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#5 音楽は空間演出の最大公約数。音で空間を包み込み、誰ひとりとしてアウェーにしない。サウンドスタイリスト・大河内康晴さんに聞く、結婚式への想い

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「結婚式」には、想像している以上にたくさんの人が関わっています。表に出る人、裏方の人、業界自体を支える人……。この企画では、さまざまな角度から、どんな風に結婚式のことを考えていてどんな風に結婚式を作っているのか、その想いをリレー方式で伺っていきます。

< #4 伝えたい大切な思いが"伝わる場"をつくる。司会者・坂田やすこさんがつくりだす愛に満ちた結婚式とは


音楽を制する者はパーティを制する! 空間の文脈と人々の最大公約数を読み、誰ひとりとしてアウェーにしない

今回お話を伺ったのは、株式会社サウンドクチュール代表取締役 大河内康晴さん。さまざまな商業空間やホテル、企業ブランドの空間の音を制作するサウンドデザインの会社の経営、ディレクションをしながら、結婚式の音楽をコーディネートするサウンドスタイリストとしても活躍される、大河内さんはどのような思いで結婚式の音楽を構成しているのでしょうか。

――前回、司会者の坂田やすこさんから、大河内さんは音で世界観を表現したり、感情をうながしたりできる方。ご自分の美の世界をきちんと持っていて、なおかつ司会者はもちろんその場にいるみなさんの言葉も大事にしてくださる方とご紹介を受けました。そんな大河内さんの作り出すパーティの空間とはどのようなものなのでしょうか?

大河内康晴(以下、大河内): まず、はじめに……普段の一般的な結婚式BGMに関する情報やイメージは一切忘れてください(笑)。僕がパーティの音楽を構成するにあたって一番重要だと思うのは、空間を構成するデザイン(視覚的情報)の文脈とおふたりの気持ち(感情的情報)にしっかりと向き合うこと。つまり、理論と感性の両方向からアプローチして、ゲストを誰ひとりアウェーにはしないということです。

みなさん、結婚式の音楽で大事なのは入場とか乾杯のときの音楽だと思っていませんか? でも、実は歓談のとき、どんな音楽が、どんな音量と音質、テンポで流れているかがとても重要なんですよ。僕の前職は世界でも有名な某アニメの制作会社でした。映像と音楽の重要さ、つまりシーンと音楽の関係はヒット作品を作るに多いてとても大切な要素であることを叩き込まれていたので、日本の多くの結婚式はおふたりが自前でCDをご用意されているというその事実に「えぇっっ? 本気ですか??」とびっくりしました(笑)

話が逸れてしまいましたが、ウエディングに限らず、多くの人が集うパーティの空間を構成するとき、それらが全てだと言っても過言ではありません。僕は、歓談のときの音楽はゲストの人数や構成、各テーブルのおふたりとの関係性なども加味して選曲します。

それともうひとつ。入場や乾杯はみんなが曲を聴いているし、おふたりや乾杯に意識を集中しているからいいんですが、歓談となるとそれぞれのテーブルでみんなバラバラなことをしています。そこにたとえば、おふたりの思い出の誰でも知っているヒット曲がかかったりしたらどうでしょうか?

もちろん、おふたりの「思い出作り」が主体の結婚式もしっかりとプロが構成をすればとてもステキなものになりますが、基本的には何か自分の思い出に紐付くものがある人は、そのことについて考えてしまったり、流行のリズムに馴染みのない年配の方は盛り上がれなかったりして、結婚するおふたりのことを祝い、おふたりに集中したい時間、空間であるべきなのに、お花、ドレス、インテリアのデザインや、おふたりやゲストのテイストと曲のイメージと曲が噛み合っていない場合は、TVドラマの合間にCMが入るように集中力が無意識に何度も途切れてしまっているんです。

なので、みんなの意識が途切れないよう、映画や舞台を作っているようなイメージで音楽を構成していきます。




ゲストが会場に入るときから、おふたりが入場をし、ウェルカムスピーチから来賓のスピーチ、ゲストの歓談タイム、そして最後におふたりが退場して、映画で言うエンドロールが流れるところまで、全て事前に構成を「デザイン軸」「感情軸」両方で演出します。映画のフレームが動いていくように、シーンよって一つひとつ丁寧に音楽や音のボリュームなどを切り替えながら、音楽を紡いでいきます。ストーリーが最初から最後まで違和感なく繋がるように、会場の雰囲気を常に読み取りながら即興の部分も取り入れながら当日演出すると、空間とデザイン全てが驚くほど調和し人々が溶け合います。

それはそういったパーティの経験をしなければ決してわからない感覚ですが、ドキドキワクワクしながら、最後までよい映画や演劇を一気に集中して観てしまう夢のような甘い感覚に近いのかもしれません。

こうして圧倒的な非日常の中の「ハレの日」を音も含めた空間全体でディレクションすると、“なんか今回のウエディング、よくわからないけどめっちゃワクワクしたね、あれはなんだったんだろう?”とか、友人はもちろん、親族の方からも“音楽によって、こんなに一体感が生まれるんですね”といった感想をいただける。つまりみなさんの心に余韻が残るパーティを作ることができるんです。これが“感じる”という目に見えない音楽の持つ力、パワーですね。

曲の速さや音域を調整して、会話しやすく気持ちのよい空間に

――なんだか、お話をうかがっているだけで、その場の空気が想像できてワクワクしますね。そんな音楽の構成はもちろんですが、当日会場で実際に音楽を流していく際の調整も重要な役割ですよね? パーティは生ものですし、何があるかわかりませんから。

大河内:そうなんです。さっき僕も歓談のときの音楽が重要だとお伝えしましたが、音楽の速さ、テンポを示す単位にBPM(Beats Per Minute:1分間に四分音符が鳴らされる数)というものがあって、人間がリラックスできるのは60~90bpmぐらい、少し高揚感が出るのが100bpm~120あたり。130bpm以上になってしまうとセール会場で購買をあおるようなテンポになってしまいます。

会場で、親族席の会話がちょっと盛り上がっていないなと思ったら、かけている曲がアップテンポなダンスミュージックでもテンポを少し落としてみる。すると親族テーブルの空気感がちょうどよくなったりする。また人間の声の周波数帯あたりも曲からカットして、会話の声を聞こえやすくもします。そんなふうに音の存在感はしっかりあるのに喋りやすく、気持ちいい音楽が常に流れている賑やかな空間を作っておくと、人はどんどん自分から喋って行動できるんです。ここは楽しくしゃべっていい空間なんだなと認識すると、音楽よりも人の声の賑わいが大きくなる。こんな感じで一つひとつ丁寧にパーティ中も検証し続けています。そうやって必ずパーティを成功させていくんです。

僕は、会場ではおふたりの代わりの受信機、代わりの4つの目にならなくちゃいけないと思っているんですが、つまらなそうな顔をされている方がいないか、みんなが楽しそうな顔をしているか、そういう空気を僕がきちんとキャッチして音楽で包み込まなければならないと思ってやっています。僕らサウンドクチュールのスタイリングフィーは一般的な結婚式の音楽の相場からする決してお安くはないですが、金額以上の仕事をする経験と技術、センスがあると自負しています(僕の場合はほとんど勢いと度胸ですが。笑)パーティの準備を念入りにし、やれる全ての準備をしたらあとは当日頭を空っぽにして臨機応変に。僕らが一番楽しんでいるかもしれません(笑)



結婚式は本当にいいものです。みんなが心から感動し、泣いたり笑ったり。まさにおふたりの今までの人生の思い出が走馬灯のように駆け抜けていく瞬間です。そんな結婚式で気持ちよく打ち上げ花火(諭吉さんとも言うんですが。笑)が「ドーン!!!」とあがってほしいと思っています。

ドレスアップしている女の子がエレガントに見えるような音楽、時に悪乗りしている男子がスタイリッシュに騒でいるように見えるような音楽(笑)というものも意識したり、音のロジックを使ってみんなが気持ちよくなる空間を作っていくということもします。また、司会者さん、会場の音響照明さんの技術や協力、会場装花のフラワーデザイナーさんとの連携や情報交換も欠かせませんから、おふたりとプランナーさんみんな“チーム全員”で一緒によいクリエイションをしていくこと! それが僕の何よりのこだわりですね。

深層心理、本質を知ってよりふたりらしい音楽を

――音楽も、その空間を構成する重要な要素ということですね。司会者の坂田さんが“大河内さんは音楽を100曲ぐらい用意して会場に来られる”とおっしゃっていました。準備はどのようなことをされるのですか?

大河内:おふたりとは、オフライン、オンライン上とフレキシブルですが3回は必ず打ち合わせをします。

まず伺うのは、“どうして結婚式をしようと思ったんですか?”ということです。婚姻届を出して、みんなで食事をすればいいだけなのに、なぜ車一台買えるほどの大金を一日で使ってまで結婚式をしようと思ったのか。すると、たとえば“自分たちはこうなるまでに、いろいろな人にお世話になった。支えられてきた。だから感謝をしたい。ステキな空間で食事と会話を楽しんでほしい”というような言葉が返ってきます。これこそ結婚式、「愛」の本質ですよね。

その次は、おふたりのバックグラウンドを聞きます。僕らはこれを“丸裸にする”と言ってるんですけど(笑)、本当にたくさんの会話をするのですが、おふたりの人生のターニングポイントもよく質問していると思います。たとえば、“実は中学生のときに両親が離婚して、寂しいときは学校の帰り道にある海辺に癒されていて……”などという答えが返ってくると、“ああ、だからこのおふたりのパーティのテーマは海なんだな”と納得できます。ただワードとして「海」と聞くとビーチボーイズの曲とかを選んでしまいがちですが(笑)、ご両親が離婚して……と聞くとおふたりの深層心理まで降りていくことができるから、音楽の構成もよりおふたりのことを反映するものにできる。




そういうことは1、2回の打ち合わせではなかなか聞き出せません。きちんと信頼関係が築かれてからではないと。そのために打ち合わせは最低でも3回はさせてもらいます。そして回を重ねるごとに、おふたりのことが本当に愛おしく大好きになります。

それから、好きなファッションや趣味、週末の過ごし方、普段聞いている音楽や好きな映画、本、国……etc. などもお聞きしますね。そうやっておふたりのありとあらゆる情報を加味して当日のいろいろなシーンの音楽を構成していきます。決して僕ひとりで決めるのではなく、曲を聴いているおふたりの表情の動きにも注意しながら一緒に当日を想像して一曲一曲丁寧に決めていきます。特に入場曲などはおふたりという「絵画」の額縁だと思っていて、いくら絵がよくたって額縁を間違えると価値が下がってしまいますから、どういう雰囲気で入場したいか、どんなドレスで、ヘアメイクで、ブーケで……etc. を徹底的に質問攻め(笑)リサーチして、会場の扉が開いた瞬間、“ああ、これが私たちのウエディングだ!”となる選曲をします。そうなれば、あとはそのままおふたりもゲストも最後までどっぷりと引き込んでいくだけです。


幸せな気分になることができる結婚式は、世界平和につながる

――大河内さんに音楽を担当してもらったら、おふたりはもちろんですが、出席したゲストのみなさんも“いい時間を過ごすことができた”と幸せな気持ちで会場をあとにすることができそうですね。大河内さんにとって、「結婚式」とはどんな存在ですか?

大河内:ちょっと大袈裟ですが、結婚式は世界平和につながっていると僕は思っているんです。映画にたとえれば、結婚式はおふたりを中心にフレームが動いていきます。どのフレームにおふたりが入っても完璧にキラキラと美しい世界があって、それが3時間以上続き、ゲストが圧倒的に幸せなオーラに当てられます。そうしたら、“ちょっと昨日母親と喧嘩しちゃったけれど、あとで電話してみようかな”とか、たとえ何か不快なことがあっても前向きな気分になれます。自分の周囲にいる人、隣にいる人を愛することが結局世界平和じゃないかと僕は思っているので、美しいものを見て幸せな気分になることができる結婚式は確実に世界平和を作り出す。そういう気持ちで僕は仕事をしています。

人はひとりで生きているわけじゃないですよね。いろいろな人に支えられ助けられて生きています。その感謝の気持ちを伝える結婚式という機会はちゃんと作ってもらいたいなと思います。

身内だけでも、大勢のパーティでも形にこだわる必要はありません。節目を意識することが大切なんです。幸せで美しい空間にいたら、自然と感謝や愛の気持ちは湧き上がってくるものだし、また、自分たちらしいウエディングにする可能性を諦めないでほしいと思います。

LGBTQA+に象徴されるように、ひろく多様性が認められるようになっている時代に、結婚式という業界自体も誰も取り残さないようにしなければいけないんじゃないでしょうか。ほんの一例ですが、生物学的性別の身体が “男性”のトランスジェンダーの方がウエディングドレスを着たいと願うなら、彼・彼女が自由にドレスを選び、ときに美しく、ときにカッコよく着こなして結婚式ができるような世の中になってほしい。だからみんな諦めないで、可能性を追求してほしい。

僕はそういう純粋な「いつも自分らしく」「好き」「大好き」を諦めたくない人たちが僕らを求めてくれたとき、ちゃんとそこに居たいなと思っています。

僕らひとりひとり、たくさんの可能性、たくさんの色、たくさんの個性が複雑に美しく織りなした“世界で唯一無二の自分という存在”ですから……あ、こんなことを偉そうに言っている僕もまだまだ勉強中です! みんなで一緒にもっと自由でワクワク楽しい世界を作っていきたい! そう真剣に思っています。

編集部より

「誰ひとりとしてアウェーにしない、誰も取り残されないように」と何度も語ってくださった大河内さんの言葉から、みんなが幸せな空間をつくるための強い意志と、深い愛情を感じました。音は目に見えないものではありますが、こんなにも人の心を動かし、その場の空気を左右する大きな力を持っていることを実感させられたお話でした。

大河内さんプロフィール

SOUND CoUTURE Inc. 代表兼、ディレクター。Sound = 音、Couture (クチュール) = 仕立て、縫製の言葉からも連想するように、「音の仕立屋」を意味する。まるでオートクチュールの服のように、コンセプトに沿って空間の「モノ」「コト」「ヒト」に向き合い音のサイジングに意識し、様々な商業空間、オフィス空間、企業やブランドの「ブランディング」と「ターゲット」に視点を向け、空間の「設」として空間のサウンドデザインをデザインチームで手掛けている。 sequence MIYASHITA PARK、渋谷QWS (スクランブルスクエア) など、24時間で変化する音空間のサウンドデザイン、またバーミキュラの琺瑯の音、スノーピークのキャンプの音から作る空間サウンドデザインなど、多くのブランドの特徴を音に変換する「空間のサウンドロゴ」を得意とし周波数、リズムなども取り入れ多角的に「音の可視化」「文脈化」にも力を入れている。ウエディングは年間24組の完限定全予約、2022年よりAce Hotel Kyotoでクリエイター全員がお二人を一緒に囲みアイディアを出し合い、クリエイション&デザインするエクスクルーシブプランをスタートさせている(※詳細はエースホテル京都ウエディングデスクまで)
https://soundcouture.jp
https://www.instagram.com/soundcouture_haru/?hl=ja
取材・文/定家 励子(株式会社imago)
写真/タナカタツヤ(メイン、本文内4、5枚目)、髙見逸人(本文内1、2枚目)、遊馬将太朗(本文内3枚目)、SHOWGO WESTFIELD (本文内6枚目)

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