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#3 結婚式は人生最高の舞台。世界一カッコいい装いで送り出してあげたい。パーソナルテーラー齋藤秀明さんが語る自分の存在意義

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「結婚式」には、想像している以上にたくさんの人が関わっています。表に出る人、裏方の人、業界自体を支える人……。この企画では、さまざまな角度から、どんな風に結婚式のことを考えていてどんな風に結婚式を作っているのか、その想いをリレー方式で伺っていきます。

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タキシードを誂(あつら)えることで結婚式が自分事に

東京の下町、浅草にほど近い田原町にアトリエを構える齋藤服飾研究所。ここでは、パーソナルテーラーの齋藤秀明さんが、長年英国ブランドに関わってきた経験を生かし紳士服のオーダーメイドを請け負っています。前回ご登場いただいたウエディングディレクターの一色浴果里さんいわく「洋服に対する思いが強く、みんなから兄貴と呼ばれとても慕われている」齋藤さんに、結婚式での男性の装いの意味するものについて伺いました。

――先日一色さんに、齋藤さんは新郎のタキシードの仮縫いの際に、新婦もドレスを着て横に並んでもらって、おふたりが並んだときのバランスも考えながら最終チェックをすると伺いました。そこまでされる方は珍しいのではないでしょうか?

齋藤秀明(以下、齋藤):僕は紳士服、主にビジネススーツのオーダーをお受けすることが多いんですが、日常やビジネスシーンで着るスーツを作られるお客さまと違って新郎は、その日、世界で一番の主役になれる舞台に立つ方だということです。目一杯カッコ付けてほしいと思うし、目一杯自信をつけて送り出してあげたいなという気持ちが強いですね。だから、少しでもよりカッコよく見えるように、細部にまでこだわりを持ってフィッティングします。
新郎は、みなさん新婦が主役だから自分は添え物でよいなんておっしゃる方が多いんですが、新郎だって結婚式という最高の舞台の主役じゃないですか。新郎が生地を選んだり、採寸したりするのを楽しんでいると、新婦も参加して一緒に裏地を選んだりしておふたりでタキシードができあがる工程を追っていくようになる。すると、それまで新婦のドレスを選ぶのはmust(義務)だから行かなければと思っていた新郎も、自分が行きたいと思う、つまりwant(したい)に変わります。そして、お色直しに遠慮がちだった新婦も、自分の着たいものを選びたいという気持ちになったりして、よい効果が生まれみんなが幸せになれるんですよ。ウエディングが他人事ではなく自分事になり、ふたりで晴れ舞台に立つんだ!と意欲的になっていただけることが、僕自身のやりがいに繋がっているんだなと、最近特に強く感じますね。

お客さまをよりカッコよく見せる、その最たるものがウエディング

――実際に齋藤さんはタキシードのオーダーを受けたら、どのようにして作られていくのですか? その方の体型に合っているということがポイントになるのでしょうか?

齋藤:僕がブライダルのオーダーに関して大事にしていることは3つあります。第一に、その方が何をどう着たいと考えていらっしゃるか。SNSなどの画像でもいいので、自分がカッコイイと思うものを送ってもらいます。レッドカーペットを歩いているハリウッド俳優とか、送ってもらうとその方がどんな風になりたいのかが分かります。第二には、新婦のドレスはどんなものなのか。第三は会場の雰囲気です。この3つを伺った上で、細かいところを詰めていく。たとえば韓流スターが好きなら、あの細さが好みなのか、色なのか、全体的な雰囲気なのか。その中から新郎がどういうものが着たいかという意欲を聞き出すのが僕の仕事になります。それはテーラーとして、いかにコミュニケーション能力を発揮できるかにかかっています。

また、その方の身体に合っているかということですが、サイズぴったりのものを作るのは、おこがましい言い方になりますが、テーラーとしては必要最低限、当然のことだと思っています。それにプラスして、お客さまがもっとカッコよく見えるようにするにはどうしたらいいのか、それを作ったことによってもっと人生を豊かにしていただくにはどんな服がよいのか。そこまで僕は考えます。
たとえば、僕のところにはアスリートの方もよくいらっしゃるんですが、競技によっては胸板が厚かったり、O脚だったり体型は特徴的です。でも、その体型に合わせてしまうと着やすいかもしれないけれど、必ずしもカッコよく見えるとは限りません。ですから、こういう風にしたら背筋が伸びますよとか、ここをこうするとO脚が目立たないですとか、お客さまに説明して納得していただきながら進めます。お客さまをよりカッコよく見せる、その最たるものがブライダルですから、僕の志向にも合った仕事ではないかと思うようになりました。

タキシードを1回きりで終わらせない。リプロダクトというカルチャー

――とはいえ、結婚式はほとんどは一生に一度のこと。そのためにその後も着るかどうかわからないタキシードを作るのはハードルが高いと感じられる方も多いと思うのですが。

齋藤:そうなんですよ。僕はイギリスのブランドに長年携わってきたんですが、イギリスではドレスコードにブラック・タイの指定がある場、なにかのレセプションなど、タキシードを着る機会があるので、「結婚式で一回だけ着る」ということにはなりません。その点日本は、式が終わったら着る機会がめったにないですよね。それはとても残念だと思うので、僕は晴れの日に着たものを、その後も着続けられるようにするということを大事にしています。“リプロダクト”といって、これもイギリスのカルチャーなんですが、本番が終わったら衿のシルクの部分を取り外したり、共布のくるみボタンを水牛のボタンに替えたりして、その後も身体にピッタリのブラックスーツとして残せるようにするんです。そうすれば、たとえば結婚式をしたホテルで夫婦で食事をしようとか、お子さんが生まれてお宮参り、入園・入学式など体型が変わりさえしなければ着続けられるんですよ。これは、父ちゃん、母ちゃんが結婚したときに……なんてお子さんに説明もできます。この“リプロダクト”は僕自身取り組んでみたかったことなので、ブライダルの仕事はとても自分にマッチしてるなと思います。

――カッコいいタキシードが手に入るばかりではなく、それがブラックスーツになり、家族の絆を固くするキー・アイテムにもなる。いいことずくめですね。

齋藤:はい、お客さまにそう言って喜んでいただけると本当に嬉しいですね。通常僕の仕事はできたものをお送りしてそれで終わりなんですが、最近は式に来てスタイリングをしてほしいというお客さまも増えています。スタイリングといっても、することはそんなに多くはありません。「ここはこうしてああして、よし、カッコイイ、これでいけ!」と背中を押すことが大事なんでしょうね。
僕は服を作るテーラーではありますが、それ以上にお客さまにはカッコイイ着こなしをしてもらいたいという気持ちが強いんです。着こなしの中心にあるのはスーツやタキシードですから、それは僕が作りますよ、そこは僕に任せて自信をもって、集中して結婚式に臨んでほしいという意味でオーダーをやらせてもらっています。その上で、よりカッコよく見えるスタイリングを靴からシャツ、ネクタイまで含めてやりたいと思っています。たとえばブライダルでは、新郎が一番困るのは靴です。一番いいのはオペラパンプスで、しかもエナメルパテントだったら言うことなしですが、そんなものを持っている若い人はいません。だったら、その後もビジネスで履けるようなある程度よい靴を用意して、エナメルのように見える磨き方で仕上げてもらうといいですよとアドバイスしたりもします。自信を持ってこれからも履ける靴を履いて、行ってらっしゃい!と送り出す感じですね(笑)。

自分に合った洋服を誂えることは、人生を豊かにできる

――齋藤さんに背中を押されて人生最高の舞台に立った新郎新婦を見て、自分も齋藤さんにタキシードを作ってもらいたいと思う人も出てきそうですね。

齋藤:お客さまから式の後に、「参列していた友人からあのタキシードはどこで作ったのかと聞かれたんですが、紹介してもいいですか?」というような問い合わせをよくいただくようになりました。ビジネススーツなら、春夏ものを作ったら、次は秋冬を……というようにリピーターがいらっしゃるんですが、ブライダルでもこのようにお客さまの繋がりが広がっていくとは予想していませんでした。こうなると、新郎には僕が作った洋服を着て毎回ランウェイを歩いてもらっているようなものですね。

僕がタキシードを作らせていただいたお客さまに接していると、自分に合った洋服を誂えることは、人生を豊かにできるのではないかと感じさせられます。カッコよく着るためにはカッコよくいたいと思うようになるだろうし、そのために食に気をつけたり健康でいようと思うようになったりするとか。そこまでお客さまに自分が関わっていけたらいいなと思います。結婚式という人生のタイミングは、洋服を含めていろいろ考えるよい機会じゃないでしょうか。洋服は重要なファクターですから、固定観念にしばられず、自分たちはどう見せたいか、どう見られたいか、ゲストにどう楽しんでもらいたいかを突き詰めて考えていけばステキな結婚式になるし、それがひいては幸せな家族に繋がっていくと思います。

編集部より

洋服に対する熱い想いを語ってくださった齋藤さん。テーラーの仕事を始める前、長く関わったイギリスの伝統的なブランドを扱う仕事では、ものには3つの喜び、所有する喜び、育てる喜び、共有する喜びがあることを教えてもらったのだそうです。齋藤さんの手によるタキシードにも、きっとそんな喜びがある。そう確信させられたお話しでした。

次回は、そんな齋藤さんからのリクエストで、結婚式の司会者として活躍される坂田やすこさんにお話を伺います。お楽しみに!

齋藤秀明さんプロフィール

都内獣医系大学卒業後、アンティーク雑貨店バイヤーと店頭経験を経て2008年BLBG株式会社入社。
英ロンドンにてグローブ・トロッターのラゲージケースやフォックス・ アンブレラの修復、紳士服のフィッティング、テーラリングスキルを習得。
2013年より英国セレクトショップVULCANIZE LONDON(統括セールスマネージャー及び英国紳士ブランド・HACKETT LONDONパーソナルテーラリングスペシャリスト就任。
自身のブランド顧客対応の場として下町台東区にアトリエに開設。2018年独立後は紹介制のみでビジネススーツ、企業制服の企画、芸能人・アーティスト・アスリート・経営者のパーソナルスタイリングを生業とし、近年はブライダルフォーマルの御仕立てとトータルスタイリングに特化し現在に至る。

https://hideakisaito.tokyo/
取材・文/定家 励子(株式会社imago)
写真/タナカタツヤ(本文1枚目、3枚目)

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