
腕時計を選び始めると耳にする「クロノグラフ」という言葉。多機能な時計、というイメージが持たれがちだが、実際どういった機能があるのかをはじめ、オススメのモデルをご紹介。時計選びのヒントにしてみよう。
「クロノグラフ」とは? 魅力と人気の理由に迫る

「クロノグラフ」とは、「クロノス(ギリシャ語で時間という意味)」と「グラフ(記す)」を掛け合わせた造語で、ストップウォッチ機能などが搭載された高機能な腕時計のこと。
見た目も通常の時計と異なり、時間を知るための文字盤とは別に、ストップウォッチ用の針があったり、外側にプッシュボタンがついていたりと、要素が多いのが特徴だ。
最大の魅力は何といっても、機能性とデザイン性の高さ。ストップウォッチのみならず永久カレンダー機能やアラーム機能など実用的な機能が多く、それらを“操作して使う”楽しみがあるのがクロノグラフだ。また、男心くすぐるスポーティな見た目やメカニカルなデザインも人気の理由の一つ。
機能性とデザイン性の両立が叶い、ビジネスにもカジュアルにも楽しめるクロノグラフの腕時計を、さっそくチェックしてみよう。
基本機能をわかりやすく解説!

クロノグラフの腕時計の代表的な機能をポイントを絞ってご紹介。せっかく買うなら、使いこなしてみよう。
1 通常の時針
現在の時刻(時)を見るための時針
2 通常の分針
現在の時刻(分)を見るための時針
3 通常の秒針
現在の時刻(秒)を見るための時針。ぱっと見はC 積算計が秒針のように思えるが、実はこれはクロノグラフの機能である秒積算計。現在の秒を見るときは、上記の時計の場合は6時方向の文字盤となる。
4 リューズ
リューズは3時の位置にあるつまみのことで、時刻やカレンダー機能の日付を調整するためのもの
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A スタート・ストップボタン
2時の方向にあるスタート・ストップボタンで、開始・停止して計測する
B リセットボタン
計測をリセットしたい場合は4時の方向にあるリセットボタンを押すと、0の位置に針が戻る
C 秒 積算計
一見、秒針のようだが、これがクロノグラフ秒針。通常は動かずに12時の方向で停止しているが、Aスタートボタンを押すと動き始める。一般的に60秒で1周。
D 分 積算計
C 秒 積算計が1周すると、B 分積算計が1メモリ動く仕様。30分まで計測できるものや、60分まで計測できるものなど、モデルによってさまざま。
E 時間 積算計
D 分 積算計が1周すると、E 時間 積算計が1メモリ動く仕様。12時間まで計測できるものや、24時間まで計測できるものなど、モデルによってさまざま。
F タキメーター
文字盤のまわりにあるメモリは「タキメーター」。時速や平均速度などを計測できるため、モータースポーツなどで活用されることが多い。
クロノグラフの種類とメーター機能
●クロノグラフの代表的な種類
クロノグラフは複数の種類があり、各種独自の機能を持つ。そこでここでは、代表的なクロノグラフの種類を解説する。
フライバッククロノグラフ

フライバッククロノグラフは、飛行機の操縦者向けに開発された特殊なクロノグラフである。正式名称は「リスターティング・フライバック」。通常のクロノグラフでは、再計測の際にストップウォッチ機能をリセットしなければならないが、フライバッククロノグラフでは一度ボタンを押すだけで、計測を終了し新たな計測を即座に開始できる。この機能は、飛行中に迅速な時間計測が必要とされるパイロットを中心に使用されている。
スプリットセコンドクロノグラフ(ラトラパンテ)
スプリットセコンドクロノグラフ、またはラトラパンテは、競技やトレーニングの際に複数の時間を計測するために設計されている。通常のクロノグラフが一つの時間のみ計測するのに対し、スプリットセコンドクロノグラフでは二つの秒針を備え、それぞれ独立して異なる時間を計測可能である。これにより、例えばレースの各ラップタイムを別々に記録することができる。精密な機械技術が必要とされるため、高級なモデルが多く、機械式時計の魅力を最大限に引き出す。また、見た目の美しさもあり、時計愛好家やコレクターには非常に人気が高い。
レガッタクロノグラフ(カウントダウンタイマー)
レガッタクロノグラフは、ヨットレースやその他のタイミングを競うスポーツイベント向けに特化されたクロノグラフである。主な機能は、カウントダウンタイマーで、特定の時間範囲をカウントダウンし、スタート時間を正確に捉えることができる。ヨットレースでは、スタートラインを超えるタイミングが非常に重要なため、この機能が重宝される。
ワンプッシュクロノグラフ
ワンプッシュクロノグラフは、クロノグラフ操作を簡単にするために設計された時計である。通常のクロノグラフ操作には複数のボタンを使うが、ワンプッシュクロノグラフでは一つのボタンでスタート、ストップ、リセットの全操作を行うことができるため、初心者でも使いやすいのが特徴。
●クロノグラフの代表的なメーター機能
クロノグラフの腕時計文字盤の周囲には、メーターがついているものも。これらも計測の際には欠かせない機能なので、代表的な種類を把握しておこう
タキメーター

タキメーターは、ベゼルに刻まれた数字を利用し、一定距離を移動した時間に基づいて速度・平均速度を計測するためのメーター。この機能は自動車レースや飛行機のパイロットにとって非常に便利であり、迅速な速度計測が要求される場面で活躍する。
テレメーター

テレメーターは、距離を計測するためのクロノグラフの機能である。特に雷鳴や爆発音などの音の距離を計測する際に使用される。一般的には、まず光が発生した瞬間にストップウォッチ機能を起動し、音が届いた時点で停止する。その後、テレメーターの刻印を読み取ることで、音源までの距離が分かるという機能だ。この機能は戦場での砲撃距離の確認などに使われていた歴史があるが、気象観測などにも活用されることがある。
パルスメーター
パルスメーターは、医療関係者向けに設計されたクロノグラフの機能。一定時間内に測定された脈拍数を基に、1分間の脈拍数を迅速に算出することができる。
メリット・デメリットをチェック

●クロノグラフのメリット
クロノグラフは非常に多機能な時計であり、そのメリットは計り知れない。
まず、何よりも大きなポイントがストップウォッチ機能をはじめとした多機能型ウォッチであること。スポーツ活動や日常の時間計測の際も正確な管理ができる。
また、クロノグラフは多種多様なスタイルが存在し、デザイン性が高いのもメリットのひとつ。コーディネートの際にアクセントとして取り入れて楽しむこともできる。
さらに、資産価値も高いため、仮に売却するとなった時も値が落ちにくいのも特徴だ。
●クロノグラフのデメリット
一方、クロノグラフにはいくつかのデメリットも存在する。
まず、複数の機能を持っているため、操作が難しい場合がある。特に初めて使う人にとっては、各機能の理解と操作方法を習得するのに時間がかかることがある。
また、複雑な構造故に、故障の際の修理が高額となることがある。特に高級モデルの場合、修理費用が購入費用に匹敵することもある。
さらに、クロノグラフのデザインはケースが大きくやや重量があることが多い。そのため、長時間着用する際には手首に負担がかかることもあるので注意が必要だ。
選び方のポイント

クロノグラフの腕時計はとにかく種類が豊富。その中から運命の一本に出会うのは、時に至難の業だ。そこで、選び方のポイントを3つ解説する。
①用途が決まっている場合は、まずは機能を確認
クロノグラフの計測機能を日常的に使用したい場合は「どういう使い方をしたいのか」という観点から選んでみよう。
単純なストップウォッチ機能があれば十分なのか、平均速度を測るタキメーターが必要なのか、距離を測るテレメーターが必要なのか……。しっかりスタッフと相談して吟味しよう。
②着用シーンで選ぶ
「どういう場面で使用したいか」も大切だ。例えばアウトドアで使用する場合は耐久性が高い物、水中で使う場合は高い防水機能がついているものなど。
ビジネスシーンでスーツに合わせて使う場合は、高級感のあるデザインを選ぶのも手。クロノグラフはカジュアルな印象を与えることもあるので、公式な場には要注意だ。
≫腕元をひきたてる『ドレスウォッチ』の魅力― 普段使いも可能なおすすめウォッチ(メンズ・レディース)もチェック
≫「結婚式では腕時計は外すべき?」 気になるマナーや、失礼に当たらないおすすめウォッチをご紹介
③横目?縦目? デザインで選ぶ
デザインに関して、文字盤のレイアウトやベゼルの素材、カラーリングなどが挙げられるが、クロノグラフの場合はサブダイヤルの配置も重要だ。
一般的にクロノグラフのサブダイヤルの配置は下記2パターン。
・横目

名前の通り、クロノグラフのサブダイヤルが横並びで配置されたデザイン。左右対称でバランスのとれた正統派スタイル。
・縦目

名前の通り、クロノグラフのサブダイヤルが縦並びで配置されたデザイン。スタイリッシュな印象を受ける。
上記のように、用途や使用シーンを想定し、その中から好みにあったデザインを選んで、相棒を見つけてみよう。
オススメのクロノグラフ搭載モデル・ブランド10選
クロノグラフ搭載の、オススメのウォッチをご紹介。腕元を彩る、日々の相棒を見つけてみては。
●TAG Heuer タグ・ホイヤー
タグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー01 クロノグラフ

¥ 638,000(税込)
モーターレーシングの伝統を受け継ぐ、ブランドを代表するアイコンウォッチであるタグ・ホイヤー カレラ
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●OMEGA オメガ
スピードマスター クロノスコープ

¥ 1,408,000(税込)
「スピードマスター」の伝説的なデザインと、1940年代から続くオメガのクロノグラフ ウォッチの歴史から得たインスピレーションを融合した、「クロノスコープ」コレクション。特筆すべき特徴は、1940年代の“スネイル”デザインを用いてプリントされた、タキメータースケール、パルスメータースケール、テレメータースケールといった文字盤上の3つのスケール。
≫商品詳細はコチラ
●BREITLING ブライトリング
BREITLING クロノマット B01 42 [スチール - ブルー]
![BREITLING ブライトリング BREITLING クロノマット B01 42 [スチール - ブルー]](https://wedding.mynavi.jp/watch/images/uploads/89/2020/07/06/5f02838bcedd8-m.jpg)
¥ 1,160,500(税込)
ブライトリングの歴史の中で重要な位置を占め、アイコンともなる万能モデル。約40年を経てデザインを一新し、目的意識、行動力、独自のスタイルを持つ現代のジェネレーションを魅了する。
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●BAUME & MERCIER ボーム&メルシエ
クラシマ

¥ 368,500(税込)
クロノグラフを搭載しながら上品でエレガントな装いを享受するモデル。3つのスモールダイヤルとデイト表示は、ライン・ギョシェ彫りにかかって配されており、クロノグラフの精巧な技術が光るメンズウォッチ。ブルーアリゲーターストラップがブルースティール針の美しさを際立たせる。
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●HUBLOT ウブロ
インテグレーテッド チタニウム ホワイト

¥ 3,047,000(税込)
2005年の誕生以来、基幹モデルとしてブランドイメージと知名度を飛躍的に押し上げたモデル。HUBLOTの掲げる“融合(フュージョン)”のコンセプトから生まれたビッグ・バンはセラミック、チタン、カーボンなどの革新的な素材、ウブロの象徴となったラバーベルトを採用しており、まさにフュージョンを体現。
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●CHOPARD ショパール
ミッレ ミリア 2019 レース エディション │ 168571-3004

¥ 929,500(税込)
耐久性と精度を兼ね備えた個性的なクロノグラフは、スピードに酔いしれるドライバーのために、比類ないヴィンテージスピリットを宿し、現代のジェントルマンに捧げるべく、その伝統を受け継いでいる。
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●NORQAIN ノルケイン
フリーダム 60 クロノ 43㎜

¥ 682,000(税込)~
1960年代のスイス時計の特徴であるスクエアカットの 風防ガラス、植字インデックスを配し、文字盤カラーのクリーム色と同色のカレンダー。自動巻きクロノグラフモデル。
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●NORQAIN ノルケイン
アドベンチャー スポーツ クロノ デイ/デイト 41㎜ リミテッドエディション

¥ 847,000(税込)~
スイスの山々からインスパイアされた特徴的なノルケインパターンのグリーン文字盤に、316ステンレススチール製ケースと18Kレッドゴールドのローレット加工が施されたベゼル。
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●Glashütte Original グラスヒュッテ・オリジナル
セネタ・クロノグラフ・ パノラマデイト

¥ 2,090,000(税込)
中心部にフライバック機構と12時間のクロノグラフカウンターを備えた堅牢な構造が高い信頼性をもたらし、あらゆる点で自信に満ちたスタイリッシュなモデル。
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●IWC アイ・ダブリュー・シー
ポルトギーゼ・クロノグラフ

¥ 830,500(税込)
「ポルトギーゼ」コレクションの中で最も人気の高いモデル。時刻の読み取りだけでなく控え目なサイズで、段差を付けた2つのサブダイヤル、アラビア数字のアップライト・インデックス、均整の取れたリーフ型の時針と分針、これらすべてが調和している。
≫商品詳細はコチラ
メンテナンスとケア

クロノグラフ時計は高価かつ繊細なため、日常的なケアが重要だ。
まず、クロノグラフを使用する際は必ずその機能を理解し、誤操作を避けることが求められる。クロノグラフが動いている状態でリセットボタンを押したりすると、故障の原因となるので要注意。防水機能を持つクロノグラフであっても、水中でボタン操作を行うことは避けたほうがよい。水分が内部に浸入する可能性があるためだ。
同様に、極端な温度変化を避けることも重要である。急激な温度変化が時計内部の部品に影響を与え、動作不良の原因となることがある。
さらにはクロノグラフは精巧な機械式時計であるため、定期的に専門の時計師によるメンテナンス・オーバーホールを受けることも必要である。これにより、精度が保たれるだけでなく、長期にわたってその価値を維持することができる。
最後に、保管場所にも要注意。湿度の高い場所や強い磁場を避け、適切な環境で保管することが、時計の寿命を延ばすために有効である。
≫腕時計をつける位置とは? 男性・女性別やシーン別など解説
〈歴史〉クロノグラフの進化をたどる―

クロノグラフの起源は19世紀のフランスに遡る。フランスの精密計器製造者ルイ・モネが1816年にクロノグラフを考案し、1821年フランスの時計職人ニコラ・マチュー・リューセックにより、世界初の量産型クロノグラフが開発された。初期のクロノグラフは単純な経過時間を計測する機能を持つ時計であった。この時計は競馬好きのルイ18世の依頼で作られたもので、時間の記録が容易に行えるという革命的な機能を提供した。
その後、スイスの時計メーカー「BREITLING(ブライトリング)」が専用プッシュボタンを備えた世界初のクロノグラフを発表。複数のサブダイヤルや複雑なムーブメントを持つクロノグラフが登場するようになった。
≫時計ジャーナリスト 篠田哲生Selection|陸海空を制覇するプロのための計器「BREITLING(ブライトリング)」
クロノグラフの技術的な革命は、複雑なムーブメントの開発を伴う。最初の革新は、二つの独立した計測機能を持つムーブメントの導入であった。これにより、ユーザーは異なる時間の計測を同時に行うことが可能となった。例えば、スポーツ選手がレースのラップタイムを計測しながら、全体の経過時間を把握するという使い方だ。
次の革新として、オートマティックムーブメントの採用が挙げられる。手巻き時計から自動巻き時計への移行により、使用者は頻繁に巻き上げる必要がなくなり、利便性が向上した。これにより、クロノグラフは日常生活においても使いやすくなり、一般消費者に広がりを見せた。

20世紀初頭には、軍事用途や航空機の計測に適したモデルも開発され、クロノグラフの需要が急速に拡大した。特に第二次世界大戦後には、腕時計のクロノグラフがスポーツや日常生活で広く利用されるようになり、ステータスシンボルとしての価値を持ち始める。
≫時計ジャーナリスト 篠田哲生Selection|燃費の計算を行う「ダッシュボード・クロノグラフ」を開発した「タグ・ホイヤー(TAG Heuer)」
こうした長い歴史をたどり、現在の姿になった「クロノグラフ」。今ではほとんどのブランドからクロノグラフの腕時計が発売され、人気を博している。