悩みの種となっている。
すでに壊れてしまっている夫婦関係だが、輝一の持つ才能と性格を誰よりも理解しているのが莉花でもある。40代になった輝一は、漫画編集者の潮田ユキ(森川葵)と組み、新しい連載漫画の企画を立ち上げることになる。遅咲きの輝一が漫画家として一本立ちできるかどうか、莉花やひかりならずとも応援したくなるに違いない。
漫画の世界を舞台にした『見上げてごらん』は、森本晶一監督と佐藤快磨監督の共同作だ。ふたりとも是枝裕和監督、西川美和監督らが立ち上げた映像制作集団「分福」のメンバー。是枝監督の『万引き家族』(2018年)などの助監督を森本監督は長年務め、本作で監督デビューとなる。佐藤監督は『泣く子はいねぇが』(2020年)で監督デビューし、本作が2作目。これからも映画界でやっていけるのかどうかというヒリヒリした想いを、輝一に託した形で両監督は映画として撮り上げている。
自分の夢を追うべきか、それとも家庭を優先するべきか? 輝一が抱える悩みは、決して他人事ではないだろう。
他人には分からない母娘の関係『恒星の向こう側』
東京国際映画祭で最優秀女優賞を共同受賞した『恒星の向こう側』の福地桃子と河瀬直美
舞台演出家の登志蔵(寛一郎)と同棲している未知(福地桃子)は妊娠中だったが、母親に愛された記憶がないため、自分がうまく母親になれるのか自信を持てずにいた。そんなとき、故郷の奈良で暮らす母親の可那子(河瀬直美)が病気で倒れたと知らされる。末期がんだった。
実家に帰り、可那子の介護をしようとする未知だが、シングルマザーとして未知を育てた可那子は実の娘の世話になることを拒絶する。久しぶりに再会しても、母娘の溝は埋まらないままだった。
奈良でロケ撮影された神話的な物語
演出家の登志蔵(寛一郎)は、未知と可那子の濃厚な関係性に驚きを覚える
ふたりの様子が気になり、東京から登志蔵が現れるが、女同士の濃厚なやりとりの中には迂闊には踏み込むことができない。地球からは月の裏側が見えないように、登志蔵はそれまで知らなかった未知の意外な一面を目撃することにもなる。どこに地雷があるか分からない3人の関係性は、サスペンスドラマさながらの緊張感が漂う。
奈良でのロケシーンには、シカがたびたび登場し、どこか神話的な雰囲気すら感じさせる。クライマックスで、未知は可那子と共に若草山から夕陽を眺めることになる。ここで可那子は意外な行動を見せるが、これは脚本にはなく、撮影現場でのアドリブだったそうだ。あれだけ火花を散らし合っていたふたりの女たちが、深い根の部分でつながっていることが伝わってくる。
人間には、親しい人ほど普段は見せない意外な一面がある。そんな一面を知ると、世界がそれまでとはずいぶん違ったものに見えてくるはずだ。さまざまな人間関係があることを教えてくれるのも、映画を観る楽しみのひとつではないだろうか。
作品DATA
原作/千早茜 脚本/澤井香織 音楽/安川午朗 監督/三島有紀子
出演/松岡茉優、成田凌、井上祐貴、中島歩、咲妃みゆ、三浦貴大、辻凪子、中山求一郎、比喩根、余貴美子、池畑慎之介
配給/ハピネットファントム・スタジオ 11月6日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
(C)2026『男ともだち』製作委員会
https://happinet-phantom.com/otokotomodachi/
『見上げてごらん』
監督/森本晶一、佐藤快磨 原案・脚本/森本晶一 音楽/池永正二
出演/森田剛、森川葵、川上友里、阿部寛、松本まりか、武田鉄矢、早瀬憩、前田航基、吉田晴登、伊島空、上田遥、岩橋道子、金光泰市、愛理、祷キララ、坂口辰平、松澤匠、真田理希、神谷圭介、四宮義斗、真織、乃木涼介、牧亮佑、友咲まどか、おかやまはじめ、猪股俊明、木村真奈美、小倉早貴、かんこ、五頭岳夫、小林きな子
配給/ギャガ 10月30日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー
(C)2026「見上げてごらん」製作委員会
https://gaga.ne.jp/miagetegoran/
『恒星の向こう側』
監督・脚本・編集/中川龍太郎 音楽/haruka nakamura
出演/福地桃子、河瀬直美、寛一郎、朝倉あき、南沙良、三浦貴大、久保史緒里、中尾幸世
配給/NAKAMICHI 10月30日(金)より日比谷TOHOシネマズシャンテ、kino cinema新宿ほか全国公開
(C)2025 映画「恒星の向こう側」製作委員会
https://nakachikapictures.com/kosei-no-mukogawa
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