結婚式場探しならマイナビウエディング > 結婚式準備最強ノウハウ > マイナビウエディングPRESS > 小説 記事一覧 > Vol.2 伝えたい時が伝える時 #純弥(じゅんや)
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ブライダルジュエリー専門店の椅子で、純弥は深呼吸をした。やはり緊張するのは、一大決心をして来たからだろう。
付き合ってもうすぐ三年になる茉莉花(まりか)は、会社の二年後輩だ。隣県に住む彼女と会うのは月に一、二回。もっと一緒にいられたら……。その想いを形にして伝えたくて、ジュエリーショップに予約をしたのは先月のこと。
「石上(いしがみ)様、お待たせいたしました」
コンシェルジュの女性が、ジュエリートレイにエンゲージリングのサンプルを並べた。先ほど贈りたい相手のイメージを訊かれ、「かわいいものが好きなふんわりした雰囲気の女性」と答えたところ、いくつかデザインを選んでくれたのだ。
たくさんのメレダイヤが華やかなリング、緩やかなカーブが優美なリング。どれもきれいだが、茉莉花のイメージにぴったりなのは……。
(茉莉花が笑うと、パッと花が咲いたみたいで、かわいいんだよな)
直接伝えたことはないが、いつも思っていること。それを考えた瞬間、一つの指輪が目に留まった。キラキラ輝く中央のダイヤモンドの両側に、小さなダイヤモンドが寄り添っている。その優しい華やかさに、茉莉花の笑顔が重なった。
「こちらは“スマイリングジャスミン”というシリーズです。女性の笑顔とお花を重ね合わせてデザインされているんですよ」
コンシェルジュの説明を聞いて、純弥は心を決めた。茉莉花の名前の由来はジャスミンの花を表す〝茉莉花(まつりか)〟なのだと、彼女から聞いたことがあったのだ。
付き合ってもうすぐ三年になる茉莉花(まりか)は、会社の二年後輩だ。隣県に住む彼女と会うのは月に一、二回。もっと一緒にいられたら……。その想いを形にして伝えたくて、ジュエリーショップに予約をしたのは先月のこと。
「石上(いしがみ)様、お待たせいたしました」
コンシェルジュの女性が、ジュエリートレイにエンゲージリングのサンプルを並べた。先ほど贈りたい相手のイメージを訊かれ、「かわいいものが好きなふんわりした雰囲気の女性」と答えたところ、いくつかデザインを選んでくれたのだ。
たくさんのメレダイヤが華やかなリング、緩やかなカーブが優美なリング。どれもきれいだが、茉莉花のイメージにぴったりなのは……。
(茉莉花が笑うと、パッと花が咲いたみたいで、かわいいんだよな)
直接伝えたことはないが、いつも思っていること。それを考えた瞬間、一つの指輪が目に留まった。キラキラ輝く中央のダイヤモンドの両側に、小さなダイヤモンドが寄り添っている。その優しい華やかさに、茉莉花の笑顔が重なった。
「こちらは“スマイリングジャスミン”というシリーズです。女性の笑顔とお花を重ね合わせてデザインされているんですよ」
コンシェルジュの説明を聞いて、純弥は心を決めた。茉莉花の名前の由来はジャスミンの花を表す〝茉莉花(まつりか)〟なのだと、彼女から聞いたことがあったのだ。

そうして心を込めて選んだエンゲージリングを受け取ったのは一昨日のこと。これをいつどうやって茉莉花に渡そうか……。ここ数日の悩みに思いを巡らせていたら、スマホから聞こえていた茉莉花の嬉しそう声が、ピタリとやんだ。
「ねえ、疲れてるの?」
純弥は慌ててビデオ通話に意識を戻した。画面に映る茉莉花は眉を寄せている。
「そんなことないよ」
「でも、私と話してても楽しくなさそう」
「そんなことないって」
けれど、上の空だったことは茉莉花に気づかれていた。
「疲れてて話したくないんなら、そう言ってくれたらいいのに」
「だから、そんなことないってば」
「さっきからそればっかり。言いたいことがあるならちゃんと言ってよ」
彼女の表情が不満そうに曇る。言いたい言葉はちゃんとあるのだ。でも、こんな状況で伝えたいわけじゃない。純弥がうまく説明できないでいるうちに、茉莉花の声に苛立ちがにじむ。
「もういいっ。いつも私の話ばかり聞かせて悪かったねっ」
茉莉花に電話を切られてしまい、純弥は右手で前髪をくしゃくしゃと乱した。
「なんでこんなことに……」
本当に言いたかったこと。それは……。
仕事で疲れていても、落ち込んでいても、君の声を聞いて笑顔を見たら、すべて吹き飛ぶんだ。心が軽くなって前向きになれる。君もそう思ってくれていたら嬉しい。もっとずっとそばにいたい。二人で一緒に幸せな日々を積み重ねていきたい。
純弥は唇を引き結び、顔を上げた。
(今伝えなくて、どうするんだ)
濃紺の小箱を掴んで部屋を飛び出した。駅まで走って電車に乗り、彼女のマンションの最寄り駅で降りる。早く会いたくて歩道を必死で駆けているうちに、ポツポツと雨が降ってきた。
「こんなときに……っ」
手をかざしたとき、少し先に花屋があるのに気づいた。かわいいものが大好きな茉莉花を、もっと喜ばせたい。
「あの、プロポーズをしたいので、花束をください」
純弥は店に飛び込んで女性店員に声をかけた。店員は純弥の勢いに少し驚きつつも、すぐに微笑んで答える。
「でしたら、赤いバラはいかがでしょう? バラは本数によって花言葉が変わるんですよ」
そう言って店員は、一本だと“あなたしかいない”とか、九本だと〝いつもあなたを想っています〟とか、本数ごとの意味を教えてくれた。
「十二本のバラはダーズンローズといって、〝感謝、誠実、幸福、信頼、希望、愛情、情熱、真実、尊敬、栄光、努力、永遠〟という結婚生活で大切な十二の言葉を意味するんです」
人生をずっと共に過ごせば、きっと楽しいときばかりではないだろう。ケンカをすることだってあるかもしれない。それでも彼女と一緒に生きていきたい。その想いには十二本のバラがぴったりに思えた。
純弥は真っ赤なバラで花束を作ってもらうと、大事に抱えながら、雨の中を再び走った。彼女の住む部屋に到着し、肩で息をしながらインターホンを鳴らす。室内を駆けてくる軽い足音が聞こえ、純弥は花束を背中に隠した。
ドアを開けた茉莉花が驚いた声を出す。
「どうしたの!?」
純弥は大きく息を吸い込み、花束を差し出した。
「……十二本のバラは感謝とか愛情とか永遠とか……十二の言葉を表すんだって」
茉莉花は驚いた表情のまま答える。
「え?……ああ、たしかダーズンローズって、言うんだよね。」
やっぱり知っていたか、と思いながら、純弥は言葉を続ける。
「さっきはごめん。実はどうやって気持ちを伝えようか悩んでて、上の空だった」
茉莉花は花束を受け取って、嬉しそうに頬を緩めた。純弥はジャケットのポケットから紺色の小箱を取り出した。彼女に向けて蓋を開け、形になった想いを伝える。
「この指輪を見た瞬間、茉莉花の笑顔が思い浮かんだんだ」
茉莉花の瞳が潤み、純弥は小さく咳払いをして背筋を伸ばす。
「白川(しらかわ)茉莉花さん、君がいつも笑顔でいられるように、十二の言葉を誓います。これからもずっとそばにいてください」
気持ちを込めて紡いだ言葉に、茉莉花は目に涙を浮かべて頷いた。
「はい。私もずっとあなたと一緒にいたいです」
彼女も同じ想いでいてくれた。それが嬉しくて自然と笑みが込み上げてくる。
茉莉花の左手を取って薬指にそっと指輪をはめると、彼女の顔に愛らしい笑みが咲いた。
彼女が幸せなら俺も幸せだ。この笑顔を一生守っていこう。そう固く誓った。
(文/ひらび久美)
※ダーズンローズは、登録商標です
「ねえ、疲れてるの?」
純弥は慌ててビデオ通話に意識を戻した。画面に映る茉莉花は眉を寄せている。
「そんなことないよ」
「でも、私と話してても楽しくなさそう」
「そんなことないって」
けれど、上の空だったことは茉莉花に気づかれていた。
「疲れてて話したくないんなら、そう言ってくれたらいいのに」
「だから、そんなことないってば」
「さっきからそればっかり。言いたいことがあるならちゃんと言ってよ」
彼女の表情が不満そうに曇る。言いたい言葉はちゃんとあるのだ。でも、こんな状況で伝えたいわけじゃない。純弥がうまく説明できないでいるうちに、茉莉花の声に苛立ちがにじむ。
「もういいっ。いつも私の話ばかり聞かせて悪かったねっ」
茉莉花に電話を切られてしまい、純弥は右手で前髪をくしゃくしゃと乱した。
「なんでこんなことに……」
本当に言いたかったこと。それは……。
仕事で疲れていても、落ち込んでいても、君の声を聞いて笑顔を見たら、すべて吹き飛ぶんだ。心が軽くなって前向きになれる。君もそう思ってくれていたら嬉しい。もっとずっとそばにいたい。二人で一緒に幸せな日々を積み重ねていきたい。
純弥は唇を引き結び、顔を上げた。
(今伝えなくて、どうするんだ)
濃紺の小箱を掴んで部屋を飛び出した。駅まで走って電車に乗り、彼女のマンションの最寄り駅で降りる。早く会いたくて歩道を必死で駆けているうちに、ポツポツと雨が降ってきた。
「こんなときに……っ」
手をかざしたとき、少し先に花屋があるのに気づいた。かわいいものが大好きな茉莉花を、もっと喜ばせたい。
「あの、プロポーズをしたいので、花束をください」
純弥は店に飛び込んで女性店員に声をかけた。店員は純弥の勢いに少し驚きつつも、すぐに微笑んで答える。
「でしたら、赤いバラはいかがでしょう? バラは本数によって花言葉が変わるんですよ」
そう言って店員は、一本だと“あなたしかいない”とか、九本だと〝いつもあなたを想っています〟とか、本数ごとの意味を教えてくれた。
「十二本のバラはダーズンローズといって、〝感謝、誠実、幸福、信頼、希望、愛情、情熱、真実、尊敬、栄光、努力、永遠〟という結婚生活で大切な十二の言葉を意味するんです」
人生をずっと共に過ごせば、きっと楽しいときばかりではないだろう。ケンカをすることだってあるかもしれない。それでも彼女と一緒に生きていきたい。その想いには十二本のバラがぴったりに思えた。
純弥は真っ赤なバラで花束を作ってもらうと、大事に抱えながら、雨の中を再び走った。彼女の住む部屋に到着し、肩で息をしながらインターホンを鳴らす。室内を駆けてくる軽い足音が聞こえ、純弥は花束を背中に隠した。
ドアを開けた茉莉花が驚いた声を出す。
「どうしたの!?」
純弥は大きく息を吸い込み、花束を差し出した。
「……十二本のバラは感謝とか愛情とか永遠とか……十二の言葉を表すんだって」
茉莉花は驚いた表情のまま答える。
「え?……ああ、たしかダーズンローズって、言うんだよね。」
やっぱり知っていたか、と思いながら、純弥は言葉を続ける。
「さっきはごめん。実はどうやって気持ちを伝えようか悩んでて、上の空だった」
茉莉花は花束を受け取って、嬉しそうに頬を緩めた。純弥はジャケットのポケットから紺色の小箱を取り出した。彼女に向けて蓋を開け、形になった想いを伝える。
「この指輪を見た瞬間、茉莉花の笑顔が思い浮かんだんだ」
茉莉花の瞳が潤み、純弥は小さく咳払いをして背筋を伸ばす。
「白川(しらかわ)茉莉花さん、君がいつも笑顔でいられるように、十二の言葉を誓います。これからもずっとそばにいてください」
気持ちを込めて紡いだ言葉に、茉莉花は目に涙を浮かべて頷いた。
「はい。私もずっとあなたと一緒にいたいです」
彼女も同じ想いでいてくれた。それが嬉しくて自然と笑みが込み上げてくる。
茉莉花の左手を取って薬指にそっと指輪をはめると、彼女の顔に愛らしい笑みが咲いた。
彼女が幸せなら俺も幸せだ。この笑顔を一生守っていこう。そう固く誓った。
(文/ひらび久美)
※ダーズンローズは、登録商標です

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