結婚式場探しならマイナビウエディング > 結婚式準備最強ノウハウ > マイナビウエディングPRESS > 小説 記事一覧 > Vol.10 夫婦の絆をもう一つ #弘貴(ひろたか)
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『結婚一周年のお祝いのディナーを予約したいのですが』
弘貴が言うと、電話の相手――イタリアンレストランの予約受付係――はいくつかプランを提案してくれた。その中で、妻の菜摘(なつみ)が好きそうなコースを注文し、日時を伝える。
『承りました。ご来店をお待ちしております』
『よろしくお願いします』
弘貴は電話を切って、ホッと息を吐く。
菜摘とは婚活アプリで知り合った。三十歳を過ぎた頃から、このまま一生独りは寂しいかなと思うようになり、婚活アプリを始めてみた。不安の方が大きかったが、菜摘と出会い、半年後に入籍、結婚した。
菜摘との日々は穏やかで過ごしやすく……気づけば結婚して一年が経とうとしている。しかし、思い返してみたら、結婚してからというもの、デートらしいデートをしたことがなかった。
(それでも菜摘さんが文句や愚痴を言わないのは……俺になにも期待してないからとか……そういうのは嫌だ)
挽回するにはどうするのがいいだろうかと悩んで、サプライズディナーをプレゼントすることにした。そして、結婚式を挙げたウエディング専門ホテルの中にあるイタリアンレストランに、記念日ディナーを予約したのだ。
一周年を機に、改めて今までの感謝の気持ちを伝えられたら……。
結婚一周年のその日、弘貴は菜摘を水族館に誘った。久しぶりのデートに心が浮き立ちながらも、緊張の方が大きい。
(サプライズディナー、喜んでくれるだろうか)
期待半分、不安半分で水族館を出て、JR池袋駅に着いた。レストランに向かうには、埼玉県の自宅に戻るための埼京線ではなく、山手線に乗らなければならない。
エスカレーターに乗ろうとしたとき、菜摘が戸惑っている様子なのに気づいた。
「晩ご飯、食べて帰ろう」
弘貴は菜摘の方を見て声をかける。
「あ、うん」
菜摘は少し不思議そうな顔をしつつも頷いた。
電車が大塚駅に到着し、弘貴は菜摘を見た。降りるよ、という合図に、菜摘は素直に頷く。
(サプライズがバレませんように)
弘貴は内心ドキドキしながら電車を降りた。
ちょうど一年前、駅の近くにあるホテルの式場で結婚式を挙げた。交通の便もよく、ホテルでありながらアットホームな雰囲気なのが気に入って選んだのだ。
懐かしさを覚えながら、ホテルの一階にあるイタリアンレストランに菜摘を案内する。
「予約していた佐藤です」
弘貴が入り口で名乗ると、案内係は明るくておしゃれな雰囲気の個室に案内してくれた。
弘貴と菜摘が席に着いて少しすると、給仕係が現れて二人の前にシャンパングラスを置いた。
「ご結婚一周年おめでとうございます」
給仕係にお祝いの言葉をかけられて、菜摘は驚いた表情で弘貴を見た。
サプライズ成功だ。
弘貴は内心ホッとしながら、今一番伝えたい気持ちを言葉にする。
弘貴が言うと、電話の相手――イタリアンレストランの予約受付係――はいくつかプランを提案してくれた。その中で、妻の菜摘(なつみ)が好きそうなコースを注文し、日時を伝える。
『承りました。ご来店をお待ちしております』
『よろしくお願いします』
弘貴は電話を切って、ホッと息を吐く。
菜摘とは婚活アプリで知り合った。三十歳を過ぎた頃から、このまま一生独りは寂しいかなと思うようになり、婚活アプリを始めてみた。不安の方が大きかったが、菜摘と出会い、半年後に入籍、結婚した。
菜摘との日々は穏やかで過ごしやすく……気づけば結婚して一年が経とうとしている。しかし、思い返してみたら、結婚してからというもの、デートらしいデートをしたことがなかった。
(それでも菜摘さんが文句や愚痴を言わないのは……俺になにも期待してないからとか……そういうのは嫌だ)
挽回するにはどうするのがいいだろうかと悩んで、サプライズディナーをプレゼントすることにした。そして、結婚式を挙げたウエディング専門ホテルの中にあるイタリアンレストランに、記念日ディナーを予約したのだ。
一周年を機に、改めて今までの感謝の気持ちを伝えられたら……。
結婚一周年のその日、弘貴は菜摘を水族館に誘った。久しぶりのデートに心が浮き立ちながらも、緊張の方が大きい。
(サプライズディナー、喜んでくれるだろうか)
期待半分、不安半分で水族館を出て、JR池袋駅に着いた。レストランに向かうには、埼玉県の自宅に戻るための埼京線ではなく、山手線に乗らなければならない。
エスカレーターに乗ろうとしたとき、菜摘が戸惑っている様子なのに気づいた。
「晩ご飯、食べて帰ろう」
弘貴は菜摘の方を見て声をかける。
「あ、うん」
菜摘は少し不思議そうな顔をしつつも頷いた。
電車が大塚駅に到着し、弘貴は菜摘を見た。降りるよ、という合図に、菜摘は素直に頷く。
(サプライズがバレませんように)
弘貴は内心ドキドキしながら電車を降りた。
ちょうど一年前、駅の近くにあるホテルの式場で結婚式を挙げた。交通の便もよく、ホテルでありながらアットホームな雰囲気なのが気に入って選んだのだ。
懐かしさを覚えながら、ホテルの一階にあるイタリアンレストランに菜摘を案内する。
「予約していた佐藤です」
弘貴が入り口で名乗ると、案内係は明るくておしゃれな雰囲気の個室に案内してくれた。
弘貴と菜摘が席に着いて少しすると、給仕係が現れて二人の前にシャンパングラスを置いた。
「ご結婚一周年おめでとうございます」
給仕係にお祝いの言葉をかけられて、菜摘は驚いた表情で弘貴を見た。
サプライズ成功だ。
弘貴は内心ホッとしながら、今一番伝えたい気持ちを言葉にする。

「結婚一周年ありがとう」
その瞬間、菜摘の表情がパアッと明るくなった。
「こちらこそありがとう」
はにかんだ笑みを浮かべていて、喜んでくれているのがわかる。
「それじゃ、乾杯しよう」
弘貴はグラスを持ち上げた。菜摘も同じようにして、二人でグラスを軽く合わせた。
ほんのり甘いシャンパンに人心地がついたとき、菜摘が弘貴を見る。
「予約してくれてたなんて思わなかった。びっくりしたけど、すごく嬉しい」
言葉通り嬉しそうな妻の笑みを見ているうちに、弘貴は自然と表情がほころんだ。
そのとき、ちょうどいいタイミングでオードブルが運ばれてきた。一口食べたそれは、新鮮な食材を生かすような味付けがされている。
(これうまいな)
そう思ったとき、菜摘が左手で口元を押さえながら言った。
「これおいしい」
二人とも同じタイミングで同じように感じた。そのことに、気持ちを分かち合える人がいるのはいいものだな、と改めて思う。
「俺もそう思った」
弘貴が言うと、菜摘は柔らかく微笑んだ。
「ここに来ると結婚式のことを思い出すね」
「そうだね。一生に一度のことだったから、やっぱり緊張したなぁ」
弘貴の言葉に菜摘は相づちを打つ。
「私も。でも、うちは私より親の方が緊張してたかも」
「お義父さん?」
「そう。バージンロードを歩く前、すごく硬い表情をしてた」
「うちは姉がずっと緊張してたな。披露宴で娘と一緒にピアノの連弾をしたいって自分から言い出したのに、いざみんなの前で弾くとなると緊張したらしい」
弘貴は懐かしい思いで、姉と小学一年生の姪との連弾の様子を思い出した。
「そうだったんだ。でも、二人のおかげでアットホームで心に残る結婚式になって、とても嬉しかった」
菜摘の言葉を聞いて、弘貴は胸が温かくなる。
本当は、小姑が出しゃばっているようで嫌だったんじゃ……と内心心配していたのだ。けれど、菜摘はこんなふうに捉えてくれていた。
(こういうところをいいなって思ってたんだ)
弘貴が菜摘への気持ちを再確認していたら、菜摘はナイフとフォークを動かす手を止めて言う。
「このホテル、来るのは結婚式以来だけど、ぜんぜん変わってなくてなんだかホッとしちゃった」
「そうだね。また来よう」
「うん」
彼の言葉に笑顔で頷く菜摘を見て、弘貴は決意を新たにする。
一年前、ここで彼女を大切にしようと誓った。その誓いは今も変わらない。
来年も、そのまた来年も、大事に日々を積み重ねて、彼女と一緒に記念日を祝おう――。
(文/ひらび久美)
その瞬間、菜摘の表情がパアッと明るくなった。
「こちらこそありがとう」
はにかんだ笑みを浮かべていて、喜んでくれているのがわかる。
「それじゃ、乾杯しよう」
弘貴はグラスを持ち上げた。菜摘も同じようにして、二人でグラスを軽く合わせた。
ほんのり甘いシャンパンに人心地がついたとき、菜摘が弘貴を見る。
「予約してくれてたなんて思わなかった。びっくりしたけど、すごく嬉しい」
言葉通り嬉しそうな妻の笑みを見ているうちに、弘貴は自然と表情がほころんだ。
そのとき、ちょうどいいタイミングでオードブルが運ばれてきた。一口食べたそれは、新鮮な食材を生かすような味付けがされている。
(これうまいな)
そう思ったとき、菜摘が左手で口元を押さえながら言った。
「これおいしい」
二人とも同じタイミングで同じように感じた。そのことに、気持ちを分かち合える人がいるのはいいものだな、と改めて思う。
「俺もそう思った」
弘貴が言うと、菜摘は柔らかく微笑んだ。
「ここに来ると結婚式のことを思い出すね」
「そうだね。一生に一度のことだったから、やっぱり緊張したなぁ」
弘貴の言葉に菜摘は相づちを打つ。
「私も。でも、うちは私より親の方が緊張してたかも」
「お義父さん?」
「そう。バージンロードを歩く前、すごく硬い表情をしてた」
「うちは姉がずっと緊張してたな。披露宴で娘と一緒にピアノの連弾をしたいって自分から言い出したのに、いざみんなの前で弾くとなると緊張したらしい」
弘貴は懐かしい思いで、姉と小学一年生の姪との連弾の様子を思い出した。
「そうだったんだ。でも、二人のおかげでアットホームで心に残る結婚式になって、とても嬉しかった」
菜摘の言葉を聞いて、弘貴は胸が温かくなる。
本当は、小姑が出しゃばっているようで嫌だったんじゃ……と内心心配していたのだ。けれど、菜摘はこんなふうに捉えてくれていた。
(こういうところをいいなって思ってたんだ)
弘貴が菜摘への気持ちを再確認していたら、菜摘はナイフとフォークを動かす手を止めて言う。
「このホテル、来るのは結婚式以来だけど、ぜんぜん変わってなくてなんだかホッとしちゃった」
「そうだね。また来よう」
「うん」
彼の言葉に笑顔で頷く菜摘を見て、弘貴は決意を新たにする。
一年前、ここで彼女を大切にしようと誓った。その誓いは今も変わらない。
来年も、そのまた来年も、大事に日々を積み重ねて、彼女と一緒に記念日を祝おう――。
(文/ひらび久美)

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