シンプルなウエディング装花が多かったパリで、独自路線を開拓
国内外のスペシャルなロケーションに旅して、結婚式やパーティを行うディスティネーション・ウエディング。その行き先に、フランス・パリを考えている人も多いのでは? 歴史あるシャトーや老舗のホテルなど、美しいロケーションが集まるパリでのウエディングに、いま改めて注目が集まっている。
「フランス国内だけでなく、アメリカやアジア、アラブ諸国からのカップルも多くなっています」と話すAkikoさん。実は、フランスの結婚式は市役所に書類を提出してから、レストランで家族や友人たちとパーティをするだけ、という人が多数。ウエディング装花という概念はあったものの、Akikoさんが「フロレゾン」を立ち上げた2014年には、ウエディングもシンプルな装花がほとんどだったのだとか。
そんな中、Akikoさんはウエディングやイベント装花をメインにしたフローリストとして、独自路線を開拓。はじまりは、日本で会社勤めをしていた20代後半、『やっぱり自分の好きなことを仕事にしたい』と思い、2012年にワーキングホリデーでフランスに来たこと。テーブルコーディネートやフラワーアレンジなどを学ぶなか、翌年には現地で結婚。
「最初は『家庭の傍ら、なにかお花の仕事が出来れば』という気持ちでした」と語る。「ただ、自分は好きなことを見つけて仕事にする、そのためにパリに来たのだ、という気持ちは忘れないようにしていました」。
今の仕事に繋がるきっかけは、2015年に改めて自分の結婚式を挙げたこと。日本では当然のようにある“装花”の準備が、フランスでは無いことに気づいたそう。
「日本人向けのお花のレッスンは始めていたので、自分で準備したんです。試行錯誤しつつも結婚式が終わる頃には、『この仕事をパリでやりたいな』と思い始めて。コネクションなど何もなかったのですが、“こういうスタイルが好き”という軸はハッキリとあったので、そこを大切にしつつ、自分なりの装花を形作っていきました。今は24時間、仕事のことを考える毎日です」と笑う。
導かれるようにして、フローラルデザイナーの道へ。ウエディングにこだわりたいパリジェンヌからディスティネーション・ウエディングのカップルまで、装花と装飾が同時に出来るAkikoさんは、今や引っ張りだこの存在に。世界中のセレブリティが憧れるパリという場所で、トップフローリストとして活躍できる理由は何だろうか。
「10年前はパリにほとんどいなかった“ウエディング装花のフローリスト”も、今ではだいぶ増えてきました。その中で自分の得意分野は何かと考えると、やっぱりお花の繊細な色合わせや、装飾の組み合わせなのかなと。そこを発展させるために、同じことを繰り返すのではなく、毎回少しでも違うことを試みるように意識しています。パリは日常的に美しいものや、芸術に触れる機会が多い場所。そんな街で多彩なお花と関わっているというのも、この仕事に飽きない理由かもしれませんね(笑)」。
Akikoさんに聞く! パリスタイルのフローラルデザイン・5つのポイント
【POINT.1】 歴史ある建築物にはタイムレスなフローラルデザインを
Akikoさんの装飾は、パリの歴史ある建築物に溶け込むドラマティックな美しさが魅力。
「オペラ座やシャトーのような重厚な会場のときは、それに見合うように深みのある色合いのお花を選びます。特にウエディングの場合は、あまりトレンドばかり追ってしまうと、5年後、10年後に写真を見返したとき、なんだか“古くさい”ように感じてしまうもの。せっかくの歴史ある建築物なら、装飾もタイムレスな美しさを意識して」(Akikoさん)
【POINT.2】 お花の1本も妥協せず、細部までこだわって
精密に描き込まれた西洋の静物画のような、品格漂うAkikoさんの装花。
「フランスでは野生の花や庭園スタイルが人気ですが、私は絶妙な色合わせの洗練されたスタイルが好き。細かい色合わせまで気を配って仕上げます」とAkikoさん。
日本でこだわりのアレンジを実現するには?
「個人でやっている好みのフローリストさんを探して依頼するのもおすすめ。どんどん質問して相談することが出来ますし、一緒に練っていくことで、オリジナリティあるアレンジが可能に」(Akikoさん)
【POINT.3】 モダンな会場なら思い切った素材やアレンジも◎
タイムレスな装花を得意とする一方で、アートのインスタレーションを思わせるアレンジも披露。
「まずはどんな会場で行われるかを知ることが重要。そこから得たインスピレーションをもとに、会場を引き立たせる装花を考えます。現代アートの美術館や旬のレストランが会場の場合は、モダンなお花や思いきったアレンジに。さらにクライアントのライフスタイルやファッション、宿泊されているホテルなど、あらゆる要素を加えてフローラルデザインを提案していきます」(Akikoさん)。
【POINT.4】 キュート系の定番“ホワイト×ピンク”なら小物などで工夫
ホワイト×ピンクの組み合わせや、「とにかく甘い感じに」という定番のオーダーは、パリでも人気だそう。
「もちろん可愛いのですが、うっかりすると『どこかで見たことがあるかも…』というアレンジになってしまいがち。そういう場合はキャンドルや燭台、花瓶などの小物で工夫を。お花を引き立たせるキャンドルの色や質感を選ぶ、装花も高さを出す・果物を加えるなど、セッティングにこだわればグッと新鮮な印象になりますよ」(Akikoさん)
【POINT.5】 ブーケはオーガニックなカラーが人気。次のトレンドは?
「ブーケはベージュや白など、オーガニックを感じさせるカラーが人気。このブーケもその色合いでまとめています」とAkikoさん。
パリジェンヌはデイリーのメイクやファッションも作り込まないセンシュアルさが人気なだけに、これはうなずけるところ。「ただ最近は、その定番に加えて、もう少しカラフルな色合わせのブーケにも注目が。1種類のお花だけを使ってアレンジするのもトレンドの傾向です」(Akikoさん)
気になるパリのトレンドは、引き続きAkikoさんの活躍をチェック!
Akiko Kovacs(アキコ・コバックス)さんプロフィール
パリ在住のフローラルデザイナー。日本の会社勤務を経て、2012年にフランスへ移住。2014年よりアトリエ「フロレゾン」を主宰。世界最高峰のオペラ座の1つ「ガルニエ宮(パリ・オペラ座)」をはじめ、シャンティイ城などのシャトーやパラスホテルなどで、ウエディングとイベントの装飾を多数手がける。2023年、「WED VIBES」が選ぶ「TOP 10 WEDDING FLORISTS IN FRANCE」に選ばれた。
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取材・文/藤野さくら(書斎ジュディス)