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ブルガリ、MAXXI BVLGARI賞第3回ファイナリスト作品展を開催

ブルガリ、MAXXI BVLGARI賞第3回ファイナリスト作品展を開催(0)―BVLGARI(ブルガリ)

2022年4月23日ローマ–MAXXI(イタリア国立21世紀美術館)とブルガリが若手アーティストの支援とプロモーションを推進するプロジェクト「MAXXI BVLGARI賞」の第3回エキシビションが、ジュリア・フェラッチのキュレーションにより始まりました。現在に深く根ざし、歴史、社会、自然を介して、進化し続ける現代社会のさらなる理解への道を自在に開く作品を携えた3名のアーティスト、アレサンドラ・フェリーニ(1984年、フィレンツェ生まれ)、シルビア・ロッシ(1992年、レッジョ・エミリア生まれ)、ナムサル・シエドレッキ(1986年、米国生まれ)にスポットが当てられた作品展で、2022年11月20日まで開催されます。
本美術館の眺望の良い3階にガレリア5で行われるこの展覧会では、本プロジェクトにおいて創作された3つの作品が展示されます。MAXXI芸術監督のホウ・ハンルー、MAXXI館長のバルトロメオ・ピエトロマーチ、シャルジャ芸術財団代表兼ディレクターのハリド・アル・カシミ、ポンピドゥー・メッツディレクターのキアラ・パリージ、WIELS現代アートセンターディレクターのダーク・スナワートらにより優勝者が決定され、作品はMAXXIのコレクションとして所蔵されます。

ブルガリ、MAXXI BVLGARI賞第3回ファイナリスト作品展を開催(1)―BVLGARI(ブルガリ)

MAXXI財団理事長のジョヴァンナ・メランドリは次のように述べています。「個人的記憶と集合的記憶、歴史、自然とのそれぞれの関係性は、いままさに私たちが目撃している根深い地政学的、社会的、生態学的変化の中で重要性を増しているテーマであり、MAXXI BVLGARI賞にはまさにそれが反映されています。
ブルガリと築き上げたMAXXI BVLGARI賞は、この美術館の最も重要なイベントのひとつです。情熱と探求心を常に持っているブルガリとの戦略的パートナーとしての関係は、2018年から始まりました。若きアーティストたちが注視する時代に対する創造性に投資することは、私たちが共有している使命であり、この賞は未来とまたその未来に対処する最善の方法を垣間見せてくれます。ファイナリストの皆様、ようこそ!MAXXIにお招きできることをうれしく思います」
ブルガリグループCEOであるジャン‐クリストフ・ババンは次のようにコメントを寄せました。
「絶え間なく変化が続く現在、アイデンティティ、文化的ルーツ、メディアの論調という概念に関するファイナリストたちの表現は、個人的次元と集団的領域の間において深いつながりをもたらすきっかけとなります。3名のアーティストは、言語や素材へのさまざまなアプローチをする中で枠組みを越えた包括的な視点で所属や起源を再考しています。MAXXI BVLGARI賞の新たな使命は、豊かで刺激的なものです。若い才能に表現の機会を与え、彼らの未来にスポットを当てるという、共通の価値観から生まれたこのパートナーシップへの誇りをより一層強く感じています」

ブルガリ、MAXXI BVLGARI賞第3回ファイナリスト作品展を開催(2)―BVLGARI(ブルガリ)

エキシビションは、ガレリア5のエントランスから始まります。アーカイブルームでは、古来より日本に伝わる金継ぎの技術をモチーフにした壁面に展示された3つのショーケースに、アーティスト3名の作品制作のインスピレーションとなった資料やメモが集約されています。

第一の展示は、アレサンドラ・フェリーニによるビデオインスタレーション『Gaddafi in Rome:Notes for a Film』です。この作品は、イタリアとリビアの友好パートナーシップ協力条約の調印のため2009年にイタリアを初めて公式訪問したカダフィ大佐を、ノンフィクション映画特有の自己言及的なアプローチで分析したものです。この条約は、イタリアの燃料供給保証と南海岸への移民の流入阻止の必要性から生まれたもので、そのためにイタリアは財政とインフラ投資という形で植民地支配の賠償要求に屈しなければなりませんでした。そして多くの人権侵害を引き起こした難民政策を批准し、EUにおける同様の協定を生じさせる結果を招きました。アレサンドラは日刊紙『ラ・レプッブリカ』による公式訪問中の綿密な取材をきっかけにニュース制作と結果の在り方について考察をはじめ、この作品の制作につながりました。『Gaddafi in Rome』は、中世以降「テアトル・アナトミコ(解剖劇場)」で行われていた公開解剖の慣習に強くインスパイアされています。インスタレーションを構成する幕には、イタリア最古となるパドヴァ大学の解剖劇場の画像が印刷されており、この作品へ与えた影響が見て取れます。複雑な地政学的事象に対するコミュニケーションのスピードと効果的な理解との関係、メディアによる演出、イタリアとその植民地時代の過去との複雑な関係といった複数のテーマを提示する『Gaddafi in Rome』は、明確な解決策を提示せず、鑑賞者自身のなかで結論を出すように導いていきます。

ブルガリ、MAXXI BVLGARI賞第3回ファイナリスト作品展を開催(3)―BVLGARI(ブルガリ)

そして第二の展示は、ナムサル・シエドレッキの作品『NuovoVuoto』へと続きます。
オンラインで購入した手形のブロンズ彫像の中にある空間への興味から生まれたアートで、3Dスキャンと3Dベクトルを組み合わせさらにロボット技術も駆使し、異なる素材を用いた彫像と台座からなる6部作を制作しました。
石膏とセメントで造られた1作目は、自然を搾取する立場である人間の現状を表現しています。穴のあいた大理石の台座の上に据えられたヨーロッパハイマツの木を用いた2作目は、変移の最初のステージを体現しています。テラコッタの窯の上に砂岩の手が乗った3作目は、素材の変化を提示。統合の段階となる4作目の彫像は、人工的な材料であるポリスチレンの柱と青いポリウレタン製の手で造られています。5作目の台座はAIプログラムを駆使して製作されたアルミニウム製。原型の素材であるブロンズに回帰し、それまでの道のりのなかで変化した根源的な形が見いだされます。5作目と同じ形の6作目には台座が無く、吹きガラスでできた彫像が未来を予感させます。
人力が介入しない機械が生み出すフォルムが変容していく流れを通して、私たちが私たちであるために必要な一連の経験をこの作品は表しています。過去への認識があってこそ新たな共存の道を歩み始めることができる、それがこの作品のメッセージです。

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展覧会の最後となる第三の展示は、トーゴ系イタリア人のアーティスト、シルビア・ロッシのプロジェクトです。写真により記憶をリサーチする方法を見いだし、記憶をしたのちに忘れることついての考察へと導きます。
ビデオと写真を駆使し、彼女の家族の歴史とアイデンティティの経緯を描きます。今回のエキシビションは、ガーナとトーゴでかつて話されていたエウェ語とミナ語により表現されています。フランス語やドイツ語圏の植民地主義者が先住民言語エウェ語を根絶しようとした歴史を乗り越え、エウェ語は家族や親族間での使用や多くの言語研究、エウェ語のフレーズを服の生地の装飾として取り入れた工芸品の製作などによって、数世紀にわたって伝承されています。ロッシの作品は、写真とビデオのグループで構成され、集団や個人のアイデンティティを主張する過程における言語の重要性に焦点をあてています。トーゴで起こった植民地支配のプロセスによって常態化した構造的な問題を考察し、言語政策で先住民を改変しようという植民地プロジェクトの不確かさを強調しています。

キュレーター、ジュリア・ロ・パルコによるファイナリストの略歴

ブルガリ、MAXXI BVLGARI賞第3回ファイナリスト作品展を開催(5)―BVLGARI(ブルガリ)

アレサンドラ・フェリーニ

1984年、フィレンツェ生まれ。ロンドンを拠点に活動。芸術大学の博士課程に在籍。アーティスト、研究者、教育者である彼女は『Gaddafi in Rome:Notes for a Film』を手掛け、制作を通じて多様な言語や表現ツールを用いた試みを行っており、『Radio Ghetto Relay』(2016年)などのエッセイ映画やコラボレーションプロジェクト、2019年にフィレンツェのヴィラ・ロマーナでの個展で発表した『A Bomb to Be Reloaded』のような大規模なインスタレーション作品まで創作しています。
歴史学的観点と記録的調査をベースとしたフェリーニの作品は、イタリアのファシズムや植民地主義に対する従来の解釈を超え、イタリアがアフリカ諸国や地中海地域と織り成す政治、経済、文化の複雑なネットワークを分析した視点を通したものとなっています。プロパガンダやマスメディアによって操作され、歴史をイデオロギー的に制約されたストーリーの産物として捉え、調査過程で出会った資料や写真を批判的に考察し過去の再解釈を通じて現在を理解するための新たな方法論を展開させることを目的としています。
2017年、フェリーニはロンドン映画祭でエクスペリメンタ・ピッチ賞を受賞。2021年よりローマのブリティッシュスクールでリサーチ・アソシエイトを務めています。彼女の作品は、ar/geクンスト美術館(ボルツァーノ、2022年)、MOMus-現代美術館(テッサロニキ、2021年)、ボルツァーノのミュージオン近現代美術館(2020年)、シャルジャ・フィルム・プラットフォーム(2019年)、第16回イスタンブールビエンナーレ(2019年)の付随プログラム、第2回ラゴスビエンナーレ(2019年)、マニフェスタ12のフィルムプログラム(パレルモ、2018年)、サンドレット・レ・レバウデンゴ財団現代美術館(トリノ、2018年、2020年、2021年、2022年)、英国王立人類学協会フィルムフェスティバル(2017年、2021年)、第6回台湾国際ビデオアート展(鳳甲美術館、2018年)、第16回ローマ・クアドリエナーレ(2016年~2017年)といったさまざまな機関で展示、上映されています。

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ナムサル・シエドレッキ

1986年、アメリカグリーンフィールド生まれ。イタリアのセッジャーノを拠点に活動。カッラーラの美術アカデミーで学び、2010年、同彫刻科を卒業。彼の芸術活動の中には、世界中を旅して再発見した古代のプロセスや伝統の研究と、素材や最先端の技術を駆使した型にはまらない飽くなき実験が共存しています。作品には、過去と現在、異なる文化、精神世界と現実との間の絶えることのない対話が内包されています。物質とその物語、意味論的な滞在性に対する科学的で人類学的な関心が、彼の彫刻作品をインスパイアしています。2020年にローマのフランス・アカデミー、ヴィラ・メディチで開催された個展で展示された作品では、彼が長年試みてきた技術、ガルバニック・プロセスによる変容を提示。カトマンズでの長期滞在中に学んだ古代の鋳造技術の再生に基づくプロジェクト『MvaChā』(2019)では、彫刻の制作プロセスを中途の過程まで行うことで完成から未完成への移行、フォルムの外側から内側へと移行を表現し、彫刻の伝統に典型的に見られる固定観念やヒエラルキーを打ち破りました。持続する動きと変容は、人間と自然との関係のメタファーとして彼の作品のうえに表されています。

彼の作品はイタリア国内のみならず海外のさまざまな展覧会で展示されています。最近の作品は、『Nulla è perduto. Art e emateria in trasformazione [Nothing is Lost. Art and Matter in Transformation]』、GAMeC(ベルガモ、2021年)、『Namsal Siedlecki:Viandante』、イタリア文化会館(ニューヨーク、2021年)、『MvaChā』、パスティフィシオセレレ財団(ローマ、2020年)およびパタン博物館(カトマンズ、2019年)、『Trevis Maponos』、バルゴイン博物館(クレルモン・フェラン、2019年)などがあります。2019年にClub GAMeC Prize、第20回Cairo Awardを受賞。

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シルビア・ロッシ

1992年、スカンディアーノ生まれ。ロンドンとモデナを拠点に活動。2016年にロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーション写真学科を卒業。彼女自身の生い立ちについての物語と、西アフリカで撮影されてきた数々の古いポートレートからインスピレーションを得ています。代表的な作品としては『Election Box』(2012年)や『Neither Could Exist Alone』(2021年)があり、『Encounter』シリーズ(2019年)では、個人的体験や移民経験を基に個人のアイデンティティをテーマとする手法を確立。彼女の表現において重要なフェーズとなりました。トーゴの首都ロメの市場で頭に物を載せている母親の写真をベースに両親の歴史を解釈し辿りたいという願いが表れた作品で、トーゴで過ごした青春時代につながる日常的な習慣や行動に新しい視覚的な視点を加えています。セルフポートレートを探求して時間をさかのぼり、家族のアルバムや物語から引き出された伝統や記憶を蘇らせます。自身のトーゴ人としての歴史を分析し再解釈するこの過程において、記憶が消え去ることで個人的、歴史的、文化的な主観性を失うことに対する深い抵抗の行為として写真を定義しています。
彼女のポートレートは、写真作品分野での新進アーティストの主要な賞のひとつであるJerwood/Photoworks Awardsを受賞し、雑誌『ブリティッシュジャーナルオブフォトグラフィー』のプロジェクト『Portrait of Britain』(2020年)にも参加しました。ロッシの作品はヨーロッパ若手写真家フェスティバル(パリ、2022年)、オートグラフABP(2021年)、展覧会『In the Now :Gender and Nation in Europe』(ロサンゼルス、2021年)など様々な国際イベントで展示されています。また、雑誌『Foam』、『Elephant Magazine』(イギリス)、『The New Yorker』(アメリカ)『Griot』(イタリア)にも掲載されています。

MAXXI BVLGARI賞の歴史

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2000年に「Premioperla Giovane Arte」として創設されたこの賞は、ローマの旧モンテロ兵舎(現在のイタリア国立21世紀美術館MAXXI)で開催後、2003年、2005年、2007年はヴェネツィア・ビエンナーレで、そして2010年にザハ・ハディド建築事務所設計の美術館がオープン後再びMAXXIで開催されるようになりました。この賞は同美術館のコレクションの礎であると同時に中核を担っており、第4回までは参加者全員の作品を収蔵。2010年受賞より者の作品を収蔵しています。2018年より、名称を現在の「MAXXI BVLGARI賞」とし、ブルガリの多大なサポートによって、現代のビジュアルアートにおいて重要な役割を果たし、そのさらなる結びつきを発展させ確たるものにしました。同時にイタリアで新しいプロジェクトを立ち上げた海外のアーティストの活動もサポートしています。
2000年と2001年は、移住をテーマにマリオ・アイロ、ステファノ・アリエンティ、マッシモ・バルトリーニ、ヴァネッサ・ビークロフト、ブルーナ・エスボジト、ステファニア・ガレガティ、ミルトス・マネタス、マルゲリータ・マンゼリ、エバ・マリサルディ、リリアナ・モーロ、パオラ・ピヴィ、アレサンドラ・テッシ、ヴェドヴァマゼイ、フランチェスコ・ヴェッツォーリをはじめとした14名のアーティストが参加しました。
2003年、最終選考に残った4名のアーティスト、チャールズ・エイブリー、アヴィッシュ・ケブレザデ、サラ・ロッシ、カローラ・スパドニが、現MAXXIの前身となるイタリア国立現代芸術センターのための作品を創作。2005年のファイナリスト4名は、カロリナ・ラケル・アンティチ、マンフレディ・ベニナティ、ロリス・チェッキーニ、ララ・ファヴァレットでした。
『Revenge』は2007年の第4回に受賞した、ニコ・ヴァシェラーリの作品です。
2010年からは受賞者のみの作品を収蔵。ローザ・バルバ、ロセッラ・ビスコッティ、ジャンルカ&マッシミリアノ・デ・セリオ、ピエロ・ゴリアがファイナリストでした。ロセッラ・ビスコッティは、インスタレーション『Il Processo』(現在MAXXIの『The Place to Be』で展示中)で優勝。特別賞のデ・セリオ兄弟によるビデオインスタレーション『Stanze』は同美術館に寄贈されました。ジョルジオ・アンドレオッタ・カロは、インスタレーション『Primachesianotte』で2012年に受賞。美術館や建物が並ぶ街の写真を、ピンホールカメラによって水面に映しだす作品で多くの人を驚嘆させました。他のファイナリストには、パトリツィオ・ディ・マッシモ、エイドリアン・パーチ、ルカ・トレヴィサーニが名を連ねました。
マリネッラ・セナトーレは、作品とパフォーマンスによる『The School Of Narrative Dance』で2014年に優勝。誰でも教え学ぶことができ、作品を作る主人公になれる巡回学校を表現しました。その学校は、2015年にターナー賞を受賞したイギリスの建築家集団アッセンブルにより広場に建設されました。その他のファイナリストは、ユーリ・アンカラーニ(ビデオ作品『San Siro』はその後同美術館に寄贈)、ミコル・アサエル、リンダ・フレニ・ナグラーでした。
2016年の受賞者、デイビット・ザマニー、ナディア・ラノッキ、モナルド・モレッティによるザップルダーフィルムメーカーグループの作品『Zeus Machine』は、美術館の空間に佇むゴールドで彩られたミステリアスな平行六面体オブジェ上に、ヘラクレスの12の功業を基とした映像が流れる作品でした。リカルド・アリーナ、ルドビカ・カルボッタ、アデリータ・フスニベイがその他のファイナリストでした。

MAXXI BVLGARI賞創設後初となる2018年受賞作品は、ディエゴ・マルコンの『Ludwig』。力強く刺激的なビデオインスタレーションはMAXXIのコレクションとして収蔵されました。他のファイナリストは、タリア・シェトリット、インヴェルノムートでした。2020年の優勝者のトマソ・デ・ルカは、強い倫理的や社会的価値を表現したビデオインスタレーション『A Week’s Notice』で受賞しました。他のファイナリストは、ジュリア・センシ、レナート・レオッタでした。