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#2 こんなにも愛されているんだと実感すると、未来だけじゃなく過去さえも変わる。ウエディングディレクター 一色浴果里さんが語る結婚式のチカラ

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「結婚式」には、想像している以上にたくさんの人が関わっています。表に出る人、裏方の人、業界自体を支える人……。この企画では、さまざまな角度から、どんな風に結婚式のことを考えていてどんな風に結婚式を作っているのか、その想いをリレー方式で伺っていきます。

< #1 多様化する時代、誰しもに人生の「節目」を楽しんでほしい。CRAZY WEDDING松田佳大さんが感じる使命

ウエディングは、人生に関わる仕事

2020年に京都にオープンしたエースホテル京都は、シアトル発のホテルブランド。ここで行われるウエディングは「1日1組限定」とされています。しかし、多くのカップルが特別な日をここで迎えようと思うのは、「1日1組」という数にあるわけではありません。「このプランナーに出会ったから」と多くの人が口を揃える、同ホテルのウエディング・ディレクター、一色浴果里さんにウエディングへの想いを伺いました。

――一色さんにお話を伺うにあたり、先日式を挙げたばかりのカップルの企画書や式後の振り返りなどを読ませていただきました。印象的だったのは、カップルが「打ち合わせで自分たちのことをとても深いところまで質問された」とおっしゃっていることです。企画書もおふたりの今までの人生の物語を読ませていただいているような気持ちになりました。

一色浴果里(以下、一色):私は人生に関わる仕事をさせていただいていると思っています。というのも結婚式って、ひとりひとりが「自分はこんなにも愛されている」「自分という存在はこのままでいいんだ」と実感する機会なんです。私は、人はみんな心に貯金箱を持っていると思っています。貯金箱に愛情が詰まった“プラスのコイン”が多いのか、それとも“マイナスのコイン”が多いのか、それによって人とどう関われるのかが変わる。人生や、家族のカタチ、子どもの愛し方などが変わってくると思うんです。そういう意味で結婚式は、愛するパートナー、そして大事に思って招待したゲストから、これでもかというほどの“プラスのコイン”をドーンともらえる日。大人になってから結婚式以外で、こんな機会はかなかなないって思うんです。

そんな大切な日をどんなふうに過ごすのか。ふたりのためのプランニングをしたいから、結構深いところまで聞かせていただきます。新郎新婦のことだけじゃなくて、家族や友人のことも。カップルによっては、他人に触れられたくないところもあります。でも、「そこに触れることがふたりの未来にとって価値がありそうだ」と思えば、あえて触れさせていただきます。「ここまででいいでしょ?」というようなウエディングにはしたくない。関わらせていただくときには、ど真ん中に愛を持って、時には踏み込ませていただきます。お節介ですよね。嫌だったら他のプランナー紹介しますって言いながら(笑)
でも、ウエディングは作り手や作り方によって、まったく別物になる可能性を秘めてるんだってお伝えしたいんです。

子育て前の“夫婦”から関わることで、葛藤している子どもたちを減らしたい

――そもそも、なぜ結婚式にそこまでの可能性があると考えるようになったんですか?

一色:私は、芸術大学を卒業後、デザイン事務所などで働いていたんですが、もっと人間の本質に触れれるようになりたい、そのうえでモノづくりをしたいと思い脱サラをし、ファシリテーターの勉強をさせてもらっていた師匠の元に弟子入りをしました。その教育団体は、当時学級崩壊したクラスを立て直す現場が多く、そこで私はリストカットを繰り返したり、虐待やネグレクトで苦しんだり、学校に行けなかったりしている子どもたちにたくさん出会いました。そして、もっと根本からアプローチしたいって思ったんです。子どもたちの問題の根本は自己肯定感が育みきれていないこと。両親や愛着関係にある大人との関わりが子どもに大きな影響を与えます。もしそうなら、まずは結婚する前のおふたりに関わることで、子どもたちの未来をもっとワクワク・キラキラしたものになるんじゃないかなと思いました。それがウエディング業界で仕事をしようと思ったきっかけです。

そして、入社した会社で、お客さま自身も気づいていなかった感情や想いを受け取り、本当のニーズを真ん中に置いてコンセプトメイクしてプランニングすることで、選択肢から選んでもらい“手配するだけ”でつくるウエディングとはまったく違う、おふたりの人生にとって本当に価値のあるウエディングをつくれること、先程お話した、ウエディングという特別な日が持つ力を実感しました。そして、このときの想いをここエースホテル京都でも、さらに高い解像度で実感しています。

素直な気持ちを言葉で伝える日になるよう、クリエイター全員で伴走する

――エースホテル京都のウエディングは、「1日1組」ということが特徴的ですが、なぜそうしているのでしょうか。

一色:1日1組にして、場所や時間の制限を外すことで、枠組みに合わせてプランニングするのではなく、大切だと思うことを思う存分に行うために、枠組みを変えることができます。結果的に、新郎新婦ごとにまったく違う、極めて非効率ですし毎回イレギュラーでしかないプランニングになってしまいます。さらに、当日でも変えたほうがよりよくなると思えば躊躇なしに無茶振りします(笑)。それを楽しんで一緒にかなえてくれるクリエイターがいてくれます。その価値を理解し、おもしろがってくれるエースホテル京都という環境があります。両方あるからこそカタチにできる。ウエディングってとてもクリエイティブな世界。でも、従来のウエディングは、時間枠が決まってて、選択肢が決まってて、1会場で1日に複数パーティすることが前提で、クリエイターからの提案の幅も狭まってしまっていました。それが1日1組であることで、司会者、ドレススタイリスト、テーラー、フォトグラファー、ヘアメイクアーティスト、フローリスト、ミュージシャン、などのクリエイターたちも、キャプテンやサービスチームも、思う存分能力を発揮することができるんです。同じゴールを目指し、今何がベストなのか、シームレスに意見を言い合い共に作り上げていく一体感がたまりません。

――実際には、クリエイターと一緒に、どんなことを大切に思ってウエディングをつくっているのですか?

一色:私は変態だと言われるほどに、新郎新婦には、誓いの言葉や、お手紙など、伝えることを大事にしてほしいと思っています。”プラスのコイン”をいっぱいもらって、愛されてるんだと実感できるからこそ、素直に言える、素直に受け止められる言葉があります。この日だからこそ言える、ありがとうやごめんなさいなど、今まで言えなかったことを伝えてほしいんです。簡単にできることではありません。だからこそ、添削させていただき、おふたりと一緒に感情を探求します。そして、クリエイター全員に新郎新婦の心の動きを逐一シェアします。全員でその想いに伴走する気持ちで準備をして、当日を迎えるんです。

先日こんな結婚式を担当させてもらいました。このウエディングでご提案したのは、ゲスト全員に手紙をご用意いただき、挙式のシーンでみなさまに一斉に読んでいただくということ。今のおふたりを感じてから読んでいただきたかったので“披露宴の途中で挙式”をおこないました。お手紙には、お一人お一人に一番伝えたい思い、自分にとってあなたはどんな存在なのか、どんな影響を与えてもらったのか、ということを素直になって言葉を紡いでいただきました。
通常、お手紙の長さは、新婦のほうが長くなることが多く、読むスピードも人によって違います。でもせっかく想いのこもった手紙なのだから、「全員が読み終わるまで待とう」と司会者やミュージシャンと目線合わせしていました。

いよいよ進行が始まり、お手紙を読んでいただく時間に。やはり、先に新郎側のゲストから読み終わっていき、だんだん新婦側のゲストも手紙を封筒にしまいはじめ、最後に残ったのは新婦のお兄さまでした。新婦は、お母さまとお兄さまとの3人暮らしで育ってこられたため、お兄さまにはたくさん伝えたい言葉があったんですね。そんな背景も知っていたので、お兄さまにはゆっくりとお手紙を味わっていただきたいと思っていました。でも場の空気としては、お兄さま以外全員がお手紙を読み終わって、間延び感とか違和感が漂い始める。そこで、生演奏のミュージシャンと司会者に、指で鍵盤を引くジェスチャーをして合図を出したんです。私は、大切な場面こそ無音と思っているので、音楽がないまま進行していたのですが、場の空気を察してお兄さまが焦ったりしないよう、音楽で場をつないでほしいという思いでした。そんな私のジェスチャーを見て、ふたりは、大きく“こくり”と頷いて。ミュージシャンは、その場にしっくりと合う音楽を即興で奏で始めました。そして、その後に続く司会者の言葉のチョイスも、声量も、完璧。「美しぃーーー」ってシビレました。事前に決めていたわけではありません。司会者もミュージシャンも何が大切かをしっかりとわかったうえで、この場の空気をじぃーと感じてくれていたからこそ、この瞬間を生み出すことができたんです。新婦の想いが詰まった長い手紙を、お兄さまはプレッシャーを受けることなく、じっくりと最後まで読んでくださいました。

地味なことです。決して派手な演出などではありません。お客さまは気づかないことでしょう。でもこうした“デザインしていることを感じさせないデザイン”こそ大切にしたいことで、それを快感に思うクリエイターが一緒にいてくれることは本当に幸せなことです。

「世界平和」のための、草の根運動をしてるって気持ちです

――この日だから、伝えること、受け止めることを一番大切に思って、ウエディングを行っているんですね。

一色:そうなんです。このとき、新婦にはもうひとつ伝えたい想いがあって。当日までお母さまには内緒で、お母さまへの手紙を読んでいただいたんです。


私が小学生のときに私とお兄ちゃんとお母さんと、3人の家族となりました。
お母さんがそのことを私たち兄妹に伝えたときのことは今も鮮明に覚えています。お母さんが泣きながら「ごめんね、これからお母さんが頑張るからね」と、強く抱きしめながら伝えてくれたね。私は幼かったから、あまり意味はわかっていなかったけど、つらそうなお母さんを見て子どもながらに助けになりたい、支えていきたいという気持ちでいっぱいだった。


飾らない素直な言葉で綴られたステキなお手紙でした。
お返事にあたるお母さまのお手紙も、目の前の娘に言葉を届けるお母さまのお姿も、心を打たれるものがありました。この日だからこそ言える想いを綴ってほしいというお願いに、真剣に向き合ってくださったのだと思います。

パーティが終わったあと、お母さまとお話していたら「ずっと心にひっかかってきた、わだかまりが溶けた気持ちです」っておっしゃって。お母さまの心のなかには、自分ひとりで育ててきて足りないことがあったんじゃないか、変に早く大人にさせてしまったんじゃないか。そんな色んな想いがあったけど、今まで何も聞けずにきた。でも今日、「そんなふうに気にしてたんよ」ってことや、「あなたを大事に育ててきたよ」って言うことができたって。これはやっぱり特別なこの日だからできたことだと思うんです。

――今まで生きてきた中で、一番引っかかってきたこと、大事にしたい想いを伝える日になったんですね。

一色:はい。心からの想いを伝えることで、未来が変わるし、同時に、過去に対する見方も変わります。そして、こういう経験をした新郎新婦の子育ても変わると思うんです。だから私、「あなたにとって、結婚式とは?」とかって聞かれると「世界平和」って答えてしまうんです。だって、世界平和でしょ?(笑) 本当に、愛おしい人たちが近くにいることを実感する日をつくる。地道な、世界平和のための草の根運動をしてる、そんな気持ちなんです。

編集部より

「結婚式は人生を変える」。それは決して大袈裟ではないことが、一色さんのお話からひしひしと伝わってきました。これから家族を作るカップル、ふたりを取り巻くお互いの家族、友人たち。全ての人たちとのつながりや愛を感じることで、その後の人生感が大きく変わっていく……。たとえそれまで、自分としては決して満足な日々を送っていなかったとしても、このようなウエディングを経ることにより、未来が明るくなる可能性を教えられたインタビューでした。

次回は、そんな一色さんからのリクエストで、「齋藤服飾研究所」でパーソナルテーラーとして活躍される齋藤秀明さんにお話を伺います。お楽しみに!

一色浴果里さんプロフィール

イベントプランナー、コンセプター、グラフィックデザイナーを経て、マザーアースエデュケーションにて環境教育。関係教育のファシリテータとして活動後、株式会社 Plan・Do・See入社。プランナー、ブライダルマネージャーを経て本社経営戦略企画室マネージャーに就任。今までの経験とノウハウを活かし、事業コンサルやチームビルディング、人材育成などに従事。2020年よりエースホテル京都のウエディングディレクターとして開業から関わり現在に至る。

https://ace-hotel-kyoto-weddings.official-website.jp/
取材・文/定家 励子(株式会社imago)、小谷実知世
写真/SHOWGO WESTFIELD、タナカ タツヤ

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