――まずは6月までオンエアされていたドラマ『マイファミリー』のお話から。宝塚歌劇団では月組トップスターとして活躍されて、昨年退団。その後、初めてのドラマ出演でしたが、最終回では珠城さん演じる「亜希」が話題になりました。
ありがたいことにたくさんの反響をいただいて、素直にとてもうれしいです(笑)。最終話の台本は撮影の直前にいただいたのですが、5年前に失踪した「亜希」がどういう秘密を持っているかについては、はじめにプロデューサーから聞いていたんですね。なので、最後の撮影までは、ドラマでは描かれない“亜希の5年間”を想像して気持ちを作っていく日々でした。
――初めての映像作品、さらに最終回にキーとなるお役を演じるということで、戸惑いはありませんでしたか。
それが、私は宝塚に在団中、“芝居がナチュラルすぎる”と言われることが多かったんです(笑)。もちろん舞台では誇張して演じることも大切なのですが、リアルな心情はちょっとした目の動きなどで表現したいという気持ちがあって、そこはこだわっていました。だから実際にドラマの現場に入ってみて、舞台は「観客に」、映像は「対面している相手に」感情を伝えるというカタチこそ違うけれど、根本的な役の作り方や表し方については“そんなに変わらないんだな”と分かって。それは得難い経験になりましたね。
――初めての体験を、とてもいい状態で楽しめたのですね。
リアルなセットや小道具も役の感情を動かしてくれて、その中で“生きる”というのは、舞台とはまた違う、心が震える感覚でした。今後も機会をいただけたら、ぜひ映像作品に出たいと思いましたし、同時に、舞台ももっとやりたいと思ったんですよ。役の人生を生きているときは驚くようなことが言えたり、思い切った行動が出来たりする。知らない自分に出会えるというのが、役者の醍醐味だなと改めて感じたんです。
――そして次回作は、舞台『8人の女たち』。フランソワ・オゾン監督の映画版でも有名な本作で、珠城さんは謎めいた女性、ピエレットを演じます。
映画版を観て思ったのは、まずミステリアスで達観したところのある女性だなと。でもどこか愛に飢えていて、いつも誰かを愛し、愛されたい……相手の性別にかかわらず、“人”に対して興味を持つ人なんだなと感じました。当時(2002年公開)の映画にしては大胆に描かれていることにも驚くのですが、映画版のファニー・アルダンさんがとても素敵に演じられていたので、そのイメージも取り入れたいですね。“女たち”のやりとりも、それぞれが強がっているようで実は弱かったり、誰かに寄りかかりたいと思っていたり、支えてほしかったり。女性の可愛らしい部分やいじらしい部分が魅力的に描かれているので、その繊細さもうまく表せたらいいなと思っています。