時計は社会生活に欠かせない道具だが、“人生という時間”を可視化する役割もある。つまり時計とは、ふたりで過ごした思い出を刻んでいくものでもあるのだ。だから結婚という人生の大きな節目に、素敵な時計を手に入れたい。
それはふたりで歩むこれからの時間を、大切にしていきたいという意思表明になるだろう。
マニュファクチュール体制を構築したパイオニア精神

良好な関係を築き、それを長く維持していくためには、何よりも“誠実さ”が求められる。しかし誠実さは数値化できるものではないので、結局は行動と態度で示すしかない。細かなところまで丁寧に。誠実さとは小さな物事の積み重ねなのだ。
そう、時計の話である。
LONGINES(ロンジン)はスイス時計産業近代化させた名門ブランドである。
創業は1832年。当時の時計にはふたつの種類があった。王侯貴族のためにお抱え時計師が製作する懐中時計は、もはや“美術工芸品”の位置に達していた。一方で富裕層や上流市民が使用する懐中時計は、自宅を作業場とする時計師が専門業者から部品を購入して製品に仕上げ、それを時計会社が販売していた。後者の時計も十分にハイレベルだったが、属人性が高いため品質が安定せず、メンテナンスなども苦労した。
そういった問題点を解決したのが、LONGINES(ロンジン)だった。

1852年に叔父から時計製造販売の会社を受け継いだアーネスト・フランシロンは、サンティミエという村のレ・ロンジンという場所に巨大な時計工場を設立し、時計師を雇い入れ、時計の企画、設計、パーツ製造、組み立て、出荷のすべてをひとつの建物の中で行うシステムをつくりあげた。共通のパーツを使ってムーブメントをつくれば、品質レベルは上がる一方でコストは下がる。故障しやすい場所がわかれば改良できるし、修理も容易になるため、さらなる品質向上が可能になる。
現在では多くの時計ブランドがこういった“マニュファクチュール(自社一貫製造)”体制を整えているが、その先駆けとなったのが、工場の場所を後に社名とした「LONGINES(ロンジン)」だったのだ。
誰もが認める技術でスイスを代表する存在へ

スイスでいち早くマニュファクチュール体制を整えたLONGINES(ロンジン)は、圧倒的な品質力で時計業界を席巻する。最先端の技術があつまる万国博覧会にて多くのメダルを獲得し、天文台主催の精度コンクールで好成績を収める。
こういった積み重ねた実績が評価され、アスリートの真剣勝負を記録するスポーツ計時のパートナーにも選ばれ、現在もホースレース、スキーなどのオフィシャルタイムキーパーを務める。またその堅牢な時計は多くの冒険家からも愛され、パイロットウォッチのパイオニアとしても知られている。
先進的なビジネスセンスと、技術に裏打ちされた優れた性能をもつLONGINES(ロンジン)は、常にスイス時計を代表する存在であり続けた。しかもサンティミエの本社工場は、一度も場所を変えることなく増改築を繰り返すかたたちで進化発展してきた。貴重な資料や設計図、金型などが散逸せずに保管されている。そのため過去モデルの復刻をする際にもデザインだけでなく、その空気感も含めて蘇らせることができるのだ。
誠実さをまとう数々のモデル
時計産業を近代化し、その品質と性能で人類史に残る出来事をサポートしてきたLONGINES(ロンジン)は、スイスを代表する誠実な時計ブランドといえるだろう。ではその魅力はどのモデルで体感すべきか?
まずは、LONGINES(ロンジン)の時計製造の歴史を継承する「ロンジン マスターコレクション」をお勧めしたい。上質なデザインはスイス時計の王道であり、誰が見ても美しいと感じる華やかなオーラがある。

LONGINES(ロンジン)のヘリテージモデルの妙味を楽しむなら、所謂復刻モデルがおすすめ。「ロンジン レジェンドダイバー」は、歴史を継承するモデルで、ダイバーズウォッチにインナーベゼル式を採用したことで、全体的なデザインがエレガントにまとまっているのが魅力だ。

メンズモデルは他にもクロノグラフやモダンなダイバーズウォッチなど幅広くコレクションを揃えるが、レディスウォッチの充実もかなりのもの。技術力を生かして小型ムーブメントを開発し、女性用ウォッチに搭載してきたという歴史が、いまもアールデコ様式のデザインに生かされている。中でも「ミニ ドルチェヴィータ」は、直線と曲線を巧みにとり入れたタイムレスな美しさが特徴となる。

LONGINES(ロンジン)の時計は、奇をてらうことなく、実直に作られている。いい意味で“普通”なのは、スイス時計の歴史を切り開いてきた存在であるから。LONGINES(ロンジン)をまとうということは、普遍をまとうということ。誠実さが腕元からにじみ出てくる時計がここにある。
篠田哲生セレクトウォッチ
ロンジン マスターコレクション

2022年の創業190周年という節目に生まれたドレッシーウォッチのデザインを採用。シンプルなシルバーダイヤルに彫り仕上げ風のアラビア数字インデックスを組み合わせ、視認性に優れるブルーの針も伝統的なデザインとなる。ケース径は38.5㎜と小ぶりなのでシャツの袖口にもすっと馴染む。自動巻き、SSケース、ケース径38.5㎜。¥378,400
▼詳細はこちら
https://www.longines.com/jp/p/watch-longines-master-collection-l2-843-4-73-2
ロンジン レジェンドダイバー

1950年代に誕生したダイバーズウォッチを復刻。2時位置のリューズでインナーベゼルを操作する仕組みのため、外側にあるベゼルが細くなり、300m防水の本格派ながらエレガントな雰囲気に。カレンダーをつけないことでオリジナルモデルの雰囲気を強め、完成度を高めている。自動巻き、SSケース、ケース径39㎜。¥526,900
▼詳細はこちら
https://www.longines.com/jp/p/watch-longines-legend-diver-l3-764-4-50-7
ミニ ドルチェヴィータ

1927年に生まれた伝説的なモデルからインスピレーションを得たもので、直線と曲線を組み合わせたケースデザインは、当時流行していたアールデコ様式から影響を受けている。ブレスレットの仕上げも細かく、光を受けてキラッと輝くことで、アクセサリーのように腕元を華やがせる。クオーツ、SSケース、ケース縦29×横21.5㎜。¥289,300
▼詳細はこちら
https://www.longines.com/jp/p/watch-longines-mini-dolcevita-l5-200-4-71-6
writer-篠田 哲生
1975年千葉県生まれ。2002年に独立し、時計記事の取材や執筆を始める。
時計学校を修了し、スイスやドイツへの取材経験も豊富。
近著の「教養としての腕時計選び」(光文社新書)は、韓国と台湾でも翻訳版が出版された。