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#4 伝えたい大切な思いが"伝わる場"をつくる。司会者・坂田やすこさんがつくりだす愛に満ちた結婚式とは

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「結婚式」には、想像している以上にたくさんの人が関わっています。表に出る人、裏方の人、業界自体を支える人……。この企画では、さまざまな角度から、どんな風に結婚式のことを考えていてどんな風に結婚式を作っているのか、その想いをリレー方式で伺っていきます。

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丁寧に繊細に見つめることで、結婚式が人生と繋がっていく

結婚式は、新郎新婦が人生の新しいステップに踏み出すセレモニー。喜ばしい空間の演出に欠かせないのが司会者です。今回ご登場の坂田やすこさんは、前回の齊藤秀明さん、前々回の一色浴果里さんが「あんなにすごい司会者はいない」と絶賛するプロ中のプロ。坂田さんの進行によって会場がとても幸せな空気に包まれるのだそう。「あの結婚式があったから……」と、式後も繋がりが続くカップルも多いという司会者の坂田さんに、結婚式への思いを伺いました。

――結婚式の司会者というと、次は○○さんの挨拶で、次は花束贈呈……などといった、いわゆる進行の役割を思い浮かべますが、坂田さんは、進行だけには留まらない役割を果たしていると伺いました。どんなふうに新郎新婦と関わられるのですか?

坂田やすこ(以下、坂田):人生は、いろいろな人やものごととの出会いによって変わるものですが、なかでも結婚は自分の意思で大きく人生を変えることができる機会。大きな節目となるときだからこそ、立ち止まって、自分自身と、そしてこれから人生をともにする人と向き合うことができると思うんです。それは、時にとても勇気のいることで、ご本人だけの力でちゃんと立ち止まるのは簡単ではありません。ですから、結婚式に関わるプロとして、立ち止まるお手伝いをさせていただきたいと思っています。

通常、司会者が行うお打ち合わせは、新郎新婦の願いをかなえるために、結婚式で何を行うかなどを確認する場だと考える方が多いかもしれません。でも私は、お打ち合わせを結婚式のためだけの時間とは考えていないんです。おふたりがどんな人生を歩んできたのか、何を大切にしてきたのかを味わっていただく時間にしたいと思っています。それは、おふたりの生き方の“骨組み”を明らかにするような時間ともいえます。これまで築いてきた生き方の骨組みを互いに知った上で、今度はふたりでどんな新しい骨組みを築いていくのか、どんな新しいピースを一緒に見つけていきたいのかを、見つめる機会になります。そうして自分自身や、これから人生をともにする相手と改めてしっかりと向き合うことで、未来へと踏み出すスタートラインに、おふたりが一緒に立つことができると思うのです。


自分自身やお互いを、丁寧に、繊細に見つめ、向き合っていく時間を経験すると、おふたりにとっての結婚式の意味が違ってきます。単にお披露目の場であったり、感謝をお伝えする場というだけでなく、結婚式がおふたりの人生としっかり繋がるんです。また、「誓いの言葉」もおふたりならではの本質的なものに変化します。
これまでの生きてきた道のりの延長線上に結婚式が乗っかり、未来へと続いていく。ふたりがこれまでどんな道を歩み、どんな未来を一緒に歩もうとしているか、ゲストがしっかりと感じことができる結婚式になります。そしてそれは、おふたりの未来への贈り物のような時間になると思うんです。


感情の流れに沿った “感情軸”で結婚式を動かしたい

――打ち合わせ時には、ご家族やゲストについても、かなり深く聞かれるとか?

坂田:この打ち合わせは、人生と結婚式を結びつける時間でもあります。たとえば、進行表上にはすでにスピーチをしていただくゲストの名前が入っていると思うんですね。彼らは、“お世話になった方”であったり、“親友”だったりすると思うのですが、お打ち合わせの場で、改めて彼らとの時間を振り返っていただきたいと思っています。いつどんな時を一緒に過ごしたのか、どんな影響を自分に与えてくれたのか。それをしっかりと味わうことで、式当日、その方のスピーチを聞く時の思いは、さらに深いものになります。おふたりの感情の動き方が違ってくるんです。そして、その感情に触れてスピーチをしている方や、まわりのゲストの方の感情も動き出します。

また、私自身も、お打ち合わせを通して、おふたりが見るものを一緒に見させていただき、そこで知ったことは、全部しっかりと自分自身にセットしたいと思っています。もちろん、限られた時間のなかで、おふたりの人生をすべて聴けたとは思っていません。それでも、聴かせていただいたことは、自分自身に染み込ませる、そんな思いで準備をします。たとえば席次表には、おふたりから伺ったゲストとのエピソードや想いをすべて書き込んでいます。そうして、まるで“人生マップ”のようになった席次表を持って、会場入りし、マップの人物とお越しになっているゲストとを繋げていくんです。

▲「本来ならばお見せするものではないのですが……」という坂田さんに特別に見せていただいた“人生マップ”。席次表に、ゲストの情報がぎっしり!
そこまで準備をするのは、司会者として思いを代弁し“伝える”のではなく、思いが“伝わる”ように場をつくり、橋渡しをするのが、私の役割だと思っているからです。
“場”には、会場の明るさや温度、声や音や匂いなど、あらゆるものが影響します。なかでも、最も場を動かすのが、ゲストの感情です。ですから、結婚式を進行表ではなく、感情の流れに沿った “感情軸”で動かしたいと考えています。
それは進行表の通りに進めないという意味ではありません。もちろん、滞りなく式を進行することは、司会者の大切な役割です。でも、新郎新婦入場、乾杯、スピーチ、ケーキ入刀といった進行表にあることをブツ切れに進めていくのではなく、おふたりはもちろん、ゲストの感情の流れが途切れないよう繋げながら、伝えたい思いがしっかりと伝わるよう場をつくっていきたいのです。

―― 具体的には、どんなシーンにどんな動きをされるということですか?

坂田:たとえば、新婦とチャペルを歩く前のお父さまはとても緊張されています。スタッフに動きを説明され、まだ心の準備ができぬ間に、扉が開くというのもよくあることです。でも、大切なお嬢さまとの時間ですから「○○さんがお生まれになったのは12月ですから、寒かったんじゃないですか」なんて少しお声がけをする。そして「バージンロードは、お父さま、お母さまがお嬢さまをお育てになったこれまでの日々を感じる人生の道のりなので、お嬢さまと過ごした時間を思い出しながら歩んでくださいね」とお伝えするだけで、扉が開いた後、バージンロードを新婦とともに歩くお父さまの気持ちが全く違うと思うんです。
このように、常に感情を”点”ではなく”線”で繋ぐことで心の動きが大きくなり、秘めた気持ちまでもが表れてきます
感情の流れを軸に結婚式を動かすためには、シーンの前後が特に重要なんです。

新郎新婦からは見えていない景色をお伝えしたり、目の前のシーンを深く味わっていただけるよう橋渡しするのも、私の役割です。ケーキ入刀時に集まったご友人の後ろで、一生懸命その姿を見ようと背伸びをするお父さまのご様子をお伝えする。すると新婦の感情が動き、場の空気も自ずと動き出したりします。
また、新郎がラグビー部時代の友人に囲まれてお写真を撮ろうとされていたら「ラグビー部時代、部室のロッカーの匂いは……」なんて、お打ち合わせで伺ったお話をご紹介する。すると、お写真に映るみなさんの顔が、ワッと笑顔になるのはもちろん、それを聞いた他のゲストの方も、新郎にはそんなお仲間がいらして、そんな学生時代を過ごしたのねーと、またゲストの感情が動き出しますよね。

結婚式には進行がありますが、目の前で起こることは、まるで生き物のようにエネルギーをもって常に、微細に繊細に動いているんです。ですから、そのエネルギーのうごめきに瞬時に反応するためにも、新郎新婦のエピソードもゲストの情報も、自分自身に染み込ませ、瞬発力を最大限に高めておく必要があるのです。

未来だけでなく、過去も変える結婚式の力

――お伺いしていると、坂田さんのお仕事は声の仕事だけに留まらないですね。

坂田:もちろん司会者として、声や言葉、表現というのはとても大切にしています。でも、それ以前の根幹を丁寧に繊細に扱ったときに起こる“結婚式の力”を目の当たりにしてきたことが、私に大きな影響を与えているように思います。

先日も、結婚式の力を実感する出来事がありました。
お打ち合わせのとき、新婦は、ご両親、特にお父さまとの関係に悩みがあるご様子でした。お父さまの発する言葉を長年「怖い」と感じてきたとおっしゃって、早く結婚して、実家から飛び出したいとまで口にされていました。でも丁寧に、繊細にお話を伺うと、「実は子どもの頃はお父さん子だった」なんてエピソードが出てきたり、どこか新婦の揺れ動く感情が見え隠れしていました。そこで、そうした感情を新婦と一緒に一つひとつ紐解いていくと、お父さまへの思いが少しずつ表れてきたんです。それは、「本当は自分がどんな気持ちでいるのかお父さんに知ってほしかった」「何でも言い合えるような親子関係を築きたい」といった、怖いという気持ちでコーティングして閉ざしていた、彼女自身も気がついていなかった思いでした。そして、お打ち合わせの終わりには、結婚を機にお父さんと向き合いたい、今の思いを手紙にしたいと話してくれました。

でも、日常に戻り、いざ手紙を書こうとすると、それは簡単ではありませんでした。何をどんな風に書けばいいのかわからない……という気持ちになる新婦に、プランナーも私も「私達がついているから大丈夫」というメッセージを常に発し、一緒になって向き合いました。大好きな彼と新しい生活をスタートするんだという思いも彼女を勇気づけていたと思います。結婚式間際になり、彼女は思いを込めた、熱のある手紙を書きあげることができました。

当日、式の前に、彼女から直接ご両親に向けて手紙を読む時間を設けました。率直な言葉を綴った手紙を読むことは、彼女にとってとても勇気が必要だったと思います。また、これまで心を閉ざしているように見えたお嬢さまからの手紙を受け取ることは、ご両親にとっても覚悟のいることでした。そこで、プランナーや私、チームみんなが新婦の、そしてご両親の感情の動きに寄り添い、場所、時間、段取りなどを整えました。そのかいもあって、新婦はしっかりとお手紙を読み上げ、ご両親は手紙の内容に涙しながら、彼女の思いを受け取ってくださったのです。




この直後に始まった結婚式。新郎とともに入場してきた新婦の笑顔は本当にすばらしかったですね。ご両親に思いを伝えることができた。そのことは、彼女の自信につながったのだと思います。「私は幸せになる」そう確信して、新郎の隣で心から笑っている新婦の姿がありました。新郎新婦の感情がこれだけ動いていたら、司会者として多くの言葉を尽くす必要はありません。自ずとその感情がゲストのみなさんにも伝わり、愛に溢れた結婚式になりました。

後日、新婦からいただいた手紙には、「結婚式以来、両親の愛情を自分から感じられるようになりました」と書かれていました。実家に帰ると、お父さまが描いた自分たち兄妹の絵が飾ってあるなど、毎日見ていたものの中にも親の愛情がちゃんとあったことや、本当は愛されていたのに長年そのことを見ようとしていなかったことに、彼女は気がついたんですね。また、ご両親にも変化があり、関係も大きく変わったということでした。結婚式により、新郎新婦やご家族の未来が変化したのはもちろん、過去の見え方まで変化したのですね

この結婚式の司会を担当させていただいたことで、改めて「結婚式には大きな力がある」と実感しました。同時に、人生を変える可能性をもった場に関わる責任を実感し、これからも覚悟をもって繊細に丁寧に結婚式に携わっていきたいと考えるようになりましたね。

編集部より

もはや“司会者”という肩書きだけでは収まりきらない坂田さん。坂田さんが発する温かい言葉だけでなく、おふたりやゲストといった“人の思い”へ向き合った「きく」力、感情の動きを察知し繋げていく技術によって、唯一無二の結婚式が作り出されているのだと感じさせられました。

次回は、そんな坂田さんからのリクエストで、サウンドスタイリストとして活躍される株式会社サウンドクチュール代表取締役 大河内 康晴さんにお話しを伺います。お楽しみに!

坂田さんプロフィール

司会事務所に所属をし、名古屋を拠点に活動をはじめマネージャー業もつとめ多くの司会者を養成。
「未来を変えるほどの結婚式を創る」為、声や言葉の様々な仕事につき 心理学・コミュニケーション学を学ぶ。
NLPマスタープラクティショナー・日本プリマリタルカウンセラー資格を取得。
2007年に独立をし、Procheを設立。
フリーランスとし活動の幅を広げ 全国各地で2500組を超えるおふたりの人生に向き合い続けている。
ブライダル業界の方から ご自身の結婚式への指名も多く、「きく」に特化したカウンセリング力が認められ各種セミナー講師も務める。
取材・文/定家 励子(株式会社imago)、小谷実知世
写真/タナカタツヤ(メイン、本文内1・2・4・5枚目、プロフィール写真)

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