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My Story, My Jewelry Vol.3 吉田羊「演じる日々に寄り添うジュエリーは、控えめだけれど静謐な美しさがあるものを」

マイナビ プレミアムジュエリーのスペシャル連載「My Story, My Jewelry」。
自分の感性を信じ、自分だけの物語を彩るジュエリーを選ぶ。肩に力の入った“ラグジュアリー”ではなく、上質な経験を重ねながらも、しなやかさと強さの中にあるリュクスな佇まいを忘れない。そんな美しさを持つ方に、「私の物語、私のジュエリー」についてお聞きするインタビューです。

第3回は、女優の吉田羊さんにお話をうかがいました。
舞台出身ならではの硬軟自在な演技力だけでなく、知性がにじむ美しさや繊細さ、時には茶目っ気たっぷりの気さくさまで感じさせて、男女問わず高い人気を誇る吉田さん。
今回は、話題の舞台『ツダマンの世界』への意気込みをうかがいつつ、愛用ジュエリーやジュエリーを選ぶ際のこだわりについてもお話しいただきました。

あこがれ続けていた演出家の作品に初出演

――吉田さんが演じるのは、阿部サダヲさん扮する作家・津田万治(ツダマン)の妻、数(かず)さん。台本を読んだ時に、どのような女性と感じましたか。

この時代(昭和、戦後の頃)を象徴するような、けなげながらも芯の強い女性という印象を受けました。戦争未亡人という身の上に引け目を感じつつも、新聞を読んだり、料理の腕を磨いたりして、小説家の妻としてふさわしくありたいと努力をしていて……。でも純粋にツダマンに惚れているなと感じるセリフもあり、だからこそ後半の彼女の変化には、胸がキュッと締め付けられる気がしました。

――本作は松尾スズキさんの書き下ろしということで、吉田さんへの当て書きの部分もあるかと思うのですが……。

たしかに、数さんを演じていて自分と重なる部分はあります。たとえば自信がないゆえに、求められると“自分”を差し出してしまうところとか、そんな自分を客観視して、意外と前向きに腹をくくっている部分とか(笑)。松尾さんに当て書きかどうかをお聞きしたことはないのですが、「もしかして松尾さん、私の性格をよくご存じなのでは?」と思ってしまうほど、稽古場で演じていて身につまされていますね(笑)。

――松尾さん作・演出の舞台には今回が初出演。公演HPのインタビューでは、“同じ小劇場出身として、ずっとあこがれの存在だった”と話していらっしゃいますね。

そうなんです。昔から松尾さんは雲の上の存在で、あこがれていました。だからオファーをいただいた時は、正直にいうと「私に務まるのだろうか」という不安がありました。でも出演が決まって台本を読んでいるうちに、自分に似た部分を数さんに感じるようになって。だんだん「私だからこそ演じられる数さん像があるのかもしれない」と思うようになったんです。
松尾さんの台本って本当に面白いですよね。本音や弱さを必死に取り繕って生きる人間の滑稽さを、松尾さんらしいユーモアによって健やかに笑い飛ばせるというか。さらに物語の底には、痛みや傷を持つ登場人物たちに寄り添うような松尾さんの温かい目線もある。観終わった後、“(人は)不完全でもいいんだよ”と言われているような気持ちになれるのが、松尾さんの作品の魅力だと思っています。

ジュエリーは一段グッと気持ちを上げてくれる

――今回は、厚みのある物語と並行して笑いのギミックも要求されるなど、TVドラマや映画とはまた違った、演劇ならではの“筋肉”が必要になりそうですね。

その“筋肉”は、これから鍛えていきたいと思っていて(笑)。

――演技巧者として知られる吉田さんですから、その言葉は意外な気がします(笑)。

いやいや、本当にそうなんですよ。稽古場では、松尾さんの世界観を的確に表現できる阿部さん(松尾さん主宰の「大人計画」に所属)たちをすごいなあと思いながら、まだまだ手探りの日々を送っています。でも試行錯誤を経て分かってきたのは、余計な感情や計算をそぎ落として、私自身が持っているもので挑むしかないということ。“引き算”することで出てくる力を信じるしかない。今も模索は続いていますが、新人女優のようなまっさらな気持ちで(笑)、稽古に臨んでいるところです。

――そういうことだったのですね。吉田さんのまた新しい表情が見られそうで、ますます本番が楽しみになりました。
さて今度はそんな吉田さんの、ジュエリーについてのこだわりをお聞きしたいのですが。


もともと私は、ジュエリーについても“引き算”かもしれないですね(笑)。実は、母が飾り気のない人で、ジュエリーも着ける習慣がなかったんです。触れる機会がないまま育ったので、いまだにデパートの華やかなジュエリーを観ると、圧倒されてドキドキしてしまう自分がいて。そのせいか、オフの自分は余計な装飾がそぎ落とされた、シンプルなデザインのものが好き。私にとってジュエリーは、お洋服のコーディネートの“最後の一点”という存在なんですよ。出しゃばって主役になるようなことはないけれど、精査されて選ばれたのだなと納得できるような、静謐な美しさがあるものがいいなと思っています。

――さまざまなファッション誌などでは華やかな大ぶりのハイジュエリーもスタイリッシュに、それでいてとても自然に着こなしていらっしゃるので、普段は“引き算”ということに驚きました。

でもこのお仕事をしていると、スタイリストさんがお衣装としていろいろなジュエリーを持ってきてくださる機会が多いので、だんだん、“ジュエリーは気持ちをグッと一段上げてくれるアイテムなんだな”というのが分かるようになってきました。撮影などでハイブランドやメゾンのジュエリーを着けると、そのジュエリーの持っている伝統や歴史に見合う自分になりたいなと思います。もっと自分を磨いていきたいと思わせてくれる、そんなところもジュエリーの魅力なんだと実感できるようになりました。

――たとえば本サイトの読者ですと、アニバーサリーやブライダルなど特別なオケージョンで初めてハイジュエリーを購入するという方も多いようです。“着こなし”のアドバイスなどがありましたら、ぜひ。

あくまでそういうファッションシューティングのときのお話なのですが、私の意識としては、“役になりきる”というのに近いかもしれないですね。気持ちをグッと上げてくれるジュエリーのチカラを借りつつ、“いつもの自分じゃない自分になれる”ということ。ジュエリーにはそういう“魔力”があると思います。それは、これぞというジュエリーを身に着ける機会がある方なら、誰でも使える魔法なのではないかなと。「このステージは私がイニシアチブを持っているのよ」くらいの姿勢でいれば、きっと顔つきも変わるし、仕草も変わる。“満を持して”ぐらいの気持ちで前向きに楽しむのがオススメだと思います(笑)。

初めてのハイジュエリー。身に着けるまでの時間も楽しくて

――ところでオフの愛用ジュエリーということでお持ちいただいた、このシンプルなネックレスは、やはり“引き算”タイプのジュエリーということになりますでしょうか。

そうですね(笑)。仕事の時にスタイリストさんが持ってきてくれたものなんですが、まるで着けていないかのようなチェーンの軽さ・繊細さと、5ミリほどというトップの小ぶりさにひと目惚れでした。俳優をやっていますと、そのつど役に入るために、私の場合はですが、“自分の存在を消したい”という欲が出てくるんです。なので、ジュエリーも“主張をしない、でもひっそりと存在感があるもの”というものに惹かれてしまいます。このネックレスはその好みにピッタリでしたね。

――繊細だけれど凛としたブルーのトップの存在感が、吉田さんにピッタリで素敵です。一方で先ほど、お仕事の撮影ではハイブランドのジュエリーの魅力にも気づきはじめたというお話もありました。最近、実際に購入されたものはありますか。

若い頃はあれこれ選ぶのが楽しかったのですが、年を重ねた今は、気に入ったものだけを長く使って、味を出していきたいという気持ちが強くなりました。そんな時にたまたま通りかかったエルメスのお店で、ショーウインドーに飾ってあったピアスとネックレスのセットを見た瞬間、心をつかまれてしまって! お店の前でジーッと見つめながら、もちろんお代のゼロの数の多さにも30分くらい悩んだのですが(笑)、「これは一生モノだ……」と思って、震えながら購入しました。

――それはまさにジュエリーとの“出合い”ですね!

ほんとうにシンプルなデザインなんですが、存在感があって素敵なんですよ。だから授賞式ですとか、特別な機会に身に着けたいと思っています。ただ、買ってから1年以上経っているんですが、ありがたいことにそういう機会を何度かいただいても、スタイリストさんに付いていただいたりお着物だったりして、箱に入れて大切にしまったまま。まだ一度も着けたことがないんです。それでも、「このジュエリーをいつ着けようかな」「どういうお洋服に合わせようかな」と考えている時間が楽しくて。これからじっくりと初めて着ける機会を考えて、身に着けたあとは、私だけの味をこのジュエリーに重ねていけたらと思っています。

【公演情報】『ツダマンの世界』

吉田さんが出演する舞台『ツダマンの世界』は、2022年11月23日(水祝)~12月18日(日)まで東京・Bunkamura シアターコクーンにて、12月23日(金)~29日(木)まで京都・ロームシアター京都 メインホールにて上演。

作・演出:松尾スズキ、出演:阿部サダヲ、間宮祥太朗、江口のりこ、村杉蝉之介、笠松はる、見上愛、皆川猿時、吉田羊 ほか

公式サイト:https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/22_tsudaman/
写真/源賀津己
ヘア&メイク/赤松絵利(ESPER)
スタイリスト/石井あすか
取材・文/藤野さくら

ニット¥63,800、スカート¥85,800(共にケイタマルヤマ TEL:︎03-3406-1935)、右手リング¥165,000、右手リング¥99,000、左手リング¥264,000、ピアス¥319,000(ジュエリーすべてグリンビジュ― @gren_jewelry_official)、ブーツ¥139,700(ジミー チュウ TEL:︎0120-013-700)

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