国際社会の取り組み

国際社会は、キンバリープロセス認証制度や経済制裁、啓発活動など多角的なアプローチで紛争ダイヤモンド問題への対策を強化している。各国の法整備や国連主導の枠組みも進行中である。
●アメリカ合衆国の政策
アメリカ合衆国は、紛争ダイヤモンド問題に対し積極的な対策を講じてきた国のひとつである。2003年にはキンバリープロセス認証制度の発足と同時に、自国内の輸出入に対する法的規制を強化し、紛争地域からのダイヤモンド取引を厳格に制限している。
特に、連邦法としてクリーンダイヤモンド取引法を定め、国際的な原産地証明を求め、違法な流通が明らかになった場合には刑事罰や制裁措置も適用されている。これによりアメリカ国内で取引されるダイヤモンドの多くは、厳密なトレーサビリティ管理下で流通しており、消費者保護や人権擁護の観点からもリーダー的役割を担っている。
●カナダの政策
カナダは自国がダイヤモンド産出国であることを生かし、紛争ダイヤモンド排除に向けた厳格な政策を展開している。カナダはキンバリープロセス認証制度にいち早く参加し、ダイヤモンド採掘から流通までのトレーサビリティ体制が整備されている点が特徴である。
特に、政府発行の『カナディアン・ダイヤモンド証明書』を用いることで、消費者が産地と倫理性を確認できるようになっている。この体制は国内外の消費者から高い信頼を得ており、カナダ産ダイヤモンドは「コンフリクトフリー」の象徴として市場で評価されている。
さらにカナダ政府は、ダイヤモンド鉱山周辺の先住民コミュニティへの配慮や環境保護、持続可能な採掘プロジェクトにも力を入れている。これにより、公平かつクリーンなダイヤモンド供給モデルの先進例となっている。
●ヨーロッパ諸国の政策
ヨーロッパ諸国は紛争ダイヤモンドの規制において、欧州連合(EU)を中心とする共同政策を展開している。EU加盟国はキンバリープロセス認証制度を厳格に運用し、域内の輸出入に関する共通規則や輸入業者への監督体制を強化している。
ベルギーのアントワープなどダイヤモンド取引の中心地では、国際基準を超える独自のトレーサビリティプログラムやデジタル証明書の導入も進められ、取引透明性の担保に努めている。
こうした政策の進展により、ヨーロッパで取引されるダイヤモンドの多くが「コンフリクトフリー」として認証される流れが強まり、消費者の安心や業界の健全運営につながっている。
●日本の政策
日本は2003年、キンバリー・プロセス認証制度に参加し、経済産業省などが所管機関となって原産地証明書を備えたダイヤモンドのみ輸入可能とする制度を導入している。
2024年からはウクライナ情勢を踏まえ、ロシアのダイヤモンドの輸入禁止措置も追加で行っている。
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