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インタビュー

#6 花はみんなの嬉しい気持ちを増幅してくれる。farver渡辺礼人さんが結婚式に全力を注ぐ理由とは

「結婚式」には、想像している以上にたくさんの人が関わっています。表に出る人、裏方の人、業界自体を支える人……。この企画では、さまざまな角度から、どんな風に結婚式のことを考えていてどんな風に結婚式を作っているのか、その想いをリレー方式で伺っていきます。
< #5 音楽は空間演出の最大公約数。音で空間を包み込み、誰ひとりとしてアウェーにしない。サウンドスタイリスト・大河内康晴さんに聞く、結婚式への想い

東日本大震災で、花に対する思いが変わった

※この記事は2022年9月時点の情報です。
――渡辺さんは、もともとは美容師になろうと専門学校に通われたのだとか。なぜお花に興味を持ち始めたのですか?
渡辺礼人(以下、渡辺):はい、そうです。美容師としてサロンに入社したんですが、いろいろ事情があって辞めてしまって……。そもそもお花は初めから興味があったわけではなかったんです。洋服の花柄が好きだったけど、洋服の業界はちょっと難しそうだなと思って、お花屋さんで働いてみようかな、ダメだったらやめればいいしと思い、軽い気持ちで花の業界に飛び込みました。そこから数年でお花を思いのほか好きになり、目黒川の家と家の間の隙間みたいなところにテントを張って初めて自分の店を持ったのが、ちょうど東日本大震災の1年前。震災当日の2日前に1周年を迎えたところだったんです。
世の中がとても暗くなって、このコロナ禍よりも暗かったんじゃないでしょうか。当然結婚式も中止や延期になって、そのために押さえてあったお花が市場には余っていて、買いに来る人がいないから安売りをしていたりして……僕はそれを買ってお店を細々と続けていたんです。今ほど常連のお客さまはいませんでしたがそんな中でも、ニュース見てると気持ちが引っ張られて暗くなっちゃうから“土いじりがしたくなって……”とか“花が触りたくなった”というお客さまがいらして、昔から僕と話しに来てくださるお客さまが多い店だったので、そんな方々とお話をしていると僕も気持ちが和らぎました。
正直、お花ってなくても生きていけると思うんですよ。でも、一度その良さを知ってしまうと欠かせなくなります。あの東日本大震災というターニングポイントを花屋として通過したところに、僕は絶対にお花は必要なんだと確信しました。“うちの店に来たら、お客さまのお花に対する概念を変えられるような、そんな店にしたい!”そう思ったことが軸となって、今までお店を続けてこられたのかなと思っています。
本当の花の魅力はその場にいる人にしか伝わらない。だから1回1回の結婚式に全力を注ぐ

渡辺:東日本大震災は、みんなの結婚式の意識も変えたんですよ。結婚を考えているカップルが、震災があったら自分たちもいつ死んでしまうかわからないんだという危機感を持つようになって、親や大切な友人に自分の結婚する相手を見てほしいって、そういう風に思うようになったんでしょうね。そんな流れでそれまでとは違う、自分たちが変わらずに好きでいられるものをチョイスして作る結婚式ブームが来ました。farverはその少し前からスタートしていたので、うまくその流れに乗れたんだと思います。
一番最初に結婚式のお花を担当させてもらったのは、知り合いの美容師さんの紹介でした。式場は専属の花屋さんがいるので、外部から入る場合は持ち込み料が必要なんですが、それだけの金額を支払ってでも自分を信用して任せてくれる。だったら僕も、絶対に満足してもらえるものを作ってあげるから安心してって。初めての仕事に必要な備品をそろえたりしたので利益なんかなかったと思いますが、そのとき持てる限りの力を出したんです。すると、花嫁さんがめちゃめちゃ気に入ってくれて、泣いて喜んでくれました。その後、どうなったかというと、結婚式に出席した花嫁花婿の友人の方からも何件か依頼が入ったんです。
お花は写真で見ても十分きれいですが、香りや艶、ハリなど本当の花の魅力はその場にいる人のほうが伝わるし、説得力がある。だから僕は1回1回の結婚式に全力を注ぎます。おふたりを好きにならないとわかり合うことができないので、コミュニケーションも大切にしながら全力を尽くしました。だからステキなお花でよいパーティが作れたし、参列したお客さまが“じゃあ自分のときも僕に”と言ってくださったんだと思います。
お客さま一人ひとりと向き合い、ふたりの世界観を知っていく

渡辺:仕事が増えると、それを回していくために人も増やすしかありません。そうすると、自分の気持ちが薄まっていっちゃうんですね。利益は上がるけれど、僕が大事にしていた一人ひとりとのコミュニケーション、おふたりならではのパーティを作るという、当初僕がfarverを立ち上げたときに抱いていた思いが薄れてしまっていました。
スタッフとの温度差は広がるし妻とも喧嘩ばかりで、店にも家にも居たくないので、毎日ずっと犬の散歩ばかりしていました(笑)。今の僕があるのは犬と、もちろん妻、そして彼女を支えてくれた娘という、やはり家族、そしてあるときを境にどんどん売り上げが下がっていって経済的に困っていたところを励ましてくれた友人たちですね。
ものすごくよかった売り上げがあるときから下がってしまった原因は、僕が足元を見ていなかったことにあるんだと思います。お店を始めた当初、僕と話をしたくて、僕に花を作ってもらいたくて来てくださっていたお客さまは、僕が外に仕事をしに行って店にいなくなるようになると、どんどん離れていってしまいました。妻ともすれ違うばかりで、SNSで発信することを勧めるスタッフたちともぶつかったりして。
でも、自分の軸はブレてはいけないけれど、ある程度時代に乗っていくのは大事だなと思いSNSを使ってみたり、断捨離をして固定費を見直したり、妻とも方向性を合わせて再スタートした感じです(笑)。
――なるほど、そういう経緯を経て、また原点に戻ったというか、お店に来られるお客さまや結婚式を挙げるカップル一人ひとりに向かい合うようになったということですね。さきほどお客さまを好きになって、本当に相手のことがわからないと花を作ることができないとおっしゃっていましたが、相手を知るためには、どのようなことをなさるんですか?
渡辺:種明かしをしちゃうとあれなんですけど(笑)、結婚式のお花の場合は、まずおふたりの好きなものの画像を用意してもらいます。お花でなくても、部屋でも洋服でも何でも構いません。それをプリントアウトして見せてもらうと、だいたいおふたりがどんなものが好きか、どんな結婚式を理想としてイメージされているのかがわかります。日々何十人何百人とお会いしていると、往々にしてどんな方も何十人何百人のうちの一人になってしまうので、おふたりのイメージするものを紙にしていただくと、他でもない○○さんのイメージが見え、お互いに記憶に残るんですよね。だから間違いがない。
お客さまにも、お花屋さんにイメージを伝えるには言葉で伝わると思わない方がいいですよと言っています(笑) 。
――とはいえ、イメージ画像をいくつか見ただけで、なかなかお相手の思う結婚式にぴったりの花を作り出すのは、簡単ではないと思います。きっとそれまでの渡辺さんの経験値、美容師としてお客さまの要望に応えてきた経験、美術や建築などさまざまなアートに触れてスキルを磨いてこられたからできたことなのでしょうね。
渡辺:そうですね。僕は空間認識能力がとても高いのかなと思ってます(笑)。会場の図面を見ればだいたいパッとイメージできます。それに加え、好きなものを画像で見せてもらえばすぐにおふたりのお花の雰囲気がイメージできますし、打ち合わせのときの服装や髪型、メイク、そして結婚式当日のドレス。ブーケのサイズ感を決めるために、身長は何センチでヒールは何センチのものを履くのかとかを聞きます。
それから、ポイントは新婦だけではなく、新郎にも話を振ることです。新婦はどんどんイメージが膨らみすぎて、最初に決めていたものから逸れていってしまいがちなので、新郎との温度差を埋めてあげることがすごく大事。新郎に話を振ったりして、無理矢理こっちに引き込みます。おふたりを同じ土俵に立たせてあげると、安心感を持ってもらえる。雑談ベースで、趣味や休日はどんな風に過ごすのかなどを伺いながら、おふたりの世界観を知っていきます。その時点では、あまり細かいところまでは決めません。当日用意できるもので本当に僕のオススメなお花を使いたいから。
大事なのは、お花を空間に自然になじませ、余白を作ってあげること

渡辺:それも、さっき言った空間認識ということですよね。空間をひとつの器と捉えて、そこに花を馴染ませることが出来れば、どこから見てもステキになります。結婚式の場合、バンケットの入り口の扉を開くと、視点はまずどこに行くのか。テーブルに並んでいる花は絶対に見えます。中央の新郎新婦の席にあるテーブルの花もステキだけど、さらにその後ろ側のテーブルより一段高い位置にお花があると空間が立体的に見えるんです。というように、左右と高さをばらけさせて3箇所ぐらいにお花を飾るとステキというのが僕の持論。それはみなさんの家で花をコーディネートする場合も同じで、同じ高さ同じ場所に固めるのではなく、位置をジグザグにずらしてあげると余白ができてステキになります。日本人は余白を楽しめる文化を持っているから、なおさらですね。
最近思うのは、お花って料理ととても似ているなということです。レシピがあってみんながその通りに作っても、味は同じにならない。だから、結婚式でお花を作って貰うお花屋さんを選ぶ際には、相性のよいお花屋さんを選ぶことが大事です。何回打ち合わせをしても、思い通りの提案が出てこなかったなら、それは相性が悪いせいかもしれないです。お花は旬のものが一番いいんですよ。鮮度も大事ですから、きちんとケアされているお花が並んでいることも重要。そういったことを大事にしているお花屋さんなら安心だと思います。
結婚式のお花って、だいたい10年ぐらいの周期で流行が巡ってくるんです。10年前はバラ、ダリア、アジサイ、トルコキキョウ……そういうものが当たり前でした。その後、大きな花は華美過ぎるというので草花系に。そんな草花が当たり前になると、今度は南アフリカとかオーストラリア産のちょっと形が変わっていて彩度の低い花がトレンドになりました。ここ数年はアンスリウムや胡蝶蘭が人気で、そろそろ1周回って流行に敏感な人たちはバラのブーケを選び始めてますね。
結婚式は、本当に近しい人に大切な人を知ってもらう場

渡辺:僕の知る限り結婚式は派手婚のあとに地味婚が来たり、また派手な結婚式が多くなったり……という印象がありました。でも、そんな勢いが緩やかになってきてコロナ禍でピタッと止まってしまった。呼んでも来てもらえないゲストもいたんですが、それは裏を返せば本当に心からお祝いしたいと思う人だけが来ているということです。コロナ禍で正直暗くはありますが、みなさんイイ顔をしています。それを見て、僕は“幸せのお裾分け”ってこういうことなんだなと思いました。きっと結婚式は本当に近しい人に大切な人を知ってもらう場なんだと、改めて気付かされた結婚式業者の方もたくさんいるのではないでしょうか。
もちろん僕もそのひとり。
これからも僕が作る花束、アレンジがよいといって来てくださるお客さまを大切にしながら、お店を続けて行きたいと思っています。
編集部より
華やかだけどどこか落ち着く、香りも色も五感すべてでお花を感じられる空間に、入った瞬間虜になるような店内でした。「お花のおかげで人とコミュニケーションが取れる」とお話してくださった渡辺さん。お花への愛情はもちろんのこと、お花を通してお客さま一人ひとりに愛をもって誠実に接していることがひしひしと伝わってきました。渡辺礼人さんプロフィール

取材・文/定家 励子(株式会社imago)
写真/小黒 冴夏
写真/小黒 冴夏
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